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第五章 四人きょうだい

8.作戦の実行

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 義光と、ゆらちゃんも手伝ってくれる。
 あたしも本当はやりたいんだけど。
 北の方様に、絶対にやってはいけないと厳命されているので…

 平成日本にいたころは、お母さんとたまにお菓子を作っていた。
 友達がいなくて、習いごとがない日はいつも家にいたあたしの為に、お母さんはいろいろ作ってくれた。

 生クリームの柔らかいムースとか、バターたっぷりのパウンドケーキとか、フルーツをたくさん使ったタルトとか…

 あ~~~~!た・べ・た・い!!

 「月子姫?…これどうすればいいんですか?」
 妄想から覚め、目を開けると目の前に変なエプロン姿の義光がいて、あたしは軽くのけぞった。

 油脂分がどうしても足りないから、胡麻油を少しだけ入れる。
 菜種はあって、灯火用には菜種油あるんだけど、食用油を採るという思考がない。
 東宮に頼んで、実験的にやってもらえないかな。
 本当はバターが欲しいんだけど、それはさすがに無理そうなので…

 オセロを作ってくれた、細工の上手な大工さんに作ってもらったスプーンで種をすくって天板に落とし、予熱したオーブンに入れる。
 火力をギリギリまで弱め、少し扉を開けて覗きながら、焼き加減を調節していく。

 厨房に甘くていい匂いが満ちてくる。
 忙しそうに立ち働く、料理長やその他のスタッフが「すごく、良い香りですねえ」と顔をほころばせる。

 高坏に綺麗な紙を敷いて、焼けたクッキーを種類ごとに盛る。
 おお、良いじゃないですか~
 美味しそう。

 厨房のスタッフさん達にも少しだけおすそわけして、部屋に持って帰る。

 さて。と。
 あたしはかねてから考えていた作戦を実行することにした。
 うまくいくかはわからないけど。

 女房さん達にお願いして、手分けしてきょうだい達を連れて来てもらう。
 その間に、あたしは義光に手伝わせて部屋の準備をする。

 平成日本のあたしは、ひとりっこで兄弟という存在がいなかった。
 友達もいないあたしは、兄弟姉妹のいる人が羨ましかった。
 
 この時代でも、母親が同じでも幼いころはともかく、大人になると会うことは稀になるらしい。
 通い婚だから、異母兄弟姉妹なんて一度も会わないこともあるみたい。

 女の子だと伊都子姫や二の姫のように入内したりで、離れ離れになることも多いし。

 この家の総領娘として、また、これから迷惑をかけることになるかもしれないきょうだいたちに、少しでも交流を持っておきたいと思った。
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