三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第七章 宮中

28.不確定要素・1

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 「右大臣殿としては、秋の除目が終わって伊靖君の昇進が決まってから、私と姫の正式な婚約、できれば露顕ところあらわしを発表したいというお考えのようです。
 伊靖君が私たちの罪のとばっちりを受けないように、有力者の姫君とめあわせる算段もしておられる。
 有力貴族の婿にしてしまえば、伊靖君の地位も安泰ですから」

 「ですから今はまだ、誰にもこのことはお話になられませんよう、お願いします」
 元信様はあたしの唇に指を触れて、少し笑った。

 あたしは、とりあえず頷く。
 なんかいろいろ納得できない。
 
 「お父様がそこまでお考えだったとは…存じませんでした。
 だけど元信様、勘当されてまでわたくしと一緒になる利点ってあるのかしら」
 思わず考えたことをそのまま口に出す。

 「姫!」
 と言いざまに、元信様はあたしをきつく抱きしめる。

 「何をおっしゃるんです!
 今、私がどれほど幸せか…
 貴女が、並みいる貴公子たちの中から、こんな私を選んでくださった。
 私にとってこれ以上の幸福はありませんよ」

 腕を解き、そのままあたしの頬を両手で挟んで、深く口づけた。
 唇を離して見つめ合う。
 
 「姫…愛している…
 大好きだよ」
 呟いてまたキスする。

 「抱きたい…」
 苦しそうに言って抱きしめる。
 
 え…宜しいのでは…とあたしは思うけど、とても口には出せない。

 ぎゅうっとあたしを抱きしめたまま、荒い呼吸を整え、耐えているのが判る。
 何でそこまで我慢するの?

 そういう性格なんだろうな…
 お兄様が言っていたように「意固地で融通が利かない」。
 よく言えば「真面目で義理堅い」。

 三日夜の餅と露顕が、とことんあたしたちの邪魔をするなぁ…
 いったい、いつになったらあたしたちは結ばれるのかしら。

 あたしは大きくため息をついて
 「先ほどおっしゃっていた『不確定要素が多すぎてそうなるかどうかわからない』と言う言葉は、どういう意味ですの?」
 と訊いた。

 元信様は「すみません…」と言って、あたしを離した。
 「私にもう少し勇気があれば…でも、いろいろ考えてしまって行動に起こせない」
 寂しそうに笑う。
 
 「右大臣殿から、お聞き及びと思いますが…
 東宮殿下の宮中でのお立場が、微妙と言うよりははっきりと悪くなっています。
 関白殿と太政大臣殿、お二人の利害は相反しているのに、なぜか標的が同じ東宮殿下なのです」

 「細かいことに言いがかりのような理由をつけて文句を言い、殿下を貶めようとなさっている。
 主上がお二人の暴言をいくらいさめても、だんだん声高になってきています」

 「私たち若い公達は皆、殿下の明るく人好きのするお人柄や、意外と人情に篤くて親分肌なところなどについて、宮中の派閥を超えてお慕いしていますから、関白殿や太政大臣殿が何を言おうと関係ありませんが…」

 「今日、とても辛そうで悲しいお顔を何度もなさっていらっしゃったわ…」
 あたしが言うと、元信様も辛そうに頷く。

 「このままでは本当に、東宮を廃し奉るかもしれない。
 主上は殿下に皇子が授かる授からないに関わらず、ご自分が退位し、東宮殿下に譲位するとお考えのようです」

 え…主上、本当に天皇辞めるつもりなの?
 あたしは息を飲む。
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