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第六章 運命の歯車
7.泣き落としの説得
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あたしは首を横にぶんぶん振る。
「あた、…わたくしには無理です、宮中にお伺いするなんてとてもとても。
元信様のお姉様に、お会いしてみたい気持ちはありますけど、でもダメです」
あたしの拒否ぶりに、元信様は「お気持ちは判りますが…」と顔を曇らせる。
「姉は入内してからお寂しくお過ごしのようで、私が少し顔を出しただけでとても喜んで居られて。
姫の創作菓子を非常に楽しそうに召し上がって居られた姿が印象的でした」
「以前よりお痩せになったようで…精神的なものが原因なのかもしれません。
父が左大臣になったことで、姉を更衣から女御にとのお話もありますが、ご本人はあまり乗り気ではないというか、呼び名が変わったからといって立場はそう変わらないと後ろ向きなお考えのようです」
「姫のお力をお借りして、姉を元気づけたいのです。
姫のお菓子を目当てとはいえ、主上のお渡りが久しぶりにあったことも、姉にとっては嬉しいことであったようです」
うう…泣き落としか~
元信様に言われちゃうと弱いよなぁ…
でも、宮殿とか…無理だよどう考えても。
義光に泣きついていろいろ教えてもらうかなあ。
また弱みを握られそうで嫌だけど。
うつむいたあたしに、元信様は近づいて手を取る。
「無理を申し上げているのは判っています。
申し訳ない…」
「でも、主上も貴女に会いたがって居られる。
ここ最近、宮中は貴女の噂ばかりなのですよ」
「東宮殿下を始め、若公達が貴女の話を主上にお聞かせ申し上げるから、主上もどうにかして貴女に会いたいとお考えあそばされているのは、お側にいる私にはよく判ります」
「引き裂かれるように入内の話が無くなって、主上も姫も嘆き悲しみ、苦しまれた。
姫が宮殿に行かれるのを躊躇われるお気持ちは判ります。
ですが姫も、主上にお会いになりたいお気持ちがあるのでは?」
元信様はあたしの表情を探るように見つめる。
あたしは別に主上に会いたくなんかないよ、会ったことないし。
…とは言えないし。
あたしの今の表情は、元信様にどう映っているんだろう。
「…元信様は、わたくしが主上にお会いすることについてどう思っていらっしゃるの?
良いの?」
あたしが訊いた途端、元信様はぎゅっときつくあたしを抱きしめる。
「嫌です。本当は…
貴女を綺麗な箱に閉じ込めて、私だけが見られるようにしたい」
「でも、姉のお気持ち、主上のお気持ち、それから貴女のお気持ち…いろいろ考えると、私のワガママを通すわけにはいかない」
あたしの肩を両手で持ち、微笑みかける。
「それに先ほど、姫は私のことだけを好きでいると、おっしゃってくださった。
私はそれを信じております」
あーあ。ここまで言われちゃなあ…
行くしかない、のか。
あたしが不承不承、頷くと、元信様はまたあたしを抱きしめた。
「ありがとう…」
耳元で呟いて、頬に口づける。
そのまま頬に何度もキスして、唇を重ねる。
唇を離しては何度もまた口づけて、右手を次第に単衣の前に動かし、胸に触れる。
単衣の合わせの間から手を差し入れて、乳房に触れた。
ちょっと…えっ?ここで?!
さっきまで式部さんと内侍さんいなかった??
あたしは瞑っていた目を見開いてしまった。
元信様は、はっとしたように手を抜いて「すみませんっ」とあたしを離した。
目を合わせられず、二人してうつむいてしまう。
「あ、あの…姉上もお喜びになると思います。
追って、正式に招待状が届くかと」
あたしは頷くと、元信様は目を逸らしたまま立ち上がった。
「私は宮中に戻ります。
すっかり遅くなってしまった。
…長居してすみません」
と頭を下げ、「行直!戻るぞ!」と大声で呼ばわりながら部屋の外へ出て行った。
「あた、…わたくしには無理です、宮中にお伺いするなんてとてもとても。
元信様のお姉様に、お会いしてみたい気持ちはありますけど、でもダメです」
あたしの拒否ぶりに、元信様は「お気持ちは判りますが…」と顔を曇らせる。
「姉は入内してからお寂しくお過ごしのようで、私が少し顔を出しただけでとても喜んで居られて。
姫の創作菓子を非常に楽しそうに召し上がって居られた姿が印象的でした」
「以前よりお痩せになったようで…精神的なものが原因なのかもしれません。
父が左大臣になったことで、姉を更衣から女御にとのお話もありますが、ご本人はあまり乗り気ではないというか、呼び名が変わったからといって立場はそう変わらないと後ろ向きなお考えのようです」
「姫のお力をお借りして、姉を元気づけたいのです。
姫のお菓子を目当てとはいえ、主上のお渡りが久しぶりにあったことも、姉にとっては嬉しいことであったようです」
うう…泣き落としか~
元信様に言われちゃうと弱いよなぁ…
でも、宮殿とか…無理だよどう考えても。
義光に泣きついていろいろ教えてもらうかなあ。
また弱みを握られそうで嫌だけど。
うつむいたあたしに、元信様は近づいて手を取る。
「無理を申し上げているのは判っています。
申し訳ない…」
「でも、主上も貴女に会いたがって居られる。
ここ最近、宮中は貴女の噂ばかりなのですよ」
「東宮殿下を始め、若公達が貴女の話を主上にお聞かせ申し上げるから、主上もどうにかして貴女に会いたいとお考えあそばされているのは、お側にいる私にはよく判ります」
「引き裂かれるように入内の話が無くなって、主上も姫も嘆き悲しみ、苦しまれた。
姫が宮殿に行かれるのを躊躇われるお気持ちは判ります。
ですが姫も、主上にお会いになりたいお気持ちがあるのでは?」
元信様はあたしの表情を探るように見つめる。
あたしは別に主上に会いたくなんかないよ、会ったことないし。
…とは言えないし。
あたしの今の表情は、元信様にどう映っているんだろう。
「…元信様は、わたくしが主上にお会いすることについてどう思っていらっしゃるの?
良いの?」
あたしが訊いた途端、元信様はぎゅっときつくあたしを抱きしめる。
「嫌です。本当は…
貴女を綺麗な箱に閉じ込めて、私だけが見られるようにしたい」
「でも、姉のお気持ち、主上のお気持ち、それから貴女のお気持ち…いろいろ考えると、私のワガママを通すわけにはいかない」
あたしの肩を両手で持ち、微笑みかける。
「それに先ほど、姫は私のことだけを好きでいると、おっしゃってくださった。
私はそれを信じております」
あーあ。ここまで言われちゃなあ…
行くしかない、のか。
あたしが不承不承、頷くと、元信様はまたあたしを抱きしめた。
「ありがとう…」
耳元で呟いて、頬に口づける。
そのまま頬に何度もキスして、唇を重ねる。
唇を離しては何度もまた口づけて、右手を次第に単衣の前に動かし、胸に触れる。
単衣の合わせの間から手を差し入れて、乳房に触れた。
ちょっと…えっ?ここで?!
さっきまで式部さんと内侍さんいなかった??
あたしは瞑っていた目を見開いてしまった。
元信様は、はっとしたように手を抜いて「すみませんっ」とあたしを離した。
目を合わせられず、二人してうつむいてしまう。
「あ、あの…姉上もお喜びになると思います。
追って、正式に招待状が届くかと」
あたしは頷くと、元信様は目を逸らしたまま立ち上がった。
「私は宮中に戻ります。
すっかり遅くなってしまった。
…長居してすみません」
と頭を下げ、「行直!戻るぞ!」と大声で呼ばわりながら部屋の外へ出て行った。
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