三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第六章 運命の歯車

4.お三方からの贈り物

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 元信様はあたしを軽々と抱き上げ(というふうに感じた、けど、あたしに気を遣った演技かもしれない)部屋へ連れて帰ると、なんだかいろんなものが山のように積まれた机の前に降ろした。

 「これ…なんですの…」
 あたしがビックリして尋ねると、元信様はあたしの隣に座って、あたしの髪を撫でてかきあげ顔を自分の方へ向けた。

 「昨日の素晴らしい庚申待のお礼だそうですよ。
 殿下・権中納言殿・右近衛大将殿からです。
 姫のお元気が途中からなくなってしまわれたので、皆さまとてもご心配なさって居られました」

 「特に、権中納言殿と右近衛大将殿はご自分たちのご質問で、姫から明かしたくない事情を無理に聴きだしてしまったと、大変落ち込んで居られました」

 あらら、義光といい、お三方といい、あたしったらそんなに解りやすく元気なくなっちゃったかしら。
 
 あたしは、山と積まれた贈り物を手に取ってみる。
 果物とか、山海の珍味みたいな、お魚や干した肉、などさまざまなものがある。
 
 …っていうか、普通の女の子が喜びそうなお化粧品とかきれいな着物とか小間物とかではなく、食べ物率が異様に高いのは、まあ、そういうことなんだろうな。
 
 彼らのあたしへの評価っつうのは、ずばり『食いしんぼう』。

 「嬉しいのか傷つくのか、よく判りませんわね」とあたしはため息交じりに言う。

 すると元信様は慌てたように
 「いえ、皆様、姫の一番喜びそうなものを、と頭を悩ませておいででしたよ。その、食べ物に偏ってしまったのは、偶然ではないかと」
 と懸命にフォローする。

 違うでしょう偶然ではないよ…でも、まあいいか。
 皆、こんなに心配してくれてるんだ。

 「私はこれを姫にお届けする御使いの役目を負って参りました。
 また宮中に戻らなければならないのですが…」
 と言って、あたしの髪にキスする。
 
 あたしは式部さんにお願いして、食べ物を厨に運んでもらった。
 後に残ったのは、物語の草紙、和歌集、美しい貝合わせの道具など。

 草紙を手に取って見てみる。
 「それは、最近割と人気のある物語だそうです。
 右近衛大将どのはそういうものをいち早く御手に入れられる」
 と元信様は教えてくれる。

 ああ、女人を口説くのに使うんでしょ。
 あの人のやりそうなことだ。

 二の姫や縫姫はもう読んだかな?
 後で持って行ってみよう。

 「最も、今、巷で一番人気の草紙は、姫の物語ですけどね。
 凄いことになってるみたいですよ、宮中でも噂でもちきりです」
 元信様は微笑んであたしを見つめる。
 
 ん?姫の物語?
 そういえば、この頃なんか、草紙の話をよく聞くような。

 あたしがポカンとしていると、元信様は慌てたように言う。
 「あ、ご存知ないですか?
 …では、言わないほうが良いのか」

 「なんですか?おっしゃってください」
 あたしは気になって訊く。
 何なの皆して、知らないほうがとか言わないほうがとか。

 「いえ…ああそういえば、二の姫付きの女房が一人、おいとまを頂いて里に帰るとか。
 新たな女房を募集しているそうですが、ものすごい応募数で、家令かれいが面接してもしても終わらない決められないと嘆いて居りましたよ。
 草紙の影響でしょうね」

 元信様は誤魔化す。
 だから、草紙ってなに!
 なんなのよ、もう!
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