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第九章 二度目の死と伊都子姫
1.謎の手紙
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その日は朝から小雨が降っていて、朝晩はめっきり秋めいて肌寒かった。
早朝には、まだ炭や灰は入れていないけれど火鉢が出された。
あたしは昨日から何となく体調が悪くて、その朝は褥でぐずぐずしていた。
どこがどう悪い、っていうのではなくて身体がなんとなく重くてだるい。
そこへ、東宮からの急使が来た。
「伊都子姫様に、殿下からお急ぎのお文でございます」
小雨に濡れそぼった御使いはそう言うと手紙を式部さんに渡し、引き留める間もなく帰って行ってしまった。
嫌な予感がした。
「すぐに見せて」
あたしは起き上がって急かす。
式部さんは、あたしのただならぬ気配に、急いで御帳台に入ってきて渡してくれる。
いつものように、綺麗な装丁の巻紙。
いい香りの薄様紙に美しい手蹟。
『高いお山には、そろそろ紅葉が始まる頃でしょうか。
姫のお嫌いな火事の多い、師走が近づきますね。
あなたのお幸せを祈っています』
これだけ?
なに、これ…意味不明。
訳が分からないけど、でも東宮は何かをあたしに伝えようとしている。
それは何か…良くないことのような気がする。
あたしは手紙を巻くと、自分で着替えを始めた。
式部さんが慌てて入ってきて、手伝ってくれる。
「ちょっと縫姫の局に行ってくるわ」
手紙を持って、内廊下に出て右に曲がる。
局に行くと見せかけて、使っていない隣の部屋を突っ切って外廊下に出る。
誰かの沓が階の下に置いてあった。
袿を何枚か脱いで身軽になり、置いてある誰かの沓を履く。
雨に濡れて寒いし、沓はぶかぶかだけど、気にしていられない。
発熱し始めているかもしれない。
異常に寒い。
あたしは急いで厩舎の方へ向かう。
誰かに気づかれないうちに、早く!
厩舎の前まで行くと、誰もいなかった。
裏の方から誰かの笑い声がする。
淡香花を引き出そうと、縄をほどく。
手が寒さで震えて上手くいかない。
淡香花は不安そうにいななく。
ごめんね、いつも誰かにやってもらってるから、上手くできない…
「月子姫?!
何やってるんですか?」
淡香花のいななきを聞いて舎人とやってきたのは、義光!
「義光!…東宮様が…!」
あたしは義光に手紙を渡す。
義光は手紙をほどいて一見して、顔色を変える。
「姫!これは…」
「判らないんだけど、何か暗号?みたいなもののような気がするの。
東宮様はどこかで何かをしようとしているの?
あたしの嫌いな、火事って…そんな話したこと無いと思うんだけど。
どうして師走なの?今まだ、長月の始めなのに、どういうこと?」
師走…あたしは考える。
師走は一年の最後の月で、『季冬』とも言うらしい。
「高いお山、っていうのも引っ掛かりますね。
『お』がわざとらしく平仮名なのが…」
義光も呟いて考え込む。
そして、ふたりで同時にあっと声を上げた。
「あたしの嫌いな、『加持祈祷』!」
「『高雄山』!神護寺だ!」
そして『あなたのお幸せを祈っています』!
出家する気だ!!
早朝には、まだ炭や灰は入れていないけれど火鉢が出された。
あたしは昨日から何となく体調が悪くて、その朝は褥でぐずぐずしていた。
どこがどう悪い、っていうのではなくて身体がなんとなく重くてだるい。
そこへ、東宮からの急使が来た。
「伊都子姫様に、殿下からお急ぎのお文でございます」
小雨に濡れそぼった御使いはそう言うと手紙を式部さんに渡し、引き留める間もなく帰って行ってしまった。
嫌な予感がした。
「すぐに見せて」
あたしは起き上がって急かす。
式部さんは、あたしのただならぬ気配に、急いで御帳台に入ってきて渡してくれる。
いつものように、綺麗な装丁の巻紙。
いい香りの薄様紙に美しい手蹟。
『高いお山には、そろそろ紅葉が始まる頃でしょうか。
姫のお嫌いな火事の多い、師走が近づきますね。
あなたのお幸せを祈っています』
これだけ?
なに、これ…意味不明。
訳が分からないけど、でも東宮は何かをあたしに伝えようとしている。
それは何か…良くないことのような気がする。
あたしは手紙を巻くと、自分で着替えを始めた。
式部さんが慌てて入ってきて、手伝ってくれる。
「ちょっと縫姫の局に行ってくるわ」
手紙を持って、内廊下に出て右に曲がる。
局に行くと見せかけて、使っていない隣の部屋を突っ切って外廊下に出る。
誰かの沓が階の下に置いてあった。
袿を何枚か脱いで身軽になり、置いてある誰かの沓を履く。
雨に濡れて寒いし、沓はぶかぶかだけど、気にしていられない。
発熱し始めているかもしれない。
異常に寒い。
あたしは急いで厩舎の方へ向かう。
誰かに気づかれないうちに、早く!
厩舎の前まで行くと、誰もいなかった。
裏の方から誰かの笑い声がする。
淡香花を引き出そうと、縄をほどく。
手が寒さで震えて上手くいかない。
淡香花は不安そうにいななく。
ごめんね、いつも誰かにやってもらってるから、上手くできない…
「月子姫?!
何やってるんですか?」
淡香花のいななきを聞いて舎人とやってきたのは、義光!
「義光!…東宮様が…!」
あたしは義光に手紙を渡す。
義光は手紙をほどいて一見して、顔色を変える。
「姫!これは…」
「判らないんだけど、何か暗号?みたいなもののような気がするの。
東宮様はどこかで何かをしようとしているの?
あたしの嫌いな、火事って…そんな話したこと無いと思うんだけど。
どうして師走なの?今まだ、長月の始めなのに、どういうこと?」
師走…あたしは考える。
師走は一年の最後の月で、『季冬』とも言うらしい。
「高いお山、っていうのも引っ掛かりますね。
『お』がわざとらしく平仮名なのが…」
義光も呟いて考え込む。
そして、ふたりで同時にあっと声を上げた。
「あたしの嫌いな、『加持祈祷』!」
「『高雄山』!神護寺だ!」
そして『あなたのお幸せを祈っています』!
出家する気だ!!
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