140 / 307
第六章 運命の歯車
5.追及
しおりを挟む
ああ、そうだ。
昨日というか、今朝のお礼言わなくちゃ。
あたしは元信様の方を向いて手をつき、頭を下げた。
「今朝はありがとうございました。
縫姫が、水無月会の退会は撤回すると言ってくださいましたの。
元信様がずいぶん説得なさってくださったとか」
元信様はあたしの頬に触れて顔を上げさせる。
「私は、姫の日頃のお姿を縫姫にお話ししただけです。
縫姫は貴女にとても強い憧れをもって居られる、それを私は感じていたのでまったく大変ではなかったですよ」
愛しそうにあたしの頬を撫でて、権中納言様のように頤に手を添えて唇にキスする。
「貴女の魅力をほんの少し伝えようと思っただけなのですが、自分でも驚くほどに力説してしまって、縫姫に笑われてしまいました。
私がいかに貴女を愛しているかを、縫姫に暴露しに行ったようなものでお恥ずかしい」
そう言えば縫姫が
「左近衛中将様が心から伊都子姫様を愛していらっしゃることに、感動いたしました」
とか言ってたなあ。
「元信様が、突飛で破天荒なわたくしを叱るどころか日常までよく見て理解してくださっていることが判って、とても嬉しかったです」
あたしが言うと、元信様は「理解できているかは、自信がないのですが…」と目を逸らす。
「民部大輔には、ずいぶん気安くなんでもお話しになるのですね。
先ほどは、釣殿でどんなお話を?」
「ああ、あれは弟のようなものですから…」
とあたしは濁す。
その話題に触れられると痛い。
言い訳のしようがない。
「貴女には本当の弟君もいらっしゃるのに、対応が全然違う。
民部大輔には、特別な信頼を寄せて居られるようにみえる。
違いますか?」
元信様は真剣な眼差しであたしを見つめる。
「ち、違いますわ。
あいつはわたくしの、その、思い通りになる忠実な下僕っていうか、リーズナブルな召使いというか…」
動揺して言葉がめちゃめちゃになる。
「だから、なぜそこまで姫は民部大輔を信用なさって居られるのかを聞きたいのですよ。
先ほども、私が行かなかったら、奴は貴女に…」
床をダン!と拳で殴る。
あたしは驚いて後ずさる。
元信様の表情が怖い。
昨日というか、今朝のお礼言わなくちゃ。
あたしは元信様の方を向いて手をつき、頭を下げた。
「今朝はありがとうございました。
縫姫が、水無月会の退会は撤回すると言ってくださいましたの。
元信様がずいぶん説得なさってくださったとか」
元信様はあたしの頬に触れて顔を上げさせる。
「私は、姫の日頃のお姿を縫姫にお話ししただけです。
縫姫は貴女にとても強い憧れをもって居られる、それを私は感じていたのでまったく大変ではなかったですよ」
愛しそうにあたしの頬を撫でて、権中納言様のように頤に手を添えて唇にキスする。
「貴女の魅力をほんの少し伝えようと思っただけなのですが、自分でも驚くほどに力説してしまって、縫姫に笑われてしまいました。
私がいかに貴女を愛しているかを、縫姫に暴露しに行ったようなものでお恥ずかしい」
そう言えば縫姫が
「左近衛中将様が心から伊都子姫様を愛していらっしゃることに、感動いたしました」
とか言ってたなあ。
「元信様が、突飛で破天荒なわたくしを叱るどころか日常までよく見て理解してくださっていることが判って、とても嬉しかったです」
あたしが言うと、元信様は「理解できているかは、自信がないのですが…」と目を逸らす。
「民部大輔には、ずいぶん気安くなんでもお話しになるのですね。
先ほどは、釣殿でどんなお話を?」
「ああ、あれは弟のようなものですから…」
とあたしは濁す。
その話題に触れられると痛い。
言い訳のしようがない。
「貴女には本当の弟君もいらっしゃるのに、対応が全然違う。
民部大輔には、特別な信頼を寄せて居られるようにみえる。
違いますか?」
元信様は真剣な眼差しであたしを見つめる。
「ち、違いますわ。
あいつはわたくしの、その、思い通りになる忠実な下僕っていうか、リーズナブルな召使いというか…」
動揺して言葉がめちゃめちゃになる。
「だから、なぜそこまで姫は民部大輔を信用なさって居られるのかを聞きたいのですよ。
先ほども、私が行かなかったら、奴は貴女に…」
床をダン!と拳で殴る。
あたしは驚いて後ずさる。
元信様の表情が怖い。
1
あなたにおすすめの小説
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる