268 / 307
第十一章 露顕と三日夜の餅
2.謎だらけ…
しおりを挟む
「では、月子姫のお支度を」
東宮は、式部さんと内侍さんに言い、二人は低く頭を下げる。
「お綺麗にお成りになっていらっしゃい。
また後ほど」
東宮は笑って、式部さんに手を引かれてどこかへ向かうあたしを見送っている。
笑っているのに少し、寂しそうな切ない表情…?
あたしは東宮の様子に心を残しながら、広い廊下をひたすら歩く。
廊下は冷たくて、素足には寒い…
膀胱炎になりそう。
「姫様、もう少しでございます」
式部さんが気を遣って、言葉をかけてくれる。
やがて大きな角を曲がって、部屋のひとつに入った。
「姫様、お疲れ様でございました」
部屋の中にいた数人の女性が皆、一斉に手をついて頭を下げる。
あれ…あたし付きの女房さんと侍女さん達?
皆、何でこんなところにいるわけ??
と、見覚えのあるようなないような女性が…誰だっけ?
「伊都子姫様…その節は大変申し訳ございませんでした」
その人は涙ながらに、頭を床に擦り付ける。
あっ?…ああ!
「命婦!さんじゃないの…」
あたしは唐突に思い出し、大きな声で言った。
「はい…」
頭を床につけたまま、命婦さんは泣き声を上げる。
「あの、命婦は自分の行為を、たとえ関白様に脅されたことであっても、決してやってはいけなかったと大変反省して居ります。
病気の弟を抱えて居りまして、犯罪者となった今お仕えできるお屋敷もなく、路頭に迷っておりましたところを、お殿様がご同情なさいまして、伊都子姫様なら上手に使ってくださるだろうと」
式部さんが必死の面持ちで言う。
「へえ…あのお父様がそんなことを…」
あたしが言うと、式部さんは、あっと言って赤くなり、へどもどする。
「いえ…あの…お殿様とは…治部卿様でございます…」
ん?元信様?
何で??
「さ、さあ姫様!
急いでお召し換えをなさってくださいませ」
内侍さんと少輔さんが立ちあがり、あたしを御帳台に導く。
中には、色鮮やかで豪奢な袿が衣紋掛に掛けてあった。
「縫姫様の渾身の力作でございますよ」
少輔さんが嬉しそうに言った。
すごーい…
縫姫、天才!
って、どうしてあたしこんなの着るのよ??
あたしは訳が分からないまま、でも誰も何も説明してくれない状況にやけっぱちになって、もうどうにでもしてくれ!!って感じで、為されるがままに着替えさせられ、髪を整えられ、厚化粧を施された。
「まあ…お綺麗ですわ…」
皆でうっとりとため息をつく。
あたしもなんだか疲れてしまって、内心ため息をつく。
女房さん達の渾身の力作となったあたしは、少輔さんに手を引かれて、しずしずとまたどこかへ向かう。
東宮は、式部さんと内侍さんに言い、二人は低く頭を下げる。
「お綺麗にお成りになっていらっしゃい。
また後ほど」
東宮は笑って、式部さんに手を引かれてどこかへ向かうあたしを見送っている。
笑っているのに少し、寂しそうな切ない表情…?
あたしは東宮の様子に心を残しながら、広い廊下をひたすら歩く。
廊下は冷たくて、素足には寒い…
膀胱炎になりそう。
「姫様、もう少しでございます」
式部さんが気を遣って、言葉をかけてくれる。
やがて大きな角を曲がって、部屋のひとつに入った。
「姫様、お疲れ様でございました」
部屋の中にいた数人の女性が皆、一斉に手をついて頭を下げる。
あれ…あたし付きの女房さんと侍女さん達?
皆、何でこんなところにいるわけ??
と、見覚えのあるようなないような女性が…誰だっけ?
「伊都子姫様…その節は大変申し訳ございませんでした」
その人は涙ながらに、頭を床に擦り付ける。
あっ?…ああ!
「命婦!さんじゃないの…」
あたしは唐突に思い出し、大きな声で言った。
「はい…」
頭を床につけたまま、命婦さんは泣き声を上げる。
「あの、命婦は自分の行為を、たとえ関白様に脅されたことであっても、決してやってはいけなかったと大変反省して居ります。
病気の弟を抱えて居りまして、犯罪者となった今お仕えできるお屋敷もなく、路頭に迷っておりましたところを、お殿様がご同情なさいまして、伊都子姫様なら上手に使ってくださるだろうと」
式部さんが必死の面持ちで言う。
「へえ…あのお父様がそんなことを…」
あたしが言うと、式部さんは、あっと言って赤くなり、へどもどする。
「いえ…あの…お殿様とは…治部卿様でございます…」
ん?元信様?
何で??
「さ、さあ姫様!
急いでお召し換えをなさってくださいませ」
内侍さんと少輔さんが立ちあがり、あたしを御帳台に導く。
中には、色鮮やかで豪奢な袿が衣紋掛に掛けてあった。
「縫姫様の渾身の力作でございますよ」
少輔さんが嬉しそうに言った。
すごーい…
縫姫、天才!
って、どうしてあたしこんなの着るのよ??
あたしは訳が分からないまま、でも誰も何も説明してくれない状況にやけっぱちになって、もうどうにでもしてくれ!!って感じで、為されるがままに着替えさせられ、髪を整えられ、厚化粧を施された。
「まあ…お綺麗ですわ…」
皆でうっとりとため息をつく。
あたしもなんだか疲れてしまって、内心ため息をつく。
女房さん達の渾身の力作となったあたしは、少輔さんに手を引かれて、しずしずとまたどこかへ向かう。
1
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる