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第七章 宮中
14.解散
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主上は立ち上がり、皆を見回す。
「今日は皆、大儀であった。
このようなことになって、余にも責任の一端はあると思う。
検非違使にも捜査の手を抜かぬよう、きつく命じておこう」
そしてあたしを見て、少しかがんで頬から髪を撫でた。
「姫も朝早くから一日中走り回られて、お疲れでしょう。
お陰で食中毒拡大の被害は、未然に防がれました。ありがとう。
夜も更けたし、左近衛中将、伊都子姫をお送り申し上げるように」
「はっ」
元信様が平伏する。
皆が頭を下げる中、主上は優雅に部屋を立ち去っていった。
途端に皆、弛緩して、思い思いに伸びをしたり首を回したりする。
「あー…長い一日だった」
伊靖君が呟く。
本当だね…皆、うん、って感じで首肯する。
疲れたねえ…
「って言うか、何も食べてないなあ、夕食は廃棄だし」
「そうだね…腹減ったな」
「皆様、右大臣家にいらっしゃいませんか。
東宮様から幾望会のお礼にと頂戴した、さまざまな食材が、右大臣家では消費しきれずにありますの。
右大臣家の司厨長に頑張ってもらってはいるのですけど」
あたしは困ったように笑ってみせる。
東宮は、加減ってものを知らないんだよ…
皆、がばっと起き上がる。
東宮があたしを抱きあげた。
「いいですね、そうしましょう!」
歩き出そうとする。
「しかし、こんな夜更けに、右大臣家は大丈夫ですか」
良識的な権中納言様が言う。
「まあ、今日は仕方ありませんわ。
後で東宮様から、うちの者たちにはご褒美を頂戴するということで」
あたしが東宮の肩越しに皆に笑いかけると、皆も和んだように笑った。
東宮も「承知しました!」と大笑いする。
「月子姫は…お強いですね。
普通の女人だったら精神的にも肉体的にも耐えがたい出来事を、易々と乗り越えていかれる」
右近衛大将様が感に堪えないというように言った。
そうじゃないんだよ…
あたしはうつむく。
すごく怖いんだよ、本当は。
右大臣家に帰って、一人で寝るなんて耐えられないの。
あたしのまったく知らないところで、知らない人からの悪意によって陥れられようとしていること。
主上の、あたしを伊都子姫じゃないと知ってもなお、後宮に入れたいと告白されたこと。
ぐちゃぐちゃの頭、めちゃめちゃの感情をどう整理していいか判らない。
怖くて一人じゃいられない。
東宮はあたしを抱きしめる。
額にそっと口づけた。
「…本当は貴女を東宮御所に連れていきたい。
だけど今は、関白の目が光っているからな…」
何かを睨み据えるようにして、低く呟く。
東宮も何かいろいろあるんだな。
怖いな、大内裏…
「今日は皆、大儀であった。
このようなことになって、余にも責任の一端はあると思う。
検非違使にも捜査の手を抜かぬよう、きつく命じておこう」
そしてあたしを見て、少しかがんで頬から髪を撫でた。
「姫も朝早くから一日中走り回られて、お疲れでしょう。
お陰で食中毒拡大の被害は、未然に防がれました。ありがとう。
夜も更けたし、左近衛中将、伊都子姫をお送り申し上げるように」
「はっ」
元信様が平伏する。
皆が頭を下げる中、主上は優雅に部屋を立ち去っていった。
途端に皆、弛緩して、思い思いに伸びをしたり首を回したりする。
「あー…長い一日だった」
伊靖君が呟く。
本当だね…皆、うん、って感じで首肯する。
疲れたねえ…
「って言うか、何も食べてないなあ、夕食は廃棄だし」
「そうだね…腹減ったな」
「皆様、右大臣家にいらっしゃいませんか。
東宮様から幾望会のお礼にと頂戴した、さまざまな食材が、右大臣家では消費しきれずにありますの。
右大臣家の司厨長に頑張ってもらってはいるのですけど」
あたしは困ったように笑ってみせる。
東宮は、加減ってものを知らないんだよ…
皆、がばっと起き上がる。
東宮があたしを抱きあげた。
「いいですね、そうしましょう!」
歩き出そうとする。
「しかし、こんな夜更けに、右大臣家は大丈夫ですか」
良識的な権中納言様が言う。
「まあ、今日は仕方ありませんわ。
後で東宮様から、うちの者たちにはご褒美を頂戴するということで」
あたしが東宮の肩越しに皆に笑いかけると、皆も和んだように笑った。
東宮も「承知しました!」と大笑いする。
「月子姫は…お強いですね。
普通の女人だったら精神的にも肉体的にも耐えがたい出来事を、易々と乗り越えていかれる」
右近衛大将様が感に堪えないというように言った。
そうじゃないんだよ…
あたしはうつむく。
すごく怖いんだよ、本当は。
右大臣家に帰って、一人で寝るなんて耐えられないの。
あたしのまったく知らないところで、知らない人からの悪意によって陥れられようとしていること。
主上の、あたしを伊都子姫じゃないと知ってもなお、後宮に入れたいと告白されたこと。
ぐちゃぐちゃの頭、めちゃめちゃの感情をどう整理していいか判らない。
怖くて一人じゃいられない。
東宮はあたしを抱きしめる。
額にそっと口づけた。
「…本当は貴女を東宮御所に連れていきたい。
だけど今は、関白の目が光っているからな…」
何かを睨み据えるようにして、低く呟く。
東宮も何かいろいろあるんだな。
怖いな、大内裏…
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