三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

文字の大きさ
239 / 307
第九章 二度目の死と伊都子姫

20.都へ

しおりを挟む
 朝早く、まだ靄の立ち込めるお寺の境内にはやたらたくさんの人と馬がひしめき合っていた。
 右近衛大将様、権中納言様、義光、伊靖君、蔵人頭様が迎えに来てくれていた。
 
 兵部卿様、参議様が都の入り口まで迎えに来てくれるらしい。
 美味しい精進落としを用意しております、と伝言があった。

 牛車が山道を登れないので、あたしは輿に乗る。
 重いけどごめんね…

 住持様を始め、お坊さんたちが皆で見送ってくれる。
 主上やお殿様、その他の公達から多額のお布施や寄進があったそうで(元信様談)、恵比須顔に見えたのは気のせいかなあ?

 「大臣おとどや公達の北の方様などが御祈祷にいらっしゃることはままありますが、このようにお迎えの多い方は初めてでございますよ」
 住持様は驚いたように若公達を見回す。

 「伊都子姫様が担ぎ込まれてからも、わたくしどもは驚きの連続でございましたが…
 何しろ殿上人と呼ばれる若公達が続々と見えて、てんてこまいでございました」
 
 あらら…ご迷惑をおかけしましたわ。

 「しかし東宮殿下が仏の道に入られるのは、まだ少しお早いかと存じましたので、姫様がいらしてくださってようございました」

 住持様は最後に言って、穏やかに笑い「また御祈祷にお越しください、殿下によろしくお伝えください」と合掌して頭を下げた。

 皆、馬に乗って、あたしの乗った輿を中心に列を作り、下山する。
 温石を入れた袋を持っているけど、結構寒い。

 「その後、どうですか…主上から文は逐一頂戴しておりますが…」
 元信様が右近衛大将様に訊いているのが聴こえた。
 
 右近衛大将様は低い声で答えている。
 何を言っているのかは判らない。

 しかし、輿って意外と快適。
 少し床が斜めになるのは仕方ないけど、思ったほど揺れない。
 力者さんたちプロの人って凄いなあ…

 どれくらい経ったのか、日が高く昇ってだいぶ気温も上がって暖かくなるころ、斜めだった輿の床が水平になり、輿の進むスピードも上がった。
 
 やがてざわざわと人の声が聴こえだし、しばらくその雑踏の中を進んで、どこかの建物の敷地に入る訪いの声がして大門の開く音がし、静かな庭園のようなところへ入って輿は停まって地面に降ろされた。

 「月子姫!お待ちしておりましたよ」
 兵部卿様の声がして、輿の扉が開かれる。

 明るい秋の日差しが差し込み、あたしは眩しくて目を細める。
 元信様が「お疲れ様でした、具合はいかがですか。大丈夫ですか」と輿の中へ身体を半分ほど入れ、あたしを抱きかかえる。

 どこかのお屋敷の、部屋の中へ案内される。
 そこには宴会場のようにたくさんの座布団とお膳が並んでいた。

 「月子姫…待ちわびましたよ」
 一番奥にいる人物が声をかけてくる。

 低く響く声…
 主上!
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

処理中です...