169 / 307
第七章 宮中
5.いつもの集まり?
しおりを挟む
部屋の周りが何だかざわざわと騒がしくなった。
複数の男の人の楽しそうな声が廊下を響いてくる。
「月子姫!ご機嫌いかがですか!」
と一番に喧しく入ってきたのは、東宮。
あたしじゃーねーだろー!
ここは楓間だろー!
更衣様にご挨拶しろ―!!
東宮は第二回幾望会の後、あんな形で怒って帰ってしまったが、翌日には平謝りの文が届いた。
嫌いにならないでほしい、本気で貴女を愛している、無理無体なやり方はしないから、と哀願というか懇願というか、読んでいてちょっと可哀相になっちゃうような手紙だった。
暁の上様のことは同情するし、このバカみたいな素直さはなんか嫌いにはなれないっていうか。
でもまあ、あたしはいずれにせよ、貴方には嫁がないよ。
「楓間の更衣様、月子姫、ご機嫌麗しゅう。
月子姫、今日は天気が良くて良かったですね。
道中はいかがでしたか」
と右近衛大将様の声。
「楓間の更衣様、初めまして。
月子姫、お会いしたかったですよ!
新たな演習問題を持ってきたんです!」
ガサガサと紙の音を響かせて、権中納言様の声。
だーかーらー。
あんた達、皆、バカじゃないのっ。
「申し訳ありません…更衣様…」
あたしが謝ると、更衣様はくすくすと可笑しそうに笑う。
「本当に、皆様あんな感じでいらっしゃるのね。
面白いわ、物語の世界がここにあるのだと実感するわ」
「主上も今日はそわそわしていらっしゃって、なんだか可笑しかったなあ」
と右近衛大将様。
「そうそう、退出あそばされるのもえっらい早かった」
権中納言様が笑っている。
「月子姫、お顔を見せてください」
と東宮が几帳を動かそうとする。
「ダメです!楓間の更衣様もいらっしゃるのよ!」
あたしが厳しく制すると、「えっ、そこに…?」と驚いたように手を止めた。
「わたくしもそろそろ、御帳台に戻らなくてはね。
主上がお越しあそばされるわ」
更衣様は膝立ちして、優雅に顔を隠し、周りを女房さん達に囲まれながら御帳台に戻っていった。
東宮がすぐさま几帳を退けてしまう。
内侍さんや式部さんは動じないけど、更衣様の女房さん達は、呆気にとられたようにこちらを見ている。
もう…恥ずかしいなあ…
そこへ「主上のお成りでございます」と呼ばわる声がして、皆一斉に平伏する。
あたしも手をついて頭を下げた。
いつの間にか、元信様があたしの隣に来ていた。
初めてだ…主上に会うの…
なんだかドキドキする。
御簾の上げられた御帳台に、主上が入ってきて座る衣擦れの音がする。
「皆、面をあげて」
低く響く優しい声が聴こえた。
几帳を退けられてしまったので、あたしは扇で顔を隠しながら身体を起こした。
左隣に東宮、右隣に元信様。
なんかおかしいよね、この構図…
複数の男の人の楽しそうな声が廊下を響いてくる。
「月子姫!ご機嫌いかがですか!」
と一番に喧しく入ってきたのは、東宮。
あたしじゃーねーだろー!
ここは楓間だろー!
更衣様にご挨拶しろ―!!
東宮は第二回幾望会の後、あんな形で怒って帰ってしまったが、翌日には平謝りの文が届いた。
嫌いにならないでほしい、本気で貴女を愛している、無理無体なやり方はしないから、と哀願というか懇願というか、読んでいてちょっと可哀相になっちゃうような手紙だった。
暁の上様のことは同情するし、このバカみたいな素直さはなんか嫌いにはなれないっていうか。
でもまあ、あたしはいずれにせよ、貴方には嫁がないよ。
「楓間の更衣様、月子姫、ご機嫌麗しゅう。
月子姫、今日は天気が良くて良かったですね。
道中はいかがでしたか」
と右近衛大将様の声。
「楓間の更衣様、初めまして。
月子姫、お会いしたかったですよ!
新たな演習問題を持ってきたんです!」
ガサガサと紙の音を響かせて、権中納言様の声。
だーかーらー。
あんた達、皆、バカじゃないのっ。
「申し訳ありません…更衣様…」
あたしが謝ると、更衣様はくすくすと可笑しそうに笑う。
「本当に、皆様あんな感じでいらっしゃるのね。
面白いわ、物語の世界がここにあるのだと実感するわ」
「主上も今日はそわそわしていらっしゃって、なんだか可笑しかったなあ」
と右近衛大将様。
「そうそう、退出あそばされるのもえっらい早かった」
権中納言様が笑っている。
「月子姫、お顔を見せてください」
と東宮が几帳を動かそうとする。
「ダメです!楓間の更衣様もいらっしゃるのよ!」
あたしが厳しく制すると、「えっ、そこに…?」と驚いたように手を止めた。
「わたくしもそろそろ、御帳台に戻らなくてはね。
主上がお越しあそばされるわ」
更衣様は膝立ちして、優雅に顔を隠し、周りを女房さん達に囲まれながら御帳台に戻っていった。
東宮がすぐさま几帳を退けてしまう。
内侍さんや式部さんは動じないけど、更衣様の女房さん達は、呆気にとられたようにこちらを見ている。
もう…恥ずかしいなあ…
そこへ「主上のお成りでございます」と呼ばわる声がして、皆一斉に平伏する。
あたしも手をついて頭を下げた。
いつの間にか、元信様があたしの隣に来ていた。
初めてだ…主上に会うの…
なんだかドキドキする。
御簾の上げられた御帳台に、主上が入ってきて座る衣擦れの音がする。
「皆、面をあげて」
低く響く優しい声が聴こえた。
几帳を退けられてしまったので、あたしは扇で顔を隠しながら身体を起こした。
左隣に東宮、右隣に元信様。
なんかおかしいよね、この構図…
1
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる