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第七章 宮中
13.主上の気持ち
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「だから、見た目について左近衛中将に訊いてみた。
もしかしたら違う人物が成りすましているのではないかと。
左近衛中将は、美しさの弥増した、伊都子姫ですよと」
おお…盲目的。
嬉しすぎる。
「私の中では、なかなか認められなかったのだが…
伊都子姫の中に誰か別人が入り込んだということなのだろうと」
主上ってすごく、ロジカルな思考の持ち主なんだな。
理屈が感情を優先するタイプだわ。
でなきゃ、天皇なんてできないか。
すごいな。
あの、東宮にできんの?
ちょっと不安になっちゃうよ。
「そう念頭に置いて東宮や他の者の、姫についての話を聞いてみると誠に面白い。
いつ正体というか馬脚を露すかと私はたまにヒヤヒヤするのだが、皆、なんかおかしいと思いながらも、貴女の魅力の前に完全に屈してしまって、本気で疑おうとはしていない」
イヤ、そうでもないよ。
結構危ないこといっぱいあったよ。
「そして、私は…いつの間にか、『あなた』という人に惹かれ始めていた。
伊都子姫ではない、あなた個人にね」
え…どういうこと。
あたしは主上を見上げる。
「先ほども申したとおり、私は貴女に会いたくて会いたくて、ずっと焦がれていた。
嘘偽りない、本当の気持ちだ。
実際にお会いしてみたら、想像以上に魅力的な人だった。
伊都子姫とは違う聡明さと強靭さを持ち、伊都子姫にはない朗らかさと思いやりがある」
そう言って口を閉じ、主上は深い色の瞳であたしをじっと見つめた。
その瞳には、何かを決意した、強い光が宿る。
「左近衛中将に貴女を渡したのは、私の一生の不覚だった。
撤回する。
そしてあなたを後宮へ迎え入れたい」
何言ってんの!
ダメだよそんなの!!
「わたくしは、右大臣の娘ですわ。
そんなこと…できるわけがありませんでしょう」
「次の除目までには、何とかする。
関白の動きが見えないのが、少し不安ではあるが…
いざとなれば、私は退位して良い。
貴女とふたり、どこぞの山の中でも暮らせればよい」
「ご冗談もほどほどになさってくださいませ。
この国を統べる天子様がそのようなことを軽々に仰せになるものではありませんわ」
あたしは声を荒らげる。
じょうっだんじゃないよ!
何で、みんなそんなに勝手なのよ!
廊下が騒がしくなって、皆がドヤドヤと戻ってきた。
「うあぁー…参った」
東宮はため息まじりに嘆きながら入ってきた。
「司厨長は自殺しました。
料理に仕込んだ毒を自分で服んだようだ。
即効性のある蛇毒だったようで、解毒どころじゃない」
死んじゃったんだ…
あたしはなんだかいたたまれない気持ちになる。
「月子姫のせいではない。
貴女が責任を感じることはない」
あたしの表情を見た右近衛大将様が、強い口調で言った。
「しかしこれで…この事件はどうなるんだ。
月子姫の冤罪を晴らすには、どうしたらいいんだ」
権中納言様が頭を抱える。
「物証と、証言を集めるしかありません。
姫にはそんなことはできなかったという、不在証明を明らかにすれば。
検非違使庁だってバカでないですから」
元信様が前を見据えて言う。
不在証明か…
そうだよね、それができれば。
「とにかく、月子姫の無罪を獲得できれば良いのだ。
太政大臣の罪を暴くのはその後だ」
東宮も力強く言った。
「では、その方向で。
余も協力は惜しまない」
と主上が締めて、その日は解散になった。
皆、ありがとう。
こんな状況、あたし一人だったらどんなに心細かったことか。
皆がいてくれて、あたしは本当に心強い。
もしかしたら違う人物が成りすましているのではないかと。
左近衛中将は、美しさの弥増した、伊都子姫ですよと」
おお…盲目的。
嬉しすぎる。
「私の中では、なかなか認められなかったのだが…
伊都子姫の中に誰か別人が入り込んだということなのだろうと」
主上ってすごく、ロジカルな思考の持ち主なんだな。
理屈が感情を優先するタイプだわ。
でなきゃ、天皇なんてできないか。
すごいな。
あの、東宮にできんの?
ちょっと不安になっちゃうよ。
「そう念頭に置いて東宮や他の者の、姫についての話を聞いてみると誠に面白い。
いつ正体というか馬脚を露すかと私はたまにヒヤヒヤするのだが、皆、なんかおかしいと思いながらも、貴女の魅力の前に完全に屈してしまって、本気で疑おうとはしていない」
イヤ、そうでもないよ。
結構危ないこといっぱいあったよ。
「そして、私は…いつの間にか、『あなた』という人に惹かれ始めていた。
伊都子姫ではない、あなた個人にね」
え…どういうこと。
あたしは主上を見上げる。
「先ほども申したとおり、私は貴女に会いたくて会いたくて、ずっと焦がれていた。
嘘偽りない、本当の気持ちだ。
実際にお会いしてみたら、想像以上に魅力的な人だった。
伊都子姫とは違う聡明さと強靭さを持ち、伊都子姫にはない朗らかさと思いやりがある」
そう言って口を閉じ、主上は深い色の瞳であたしをじっと見つめた。
その瞳には、何かを決意した、強い光が宿る。
「左近衛中将に貴女を渡したのは、私の一生の不覚だった。
撤回する。
そしてあなたを後宮へ迎え入れたい」
何言ってんの!
ダメだよそんなの!!
「わたくしは、右大臣の娘ですわ。
そんなこと…できるわけがありませんでしょう」
「次の除目までには、何とかする。
関白の動きが見えないのが、少し不安ではあるが…
いざとなれば、私は退位して良い。
貴女とふたり、どこぞの山の中でも暮らせればよい」
「ご冗談もほどほどになさってくださいませ。
この国を統べる天子様がそのようなことを軽々に仰せになるものではありませんわ」
あたしは声を荒らげる。
じょうっだんじゃないよ!
何で、みんなそんなに勝手なのよ!
廊下が騒がしくなって、皆がドヤドヤと戻ってきた。
「うあぁー…参った」
東宮はため息まじりに嘆きながら入ってきた。
「司厨長は自殺しました。
料理に仕込んだ毒を自分で服んだようだ。
即効性のある蛇毒だったようで、解毒どころじゃない」
死んじゃったんだ…
あたしはなんだかいたたまれない気持ちになる。
「月子姫のせいではない。
貴女が責任を感じることはない」
あたしの表情を見た右近衛大将様が、強い口調で言った。
「しかしこれで…この事件はどうなるんだ。
月子姫の冤罪を晴らすには、どうしたらいいんだ」
権中納言様が頭を抱える。
「物証と、証言を集めるしかありません。
姫にはそんなことはできなかったという、不在証明を明らかにすれば。
検非違使庁だってバカでないですから」
元信様が前を見据えて言う。
不在証明か…
そうだよね、それができれば。
「とにかく、月子姫の無罪を獲得できれば良いのだ。
太政大臣の罪を暴くのはその後だ」
東宮も力強く言った。
「では、その方向で。
余も協力は惜しまない」
と主上が締めて、その日は解散になった。
皆、ありがとう。
こんな状況、あたし一人だったらどんなに心細かったことか。
皆がいてくれて、あたしは本当に心強い。
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