三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第七章 宮中

23.あたしにできること。

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 あたしは、しまった…と思ったが、もう遅い。
 ちょっと気まずい雰囲気になってしまった。
 
 「そういえば先日幾望会で頂戴した、月子姫手作りの蚊除け剤、大変よく効きましてね。
 妻がとても喜んでおりました。
 本当にありがとうございます!」
 と、明るく蔵人頭様が言う。

 「私の妻も、石鹸を非常に喜びまして。
 今日、月子姫をお訪ねする旨を話しましたら、お礼を差し上げて欲しいと」
 ぎくしゃくと参議様が言い、ぎぎーっと音がしそうな動作で、懐から何かを取り出した。

 あらまあ…奥様がいらっしゃったのね、参議様…
 石鹸、奥様に差し上げてくれたんだ。
 
 参議様が手渡してくれたのは、陶器のお人形だった。
 童子の愛らしい笑顔を、上手に表現してある。

 「まあ、可愛らしい…
 素敵ですわね。
 ありがとうございます、大切に致しますわ」
 あたしは微笑んで、文机の上に置いた。

 それから豪華なお膳がいくつも運ばれ(あたしの知らない食材もけっこうあった)、皆それぞれにしゃべったり、あたしのところへ話をしに来てくれたり、和やかに過ぎていった。

 東宮が皆と楽しそうに話しているのを見ていると、宮中での立場が良くないなどとは全然信じられなかった。
 
 あたしは、主上の為に、東宮の為に、いったい何ができるだろうか。
 何かしなきゃいけないと思う。
 結婚することはできないけど。

 「月子姫、どうなさいましたか」
 あたしが見つめているのに気づいた東宮が、御帳台の中に入ってくる。
 
 「いいえ…
 わたくしはいつも、東宮様の明るさとバイタリティに助けられるなあと思って。
 今回のことも、主上と東宮様が中心になって探査なさってくださったのでしょう?」

 あたしが見上げると、東宮は照れたように笑ってあたしの頬に触れる。
 「バイタリティ…が何のことか判りませんが…
 私にとって、月子姫は月ではなく太陽のような方なのですよ。
 貴女のまばゆく輝く光を受けることができて初めて、私も明るくなれる」

 あたしは目を伏せ、少し笑った。
 「では、東宮様が月ですわね。
 わたくしが太陽なら…」

 「でも、そうではありませんのよ。
 わたくしの退屈な毎日を、東宮様が楽しくしてくださった。
 わたくしに、新しい世界の扉を開いてくださった。
 感謝しており」

 言葉を終えないうちに、あたしはきつく抱きしめられた。
 御簾を上げっぱなしでの東宮の行為に、さすがに部屋の中がざわめく。
 
 「月子姫…私の許へ来てください。
 私は、貴女と共になら、どこへでも行ける。
 地位も権力も何もかも捨てていい」
 耳元で囁く声は、ひどく辛そうで悲しそうで、あたしは言葉を失くす。

 あたしは両手を東宮の胸に当て、ぐっと強く押して身体を離す。
 
 「東宮様、わたくしは」
 左近衛中将様と、と言いかけた時、「姫!」と鋭く制する声がした。
 声の主は、元信様。

 「何のお話ですか?
 月と太陽…とか聞こえましたが」
 にこやかに近づいてきて、あたしの隣に座る。

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