三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第五章 四人きょうだい

21.謎の言葉

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 あたしはしばらく呆然としていたが、手当てを終えた権中納言様がトランプの輪の方に加わったのを見て、あたしは少し焼けてしまった数学の問題に没頭する。

 何かに集中してないと、さっきのことばかり思い出してしまいそうだった。
 なんで…権中納言様…

 あんな嘘つくんじゃなかった。
 あたしは後悔の臍《ほぞ》を噛んだ。

 あたしの抱えている秘密は、正直言ってもっと重い。
 義光だって、一端を知っているだけであたしが本当はどこの誰なのかを知っているわけじゃない。

 誰かに聞いて欲しい。
 ひとりでずっと抱えていくのは辛い。

 文机の上でこぶしを握りしめて、涙を堪えていると「姫…どうかなさいましたか」と言いながら元信様が御簾を上げて入ってきた。

 「泣いて…いらっしゃるのですか?
 権中納言殿となにかありましたか」
 心配そうにあたしの顔を見る。

 あたしは目を瞑って首を横に振る。
 心配かけちゃいけない。

 「姫…一人で全部抱え込まないで。
 貴女は何でも一人でお決めになって、一人で実行なさる。
 それができるのは、本当に素晴らしいと思うけれど、そうやって一人で何かに耐えて居られるのを見ているのは辛い」

 元信様はあたしの肩を抱いて、髪を撫でながら優しく諭すように話す。
 「私には言えないことですか?
 私は、貴女と秘密を共有したいと思っていますよ」

 あたしは思わず元信様の顔を仰ぎ見た。
 元信様は小さく笑って「話してくださいますか」と真剣な瞳であたしの瞳を覗き込む。
 
 どういうこと?
 あたしは不安になる。
 元信様の真意を図りかねて。
 
 何を…言っているの?

 その時「こら、そこの二人。何やってんだ~」と、御簾を上げて右近衛大将様が中を覗き込んできた。
 あたしたちがぱっと離れると、大笑いする。

 「月子姫、こちらへ来て。
 私の劣勢をひっくり返してください」
 いつの間にやらオセロを引っ張り出して遊んでいる東宮が、あたしを呼ぶ。

 伊靖君と二の姫と縫姫は、権中納言様と四則演算の新たな問題に挑戦しているようだ。
 権中納言様はちらっとあたしを見て、少し笑った。

 何故笑えるの…あの状況…あたしには理解できないよ…
 数学バカは常人と違う思考なんだろうか。

 義光と東宮がオセロ勝負をしていて、右近衛大将様は暇になっちゃってあたしたちにちょっかいかけてきたらしい。

 元信様はあたしを見つめ、切なく微笑んだ。
 「私はいつでもいつまでも貴女を愛している。
 たとえ、貴女の、心が、誰かに、移ったとしても」
 一語一語切って言い、唇を噛みしめる。

 ますますあたしは混乱する。
 元信様が何を言っているか判らない。

 あたしが、元信様以外の誰かを好きになるって…?
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