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第八章 暗雲
18.証拠
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「姫様、左近衛中将様…失礼いたします…」
御帳台の外からそっと声がかかる。
内侍さんだ。
「元信、逢瀬は終わりだ。
宮殿に帰るぞ」
あれ?お兄様の声もする。
元信様は急いであたしを膝から降ろして、御帳台の御簾を上げた。
部屋の真ん中にお兄様が立っていて、内侍さんが御帳台の前に座っている。
「月子姫、こんばんは。
遅くに押しかけまして申し訳ありません。
ただ、元信に探査をさせず、貴女と過ごす時間をやったことには、感謝して頂きたい」
お兄様は笑い、元信様は「兄上!」と焦ったように言う。
「成果は上々だ。
かなり大きな証拠を残している」
お兄様は満足そうに、元信様に片目をつぶってみせる。
それに、と言って外廊下に控える従者の人を振り返る。
従者の人は、誰かの手だか足だかをつかんでいる。
外廊下は御簾があげられているけど暗くて、御帳台から漏れる光だけではよく見えない。
「命婦…」と、元信様が言った。
え?見えるの?
ってか、『命婦』って…二の姫の女房で、関白の間者の!
「此奴、どこにいたと思う。
床下に居ったのだ。
探査犬が見つけた」
お兄様がバカにしたように言う。
床下…あたしは驚き、外廊下に目を凝らす。
命婦さんは猿轡を噛まされて腰縄を打たれ、手足も縛られているみたい。
長い髪がざんばらに顔にかかり、表情は見えない。
「あ、…あの、あまり手荒なことは…なさらないで…」
あたしは命婦さんのあまりに痛々しい姿に、思わずお兄様に声をかける。
お兄様も元信様も、それから内侍さんも、びっくりしたようにあたしを凝視した。
「月子姫…この者は関白殿の間者で、貴女と殿下を謀反の罪に追い落とそうとしたのですよ」
お兄様はあたしを見たまま、声に驚きをにじませる。
「そ、それは、そうなん、ですけど…」
あたしはうつむいて、しどろもどろになる。
「宮中で、厨司長が姫に中宮毒殺の罪をかぶせようとしたときにも、痛めつけないようにとかばって居られましたね」
元信様はあたしの髪を撫でて、少し笑う。
お兄様は呆気にとられたようにあたしを見ていたが、やがて笑いだした。
「いや、すごい方だ。
この逸話は、宮中に帰って皆に披露せねば」
楽しそうに言って「では、失礼いたします。東宮殿下によろしくお伝えください」と頭を下げた。
「また参ります。
姫も、少しはお休みになられるようにね」
元信様はあたしの頬にキスして言った。
兄弟を見送ると、あたしはよっこらしょと立ち上がった。
二の姫にもあまり無理はさせられない。
東宮の看病、交代しよう。
御帳台の外からそっと声がかかる。
内侍さんだ。
「元信、逢瀬は終わりだ。
宮殿に帰るぞ」
あれ?お兄様の声もする。
元信様は急いであたしを膝から降ろして、御帳台の御簾を上げた。
部屋の真ん中にお兄様が立っていて、内侍さんが御帳台の前に座っている。
「月子姫、こんばんは。
遅くに押しかけまして申し訳ありません。
ただ、元信に探査をさせず、貴女と過ごす時間をやったことには、感謝して頂きたい」
お兄様は笑い、元信様は「兄上!」と焦ったように言う。
「成果は上々だ。
かなり大きな証拠を残している」
お兄様は満足そうに、元信様に片目をつぶってみせる。
それに、と言って外廊下に控える従者の人を振り返る。
従者の人は、誰かの手だか足だかをつかんでいる。
外廊下は御簾があげられているけど暗くて、御帳台から漏れる光だけではよく見えない。
「命婦…」と、元信様が言った。
え?見えるの?
ってか、『命婦』って…二の姫の女房で、関白の間者の!
「此奴、どこにいたと思う。
床下に居ったのだ。
探査犬が見つけた」
お兄様がバカにしたように言う。
床下…あたしは驚き、外廊下に目を凝らす。
命婦さんは猿轡を噛まされて腰縄を打たれ、手足も縛られているみたい。
長い髪がざんばらに顔にかかり、表情は見えない。
「あ、…あの、あまり手荒なことは…なさらないで…」
あたしは命婦さんのあまりに痛々しい姿に、思わずお兄様に声をかける。
お兄様も元信様も、それから内侍さんも、びっくりしたようにあたしを凝視した。
「月子姫…この者は関白殿の間者で、貴女と殿下を謀反の罪に追い落とそうとしたのですよ」
お兄様はあたしを見たまま、声に驚きをにじませる。
「そ、それは、そうなん、ですけど…」
あたしはうつむいて、しどろもどろになる。
「宮中で、厨司長が姫に中宮毒殺の罪をかぶせようとしたときにも、痛めつけないようにとかばって居られましたね」
元信様はあたしの髪を撫でて、少し笑う。
お兄様は呆気にとられたようにあたしを見ていたが、やがて笑いだした。
「いや、すごい方だ。
この逸話は、宮中に帰って皆に披露せねば」
楽しそうに言って「では、失礼いたします。東宮殿下によろしくお伝えください」と頭を下げた。
「また参ります。
姫も、少しはお休みになられるようにね」
元信様はあたしの頬にキスして言った。
兄弟を見送ると、あたしはよっこらしょと立ち上がった。
二の姫にもあまり無理はさせられない。
東宮の看病、交代しよう。
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