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第五章 四人きょうだい
2.月子姫の由来
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あたしは真剣な表情の東宮を前に、この世界に来てからの様々なことが頭の中を駆け巡り、何と言っていいか何を言うべきなのか、言葉が出てこず黙って見つめあっていた。
「月子ひめ~、お疲れ様~、いやぁ、すごい会でしたねえ」
そのとき、のんびり声をかけながら部屋に入ってきたのは…
「義光!」
あたしは急いで言う。
「お疲れ様、あなた今、宮中から退出なさっていらしたの?」
「ん?どうなさったんですか?
いつもの雑駁な口調はどこ行ったんです…って、あっ!」
あたしの背後から几帳を覗き込んで、東宮に気づいたらしい。
「し、失礼いたしました!」
慌てて平伏する。
「また後で参ります…申し訳ございませんでした…」
と、行ってしまいそうになる。
ちょっと待ってっ!
あたしは必死で声をかける。
「あ、あなたの枝豆料理も用意させておいたでしょう、召し上がってくださった?」
「は…はい、とても美味かったですっ
あの揚げ物の香りが良くて…」
そこで、あ、そうだ、と言ってあたしを見る。
「司厨長に、なんか、明日クッキー?を作る手伝いをしてくださいと、月子姫からって言われたんですけど」
「そう、明日はお父様の宴で、司厨長が忙しいの。だから義光に、わたくしのお手伝いをしてほしいのよ」
まあ、あたしは椅子に座ったまま、あれこれ指図するだけなんだけどね。
意外と手先が器用なのよね、義光って…
「民部大輔!」
そこで、東宮があたしの聞いたことのないような怖い声を出す。
「はっ!」
義光は途端に緊張して畏まった。
「そなたが、最初に『月子姫』という綽名をつけたらしいが、その理由はなんだ」
「えっ…それは…」
義光はあたしの顔を見る。
あたしは必死で小さく目配せする。
バレそうなんだよっ!
助けて!
「この方は、いったいどなたなんだ。
本当に伊都子姫なのか?
だとしたら、そちは何故、『月子姫』などと全然違う名で呼んでいる?」
あっ、というように義光は手を口にあてた。
「ああ…そういうことでございますか…」
「月子ひめ~、お疲れ様~、いやぁ、すごい会でしたねえ」
そのとき、のんびり声をかけながら部屋に入ってきたのは…
「義光!」
あたしは急いで言う。
「お疲れ様、あなた今、宮中から退出なさっていらしたの?」
「ん?どうなさったんですか?
いつもの雑駁な口調はどこ行ったんです…って、あっ!」
あたしの背後から几帳を覗き込んで、東宮に気づいたらしい。
「し、失礼いたしました!」
慌てて平伏する。
「また後で参ります…申し訳ございませんでした…」
と、行ってしまいそうになる。
ちょっと待ってっ!
あたしは必死で声をかける。
「あ、あなたの枝豆料理も用意させておいたでしょう、召し上がってくださった?」
「は…はい、とても美味かったですっ
あの揚げ物の香りが良くて…」
そこで、あ、そうだ、と言ってあたしを見る。
「司厨長に、なんか、明日クッキー?を作る手伝いをしてくださいと、月子姫からって言われたんですけど」
「そう、明日はお父様の宴で、司厨長が忙しいの。だから義光に、わたくしのお手伝いをしてほしいのよ」
まあ、あたしは椅子に座ったまま、あれこれ指図するだけなんだけどね。
意外と手先が器用なのよね、義光って…
「民部大輔!」
そこで、東宮があたしの聞いたことのないような怖い声を出す。
「はっ!」
義光は途端に緊張して畏まった。
「そなたが、最初に『月子姫』という綽名をつけたらしいが、その理由はなんだ」
「えっ…それは…」
義光はあたしの顔を見る。
あたしは必死で小さく目配せする。
バレそうなんだよっ!
助けて!
「この方は、いったいどなたなんだ。
本当に伊都子姫なのか?
だとしたら、そちは何故、『月子姫』などと全然違う名で呼んでいる?」
あっ、というように義光は手を口にあてた。
「ああ…そういうことでございますか…」
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