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第十章 裁きと除目と薫物合わせ
14.薫物合わせ・1
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その日は早朝から大騒ぎだった。
こちらの暦で長月の下旬、令和日本ではもう11月の上旬だから、朝晩めっちゃ寒い。
京都は内陸性の気候だし、埼玉より寒い気がする。
とにかくロクな暖房器具がない!
その上、かの有名な吉田兼好さんは「住宅は夏を以て旨とすべし」と言ったそうだけれど、確かに京都の夏は暑いけど、でもだからってこんなにスカスカの住宅を作らなくても!
どこもかしこも風がびゅうびゅう通って、寒いことこの上ない!
死亡原因の第一位が肺炎というのも頷けるわぁ…
あたしは恰好とかもうどうでもいいから(だってどうせ几帳とかの中に隠れてるんだし)、忘れものだけはしないようにとそれだけを心配していた。
何とか牛車に乗り込み、出発する。
式部さん、内侍さんも一緒に来てくれた。
女房さん達は嬉しそうに「なんて晴れがましいのでしょう…」とか言って、単純に宮中へ行けること、そして帝の御前で主人のあたしが薫物を披露することを喜んでいたが、あたしはそうはいかない。
頭の中で何度も何度も手順を復唱し、間違いのない作法を頭に叩き込む。
今日は新関白を始め、殿上人と呼ばれる人たち、それから女御様や更衣様方、とにかくさまざまな人が来るらしい。
間違ったら、薫物以前に赤っ恥!!
あたしは袱紗に包んで横に置いてある、練香の入った箱を撫でる。
元信様から貰ったヒントで作った、新しい練香。
どうか上手くいきますように。
伊都子姫、見ててね!
頑張るよ!
牛車はのろのろと、でも着実に進んで、やがて宮殿に着いた。
あたしは右近衛大将様と権中納言様の出迎えを受け、扇子で顔を隠しながら廊下を歩く。
楓間の更衣様のお部屋とも、主上の居住スペースとも全然違う方向へ、あちらへ折れこちらを曲がり、迷わず二人は進んでいく。
「これ…よく迷われませんことね」
あたしが思わず言うと、二人は顔を見合わせて笑いだした。
「私たちは、幼いころからここが遊び場でしたからね。
よく、鬼ごっこと称して従者を撒いて、あちこち走り回っていましたよ」
ああ、そうだ、右近衛大将様は皇族だった。
権中納言様も東宮や右近衛大将様と幼馴染なんだから、きっと繋がりがあるんだろう。
すごい人達だ。
あたしは改めて思った。
こんな途轍もない高貴な人たちと、家でオセロして遊んでたなんて信じられない。
しかも、お二人とも、あたしを好きになってくれたとか…
冗談としか思えない。
こういう場で、凛とした雰囲気を醸し出す二人を見ていると。
やがてあたしは広間へ案内された。
「月子姫はこちらですよ」
と右近衛大将様が手を取って導いてくれる。
綺麗な薄縁の敷いてあるひと区画。
あたしのためのスペースらしい。
火取母と火取籠が置いてある。
うわ…緊張してきた。
あたしは座布団に座って、深呼吸する。
こちらの暦で長月の下旬、令和日本ではもう11月の上旬だから、朝晩めっちゃ寒い。
京都は内陸性の気候だし、埼玉より寒い気がする。
とにかくロクな暖房器具がない!
その上、かの有名な吉田兼好さんは「住宅は夏を以て旨とすべし」と言ったそうだけれど、確かに京都の夏は暑いけど、でもだからってこんなにスカスカの住宅を作らなくても!
どこもかしこも風がびゅうびゅう通って、寒いことこの上ない!
死亡原因の第一位が肺炎というのも頷けるわぁ…
あたしは恰好とかもうどうでもいいから(だってどうせ几帳とかの中に隠れてるんだし)、忘れものだけはしないようにとそれだけを心配していた。
何とか牛車に乗り込み、出発する。
式部さん、内侍さんも一緒に来てくれた。
女房さん達は嬉しそうに「なんて晴れがましいのでしょう…」とか言って、単純に宮中へ行けること、そして帝の御前で主人のあたしが薫物を披露することを喜んでいたが、あたしはそうはいかない。
頭の中で何度も何度も手順を復唱し、間違いのない作法を頭に叩き込む。
今日は新関白を始め、殿上人と呼ばれる人たち、それから女御様や更衣様方、とにかくさまざまな人が来るらしい。
間違ったら、薫物以前に赤っ恥!!
あたしは袱紗に包んで横に置いてある、練香の入った箱を撫でる。
元信様から貰ったヒントで作った、新しい練香。
どうか上手くいきますように。
伊都子姫、見ててね!
頑張るよ!
牛車はのろのろと、でも着実に進んで、やがて宮殿に着いた。
あたしは右近衛大将様と権中納言様の出迎えを受け、扇子で顔を隠しながら廊下を歩く。
楓間の更衣様のお部屋とも、主上の居住スペースとも全然違う方向へ、あちらへ折れこちらを曲がり、迷わず二人は進んでいく。
「これ…よく迷われませんことね」
あたしが思わず言うと、二人は顔を見合わせて笑いだした。
「私たちは、幼いころからここが遊び場でしたからね。
よく、鬼ごっこと称して従者を撒いて、あちこち走り回っていましたよ」
ああ、そうだ、右近衛大将様は皇族だった。
権中納言様も東宮や右近衛大将様と幼馴染なんだから、きっと繋がりがあるんだろう。
すごい人達だ。
あたしは改めて思った。
こんな途轍もない高貴な人たちと、家でオセロして遊んでたなんて信じられない。
しかも、お二人とも、あたしを好きになってくれたとか…
冗談としか思えない。
こういう場で、凛とした雰囲気を醸し出す二人を見ていると。
やがてあたしは広間へ案内された。
「月子姫はこちらですよ」
と右近衛大将様が手を取って導いてくれる。
綺麗な薄縁の敷いてあるひと区画。
あたしのためのスペースらしい。
火取母と火取籠が置いてある。
うわ…緊張してきた。
あたしは座布団に座って、深呼吸する。
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