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第五章 四人きょうだい
3.東宮への報せ
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義光もあたしに軽く目配せして、口を開いた。
「ここにおわします方はもちろん、幼いころから美人との評判が高かった伊都子姫でいらっしゃいます」
「伊都子姫の弟の伊靖と幼馴染の私は、昔から伊都子姫を『姉君』とお呼びしておりました。
ですが、姉君もお輿入れあそばされるお年頃、私もまた元服をいたしまして、もうその呼び名もおかしいだろうと」
「そんな折に、姉君が九死に一生を得て地獄からお戻りあそばしたと聞いて、お見舞いに参りましたところ御仏のご加護を得たとおっしゃって、何となく人柄が丸くなったと申しますか…
姉君に御仏のご加護は全然似合わない、物の怪が憑いたんだろうと揶揄する気持ちを込めて物の怪憑きの憑き子姫と呼んでやれ、と」
この野郎、ほぼ全部バラしたな!
あたしは歯ぎしりする。
まあ、肝心なところは隠してくれたけど…
「なんと、月子姫は憑き子姫であったのか!」
東宮は呆気にとられたように言って、あたしの顔を見て噴き出した。
だんだん笑いが大きくなる。
「なるほどねえ…確かに『加持祈祷なんて意味がない』などと言い切る方だ。
物の怪が憑いているという方が、御仏のご加護よりも説得力がある」
こいつも大概、失礼な奴だ。
あたしは頬を膨らませて横を向いた。
「判りました。
その話が本当だとはまったく信じられないが、そなた達の必死の抗弁に報いて、これ以上追及するのは止めましょう。
現在の月子姫が非常に魅力的な女人であることには間違いないのだから」
笑いすぎの涙を拭いて、あたしの手を取ってぐっと引き寄せる。
「貴女を本気で手に入れたくなってきましたよ。
一生、貴女に飽きたりなんかするものか」
あたしの肩を抱き、自分の身体に押しつけるようにしてあたしの額に口づける。
「貴女が傍にいて、私の皇子を産んでくれるなら。
私は天皇になるのも悪くない、そう思えてくるから不思議だ…」
ちょっと!嫌だっ!
あたしは身体を離そうともがく。
義光の方を見るけど、彼は悔しそうに歯を食いしばって顔を背けている。
助けろこら!
東宮はますます腕に力を籠め、あたしを両腕で抱きしめる。
耳、頬とキスして唇を重ねた。
怖い…
助けてっ!
元信様!
その時、外廊下を走ってくる音が聞こえた。
「失礼いたします!東宮殿下はここにおわしますか!」
と大きな声をかけながら入ってくる。
元信様!
あたしは一瞬、力の緩んだ東宮の腕の中から逃げ出した。
義光が素早く腕を伸ばして、あたしを引き寄せて東宮から離す。
「姫?…えっ?」
几帳を覗き込んだ元信様が、動きを止める。
「…これは…?」
悔しそうに義光を睨んでいる東宮、息を切らしてあたしを抱きしめている義光、髪を乱して義光にしがみついているあたし。
なんだか解らないよね…
「なんだ!何の用だ!左近衛中将!」
東宮が義光を睨んだまま声を荒らげる。
元信様はその場に片膝をついた。
「はっ!
…先ほど東宮御所の暁の上様より、宮中の太政大臣殿へお報せがあり、暁の上様がご懐妊なさったと」
えっ!!
あたしと義光は顔を見合わせる。
東宮は、呆然としたように元信様を見た。
口が動いて、小さく何事か呟く。
「関白殿が、東宮殿下にすぐにお帰り下さるように、と」
元信様は几帳をどかして、東宮が帰りやすいように道を作る。
東宮は呆然としたまま立ち上がり、ふらふらと外へ向かう。
元信様は、一瞬あたしと義光を見て、東宮の後について出て行った。
あたしは、さっき、東宮が呟いた言葉を思い出していた。
「そんな筈はない」
「ここにおわします方はもちろん、幼いころから美人との評判が高かった伊都子姫でいらっしゃいます」
「伊都子姫の弟の伊靖と幼馴染の私は、昔から伊都子姫を『姉君』とお呼びしておりました。
ですが、姉君もお輿入れあそばされるお年頃、私もまた元服をいたしまして、もうその呼び名もおかしいだろうと」
「そんな折に、姉君が九死に一生を得て地獄からお戻りあそばしたと聞いて、お見舞いに参りましたところ御仏のご加護を得たとおっしゃって、何となく人柄が丸くなったと申しますか…
姉君に御仏のご加護は全然似合わない、物の怪が憑いたんだろうと揶揄する気持ちを込めて物の怪憑きの憑き子姫と呼んでやれ、と」
この野郎、ほぼ全部バラしたな!
あたしは歯ぎしりする。
まあ、肝心なところは隠してくれたけど…
「なんと、月子姫は憑き子姫であったのか!」
東宮は呆気にとられたように言って、あたしの顔を見て噴き出した。
だんだん笑いが大きくなる。
「なるほどねえ…確かに『加持祈祷なんて意味がない』などと言い切る方だ。
物の怪が憑いているという方が、御仏のご加護よりも説得力がある」
こいつも大概、失礼な奴だ。
あたしは頬を膨らませて横を向いた。
「判りました。
その話が本当だとはまったく信じられないが、そなた達の必死の抗弁に報いて、これ以上追及するのは止めましょう。
現在の月子姫が非常に魅力的な女人であることには間違いないのだから」
笑いすぎの涙を拭いて、あたしの手を取ってぐっと引き寄せる。
「貴女を本気で手に入れたくなってきましたよ。
一生、貴女に飽きたりなんかするものか」
あたしの肩を抱き、自分の身体に押しつけるようにしてあたしの額に口づける。
「貴女が傍にいて、私の皇子を産んでくれるなら。
私は天皇になるのも悪くない、そう思えてくるから不思議だ…」
ちょっと!嫌だっ!
あたしは身体を離そうともがく。
義光の方を見るけど、彼は悔しそうに歯を食いしばって顔を背けている。
助けろこら!
東宮はますます腕に力を籠め、あたしを両腕で抱きしめる。
耳、頬とキスして唇を重ねた。
怖い…
助けてっ!
元信様!
その時、外廊下を走ってくる音が聞こえた。
「失礼いたします!東宮殿下はここにおわしますか!」
と大きな声をかけながら入ってくる。
元信様!
あたしは一瞬、力の緩んだ東宮の腕の中から逃げ出した。
義光が素早く腕を伸ばして、あたしを引き寄せて東宮から離す。
「姫?…えっ?」
几帳を覗き込んだ元信様が、動きを止める。
「…これは…?」
悔しそうに義光を睨んでいる東宮、息を切らしてあたしを抱きしめている義光、髪を乱して義光にしがみついているあたし。
なんだか解らないよね…
「なんだ!何の用だ!左近衛中将!」
東宮が義光を睨んだまま声を荒らげる。
元信様はその場に片膝をついた。
「はっ!
…先ほど東宮御所の暁の上様より、宮中の太政大臣殿へお報せがあり、暁の上様がご懐妊なさったと」
えっ!!
あたしと義光は顔を見合わせる。
東宮は、呆然としたように元信様を見た。
口が動いて、小さく何事か呟く。
「関白殿が、東宮殿下にすぐにお帰り下さるように、と」
元信様は几帳をどかして、東宮が帰りやすいように道を作る。
東宮は呆然としたまま立ち上がり、ふらふらと外へ向かう。
元信様は、一瞬あたしと義光を見て、東宮の後について出て行った。
あたしは、さっき、東宮が呟いた言葉を思い出していた。
「そんな筈はない」
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