三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第七章 宮中

22.姉弟関係

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 「皆様より、たくさんの食材を頂戴いたしまして、ありがとうございました。
 姫様ともご相談申し上げまして、またさまざまな創作料理に挑戦したいと存じます」
 床に手をついて、深くお辞儀する。

 「本日は、宮殿の司厨長殿と東宮御所の司厨長殿の応援も賜りまして、お祝い会の膳をお作り申し上げます。
 どうぞ、今少しお待ちくださいませ」
 また平伏する。

 「ああ、そうだ。
 後ほど、一昨日の残業代を、私から皆に支払うよ」
 と言って、東宮が楽しそうに笑う。

 「は、…ありがとうございます。
 皆にも伝えます」
 料理長はびっくりしたように東宮とあたしを見る。

 あたしが頷くと、料理長はまた深々と頭を下げ、部屋を出て行った。
 入れ違いに、女房さん達がお酒と簡単な肴を載せたお膳を運んできて、各々おのおのの前に置く。

 「東宮様…司厨長をお連れになってくださったの?」
 あたしが訊くと、東宮はあたしを見てパチンと片目をつぶった。
 
 「宮廷の司厨長が来ているとは知りませんでしたが…
 急にこれだけの人数を連れてくるのに、少しは責任持たないとね。
 また特別な賞与を支払わなきゃならなくなるし」
 
 くすくす笑う。
 よっぽど残業代が面白かったらしい。

 「では、皆、盃を持って。
 月子姫に対する、酷い冤罪をここにいる皆と主上で力を合わせて晴らした。
 大内裏でも主上をお支え申し上げ、私たちの若い力で以て、政治を変えていこう」
 東宮は力強く朗々と響く声を張って、皆を見回し、皆が頷くのを見て盃を掲げる。
 
 「月子姫の知恵と美貌、我らの未来に乾杯!」

 「乾杯!」
 皆で唱和する。

 「月子姫、姉が厚くお礼申し上げます、と仰せでした。
 本当にありがとうございました」
 左大弁である元信様のお兄様が、爽やかに笑いながら声をかけてくる。
 ああもう、あたしは『月子姫』になっちゃってるわけね…

 「楓間の更衣様のご容体はいかがでございますか?」
 あたしが尋ねると
 「今朝から食欲もお戻りになり、召し上がって居られますよ」
 と答えた。

 「私の姉も、お礼を申し上げてくださいとおっしゃって居られた」
 と権中納言様も言う。

 ん?権中納言様の姉君?
 「宮中では、宝鏡殿の女御とお呼び申し上げる方です。
 今度の薫物合わせでは、月子姫のお力をお借りして共に」

 ああ、そうか!
 さきの太政大臣の御娘御おんむすめごであられるんだった。
 もう、この相関関係、複雑すぎて。

 「そうか、私の姉もお世話になったんだ。
 月子姫、ありがとうございました」
 蔵人頭様も思い出したように言う。

 えーっと…全然判んない。
 誰のことを言ってるのか…

 「月子姫は、宮中のことはきれいさっぱりお忘れになって居られるらしいな。
 蔵人頭の姉君は、桐花殿の女御であられるよ。
 お忘れになりたい方かもしれないが」
 東宮がニヤニヤ笑いながら言う。
 
 こういうとこ、本当に無神経だわ。
 あたしは東宮を睨む。

 「桐花殿の女御様に個人的にお会いしたことはございませんし。
 まったく存じ上げませんので、忘れようもございません」

 ツンとして言う。
 本当のことだもーん。

 男どもは「怖っ…」という感じで顔を見合わせる。
 東宮は「さようですか。それは大変失礼仕りました」と軽く頭を下げた。
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