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第九章 二度目の死と伊都子姫
12.目が覚めて
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東宮とお兄様も都へ帰り、あたしは引きずり込まれるように眠った。
誰かに声をかけられても起きることができず、夢も見ずに昏々と眠り続けた。
自分でもすごい長い時間が経ったと自覚できるほどよく眠って、あたしは目を覚ました。
辺りは暗く、大殿油を灯した燭台があるだけだ。
あたしは状況をよく見ようと身じろぎした。
あたしの横で突っ伏して寝ていた人が起き上がって「月子姫、お目ざめですか」とあたしの顔を覗き込んだ。
「義光…」
「左近衛中将殿がずっとついて居られたのですが、一昨日から一睡もされていないので先ほど宿直を代わりました」
柔らかく微笑んで「喉が渇かれたでしょう」といい、あたしをゆっくり起こして背中を支えながら水の入った吸い飲みを口に運んでくれる。
冷たい水が喉を通り、あたしはほっと息をついた。
「ありがとう」
あたしが言うと、温かい着物を背中からかけてくれる。
「良くお寝みでしたね。余程お疲れだったのでしょう。
病を退治するのにも体力がいるでしょうしね。
あまりにも身動きひとつなさらないので、さっきこれをお口の前にかざしてしまいました」
と、手のひら大に切った薄い紙をひらひらして見せる。
しんでねーよっ!
しつれーなっ!
あたしは「二度も死んだけど、まだ生きてるわよ残念でしたっ」
と言って、イーッと舌を出す。
義光は笑いだし、それからあたしをじっと見つめて頬に手を伸ばす。
「良かった…月子姫のお身体がガタガタ震えてると思ったら、どんどん信じられないほど熱くなっていって、意識を失くされたようにぐったりして…
俺もう、どうしようどうしようとそればっかり思って…」
あたしの頬から手を離して、自分の目に当てる。
あたしは義光の手に触れる。
「ごめんね、ありがとう…
義光が居なかったらあたしここには来られなかったし、途中で行き倒れて本当に死んでたわ。
あたし独りだったら、と思うとぞっとする。
あなたのこと恩人だと思ってるよ」
あの険しい山道。
雨でぬかるんで滑りやすい山肌。
直衣の中に抱いてくれた義光の身体の温もりと鼓動。
「月子姫…」
義光はあたしの手を取って自分の頬にあててから、手首にキスする。
「あの時、たまたま右大臣家の厩舎に、淡香花の蹄鉄を新しくする話をしに来ていたのです。
本当に偶然、丹波に乗って。いつもは牛車ですから。
御仏のお導きだったのでしょうね」
「義光は、東宮様がおっしゃるように乗馬が上手なんだね。
全然怖くなかったし。伊靖とまったく違ったわ」
あたしが小さく笑って言うと「東宮殿下がそんなことを?」と義光は問う。
「うん。もっと上手になるだろうって。
自分は義光の乗馬の腕を買ってるっておっしゃってたよ。
だから、あたしみたいなド素人の手ほどきには打ってつけだと」
「左様ですか…殿下が…」
義光はしんみりと呟く。
誰かに声をかけられても起きることができず、夢も見ずに昏々と眠り続けた。
自分でもすごい長い時間が経ったと自覚できるほどよく眠って、あたしは目を覚ました。
辺りは暗く、大殿油を灯した燭台があるだけだ。
あたしは状況をよく見ようと身じろぎした。
あたしの横で突っ伏して寝ていた人が起き上がって「月子姫、お目ざめですか」とあたしの顔を覗き込んだ。
「義光…」
「左近衛中将殿がずっとついて居られたのですが、一昨日から一睡もされていないので先ほど宿直を代わりました」
柔らかく微笑んで「喉が渇かれたでしょう」といい、あたしをゆっくり起こして背中を支えながら水の入った吸い飲みを口に運んでくれる。
冷たい水が喉を通り、あたしはほっと息をついた。
「ありがとう」
あたしが言うと、温かい着物を背中からかけてくれる。
「良くお寝みでしたね。余程お疲れだったのでしょう。
病を退治するのにも体力がいるでしょうしね。
あまりにも身動きひとつなさらないので、さっきこれをお口の前にかざしてしまいました」
と、手のひら大に切った薄い紙をひらひらして見せる。
しんでねーよっ!
しつれーなっ!
あたしは「二度も死んだけど、まだ生きてるわよ残念でしたっ」
と言って、イーッと舌を出す。
義光は笑いだし、それからあたしをじっと見つめて頬に手を伸ばす。
「良かった…月子姫のお身体がガタガタ震えてると思ったら、どんどん信じられないほど熱くなっていって、意識を失くされたようにぐったりして…
俺もう、どうしようどうしようとそればっかり思って…」
あたしの頬から手を離して、自分の目に当てる。
あたしは義光の手に触れる。
「ごめんね、ありがとう…
義光が居なかったらあたしここには来られなかったし、途中で行き倒れて本当に死んでたわ。
あたし独りだったら、と思うとぞっとする。
あなたのこと恩人だと思ってるよ」
あの険しい山道。
雨でぬかるんで滑りやすい山肌。
直衣の中に抱いてくれた義光の身体の温もりと鼓動。
「月子姫…」
義光はあたしの手を取って自分の頬にあててから、手首にキスする。
「あの時、たまたま右大臣家の厩舎に、淡香花の蹄鉄を新しくする話をしに来ていたのです。
本当に偶然、丹波に乗って。いつもは牛車ですから。
御仏のお導きだったのでしょうね」
「義光は、東宮様がおっしゃるように乗馬が上手なんだね。
全然怖くなかったし。伊靖とまったく違ったわ」
あたしが小さく笑って言うと「東宮殿下がそんなことを?」と義光は問う。
「うん。もっと上手になるだろうって。
自分は義光の乗馬の腕を買ってるっておっしゃってたよ。
だから、あたしみたいなド素人の手ほどきには打ってつけだと」
「左様ですか…殿下が…」
義光はしんみりと呟く。
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