三日夜の餅はハイティーと共に

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第九章 二度目の死と伊都子姫

13.東宮の本質

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 「何?どうしたの?」
 あたしは義光の顔を下から見上げる。

 義光は薄く笑って
 「いや…殿下は私のことなど、お気になさったことはないのだろうと、物の数にも入っていないのだろうと思っていたものですから」
 と呟く。

 「宮中では、それこそ雲の上の、上つ方でいらっしゃいますから。
 私のような者はなかなか、お顔を拝見することすら殆ど無い」

 「でも月子姫のお部屋では、旧知の仲のように共にオセロをしたり、車座になって親しくお話したり。
 だけどそれでも、東宮殿下はいつも月子姫にしか興味ないような感じで居られて、私のことなどは眼中にまったく無いのだろうと思っていました」

 「ああ、なるほどね…
 あの方の本質は見かけとは全然違うのよ。
 明るく笑って楽しいことばかり追求しているようで、本当は繊細な感受性を持ちながら冷徹な観察者であり、優しい心根の持ち主なのよ。
 義光のことだってよく見てて、きちんと評価してるよ」

 暁の上のお腹の赤ちゃんの父親を公表することについて頑強に反対しているらしい。
 主上が苦り切って居られると、右近衛大将様が言っていた。
 きっと暁の上の立場とか、生まれてくる赤ちゃんに罪はないって考えているんだろうな。

 「そうなんですね…
 さすがに月子姫はよくご存じだ。
 姫がここにひどい容態で運び込まれたとき、東宮殿下はそれはもう、こちらが見ていて辛くなるほどに身も世もないほどお嘆きでした」

 「自分の命と引き換えてくれと御仏に祈れと、この寺の住持に詰め寄って居られた。
 住持だってそんなことおっしゃられても、と困り果てていた。
 本当に錯乱状態で、殿下も精神的に危険なのではないかと住持は危ぶんでいた」

 うわ、そうだったんだ。
 枕元で何かずっと言っていたような気はするけど、よく覚えてない。
 元信様に会いたい一心だったからなぁ…

 「でも、姫が譫言うわごとで左近衛中将殿の名前をずっと呼んで居られて、少しずつ悲嘆から悲哀に変わっていかれたような気がしました。
 それは私も同じですが」
 苦っぽろく笑う。

 「そう言えば、厩舎であたし、自分の本当の声で叫んだよね?
 あれなんだったんだろう…」
 あたしは考え込む。

 義光は「あ、あの声、やはりそうですか。伊都子姫の声ではないと、はっとしたのですが」あたしの顔を見る。
 
 「あたし、もうあの時結構具合が悪くて、寒くて仕方なくて。
 でも東宮様が剃髪しちゃうかもと思ったら居ても立ってもいられないほど焦って。
 もしかしたら…伊都子姫の身体から、あたしの魂が抜けかけていたのかもね…」

 それでどうして本当のあたしの声が出たのかは、謎なんだけど…
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