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第九章 二度目の死と伊都子姫
16.バレてたっ?!
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元信様はあたしを抱きしめ直して言葉を続ける。
「息の止まった姫の体温が少しずつ下がっていくのがつらくて、発狂しそうでした…
御仏はなぜ、このような惨い仕打ちをなさるのか。
私の信心をお疑いなのか」
「そうしたら、姫の身体に急に力が入って…
私の腕から起き上がったと思ったら、あの伊都子姫のお顔になられた、あの弥生以前の。
私は心の臓が停まるかと思うほど驚いた」
そこまで言って、腕を緩めてあたしの肩を持って顔を覗き込む。
「伊都子姫が戻って来られたのかと思いました。
姫ではなく」
え…?
あたしはよく意味が判らず、元信様の顔を見る。
元信様は微笑んだ。
「私は、自分は伊都子姫を好きなのだと思っていた。
貴女に出会うまでは。
貴女に出会って、私は本当に人を愛するということがどういうことなのかを理解できた。
自分はこんなにも人を好きになることができるのだと知って驚くと同時に嬉しかった」
は、ちょ、待って!
それって…
元信様は、絶句するあたしを抱きしめて囁く。
「あなたの、本当の名前を教えて」
「ちょっと待って!」
あたしは突き飛ばすように身体を離し、元信様の顔をまじまじと見つめる。
「あたしが…伊都子姫じゃないって知ってたの?!」
思わず、地の言葉が出る。
元信様は当然でしょう?と悪戯っぽく笑って頷く。
「女房達を除けば、私が一番、伊都子姫の近くにいたのですよ。
貴女と初めて会った、弥生の晦の日、私はものすごい違和感を覚えました」
「見た目は確かに、私の許嫁の伊都子姫だ。
だけど表情や挙動があまりにも、伊都子姫に似つかわしくない。
手を握っても振り払われないばかりか、食事を共にすることをお許しくださる。
表情は豊か、挙措は柔らかく穏やかで、何とも愛らしい」
「おっしゃることも何かずれている。
言葉や記憶はたまに覚束ないようだし、これは尋常でないことが起こったと」
「最初は、病による記憶障害かとも思ったのですが…
どうも、そんな簡単な話ではないようだと考えました。
それほど伊都子姫と姫の性格はかけ離れていた」
ええっ…そんな…
あたしは脱力する。
あたしの今までの努力は何だったの…
元信様は、少し慌てたようにあたしを抱きよせる。
「姫が、ご自分は伊都子姫だと装って居られたいようだったので、その涙ぐましい努力を邪魔してはいけないと。
今の今まで、申し上げませんでした」
別に伊都子姫を装っていたいわけでもなかったんだけど…
なんなの、このものすごい徒労感…
「姫と入れ違いに亡くなってしまったのであろう、伊都子姫の魂を思って菩提を弔う気持ちで毎日のお勤めもしています。
姫にいとも簡単に心を移してしまった、自分への自戒も込めて」
ああ、そうなんだ。
やっぱり真面目な人なんだな。
あたし、そんなこと一度もしてない。
無信心だからなあ…
「息の止まった姫の体温が少しずつ下がっていくのがつらくて、発狂しそうでした…
御仏はなぜ、このような惨い仕打ちをなさるのか。
私の信心をお疑いなのか」
「そうしたら、姫の身体に急に力が入って…
私の腕から起き上がったと思ったら、あの伊都子姫のお顔になられた、あの弥生以前の。
私は心の臓が停まるかと思うほど驚いた」
そこまで言って、腕を緩めてあたしの肩を持って顔を覗き込む。
「伊都子姫が戻って来られたのかと思いました。
姫ではなく」
え…?
あたしはよく意味が判らず、元信様の顔を見る。
元信様は微笑んだ。
「私は、自分は伊都子姫を好きなのだと思っていた。
貴女に出会うまでは。
貴女に出会って、私は本当に人を愛するということがどういうことなのかを理解できた。
自分はこんなにも人を好きになることができるのだと知って驚くと同時に嬉しかった」
は、ちょ、待って!
それって…
元信様は、絶句するあたしを抱きしめて囁く。
「あなたの、本当の名前を教えて」
「ちょっと待って!」
あたしは突き飛ばすように身体を離し、元信様の顔をまじまじと見つめる。
「あたしが…伊都子姫じゃないって知ってたの?!」
思わず、地の言葉が出る。
元信様は当然でしょう?と悪戯っぽく笑って頷く。
「女房達を除けば、私が一番、伊都子姫の近くにいたのですよ。
貴女と初めて会った、弥生の晦の日、私はものすごい違和感を覚えました」
「見た目は確かに、私の許嫁の伊都子姫だ。
だけど表情や挙動があまりにも、伊都子姫に似つかわしくない。
手を握っても振り払われないばかりか、食事を共にすることをお許しくださる。
表情は豊か、挙措は柔らかく穏やかで、何とも愛らしい」
「おっしゃることも何かずれている。
言葉や記憶はたまに覚束ないようだし、これは尋常でないことが起こったと」
「最初は、病による記憶障害かとも思ったのですが…
どうも、そんな簡単な話ではないようだと考えました。
それほど伊都子姫と姫の性格はかけ離れていた」
ええっ…そんな…
あたしは脱力する。
あたしの今までの努力は何だったの…
元信様は、少し慌てたようにあたしを抱きよせる。
「姫が、ご自分は伊都子姫だと装って居られたいようだったので、その涙ぐましい努力を邪魔してはいけないと。
今の今まで、申し上げませんでした」
別に伊都子姫を装っていたいわけでもなかったんだけど…
なんなの、このものすごい徒労感…
「姫と入れ違いに亡くなってしまったのであろう、伊都子姫の魂を思って菩提を弔う気持ちで毎日のお勤めもしています。
姫にいとも簡単に心を移してしまった、自分への自戒も込めて」
ああ、そうなんだ。
やっぱり真面目な人なんだな。
あたし、そんなこと一度もしてない。
無信心だからなあ…
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