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第十一章 露顕と三日夜の餅
19.餅つき大会
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釣殿へ続く長い階の下まで来ると、小さな輿が二基置いてあって、担ぎ手の人たちが平伏していた。
あたしが神護寺から山を下って来た時に使ったような、屋根と壁のある輿ではなく、床に座布団が敷いてあるだけの簡素なものだった。
「月子姫はこちらへ」と主上が言ってあたしを輿のひとつに乗せる。
そして自分はもうひとつに乗った。
妙に間延びした掛け声をかけ、輿がゆっくり持ち上がる。
ひとつの輿を四人で担ぐ、そのバランスが絶妙で、あたしは驚いた。
斜めになることなく、輿は階段をゆっくり上がっていく。
主上はともかく、あたしは階段くらい自分で上がりますですよ、申し訳ない。
元関白殿の所有する釣殿は、元右大臣家の釣殿とは比べ物にならないほど広かった。
御簾がすべての面に降ろしてあり、良い天気なのに薄暗い。
ただ、その御簾は部屋にあるものよりだいぶ目が粗く、御簾を降ろしたままでも外の景色が見られるようになっていた。
よく考えられてるな。
それにしても、池も広大!庭も果てしない!
元関白の権力の絶大さを物語っているわ。
母屋の方向へ置き畳があり、座布団が二つ、並べてあった。
主上があたしの手を取って輿から降ろしてくれる。
二人並んで外の様子を眺める。
餅つきが始まっているようだ。
六基の臼の周りにそれぞれ人が集まり、威勢の良い掛け声をかけながら餅を搗いている。
厨司長や厨房のスタッフの人たちも、蒸しあがったもち米を次々に運んできて、忙しそうだ。
っていうか、え?主上と二人で?これ見るの?
あたしが思わず主上を見上げると、主上はにこりと笑って、あたしの手に口づける。
「公達も、そなたと治部卿の三日夜の餅を手ずから搗きたいと、ほら、あそこに集まって居る。
今、治部卿本人が搗いて居りますよ」
えっどこ?
あたしは主上の手を振りほどいて身を乗り出す。
あ、居た!!
釣殿から見て一番手前の臼が、公達の集まっているもののようだ。
若い衆と同じように肩肌脱ぎになった元信様が、やんやの喝采の中、餅を搗いている。
捏ね取りの人と息を合わせて、テンポよく杵を振り下ろし、また振り上げる。
す、て、き…♡
あたしは胸の前で両手を打ち合わせて、元信様の姿に見入る。
若い衆には負けるけれど、上品に鍛えられた元信様の上半身を見て、あたしはなんだかドキドキする。
今夜もまた…情熱的に…
急に肩をつかまれて、抱きしめられる。
あたしは驚いて声を上げる。
えっ…何?
主上?
「そなたたち二人の絆はとても強い。
私たちや、それから二人を取り巻く状況が過酷な仕打ちをしても、まったく揺らがない」
「しかしそれが解っていてもなお私は、あなたが首に治部卿の愛のしるしをつけているのを見ると、胸が引き裂かれるように辛い。
何故…あなたは、この世界に来て、治部卿を愛したのだ…」
主上はあたしの顎に手をかけて仰向かせ、抵抗するあたしを強く抱きしめたまま強引に唇にキスする。
あたしは頭を振って離れようとするけど、力の差が歴然でまったく動けない。
嫌だ…!
助けて!
あたしが神護寺から山を下って来た時に使ったような、屋根と壁のある輿ではなく、床に座布団が敷いてあるだけの簡素なものだった。
「月子姫はこちらへ」と主上が言ってあたしを輿のひとつに乗せる。
そして自分はもうひとつに乗った。
妙に間延びした掛け声をかけ、輿がゆっくり持ち上がる。
ひとつの輿を四人で担ぐ、そのバランスが絶妙で、あたしは驚いた。
斜めになることなく、輿は階段をゆっくり上がっていく。
主上はともかく、あたしは階段くらい自分で上がりますですよ、申し訳ない。
元関白殿の所有する釣殿は、元右大臣家の釣殿とは比べ物にならないほど広かった。
御簾がすべての面に降ろしてあり、良い天気なのに薄暗い。
ただ、その御簾は部屋にあるものよりだいぶ目が粗く、御簾を降ろしたままでも外の景色が見られるようになっていた。
よく考えられてるな。
それにしても、池も広大!庭も果てしない!
元関白の権力の絶大さを物語っているわ。
母屋の方向へ置き畳があり、座布団が二つ、並べてあった。
主上があたしの手を取って輿から降ろしてくれる。
二人並んで外の様子を眺める。
餅つきが始まっているようだ。
六基の臼の周りにそれぞれ人が集まり、威勢の良い掛け声をかけながら餅を搗いている。
厨司長や厨房のスタッフの人たちも、蒸しあがったもち米を次々に運んできて、忙しそうだ。
っていうか、え?主上と二人で?これ見るの?
あたしが思わず主上を見上げると、主上はにこりと笑って、あたしの手に口づける。
「公達も、そなたと治部卿の三日夜の餅を手ずから搗きたいと、ほら、あそこに集まって居る。
今、治部卿本人が搗いて居りますよ」
えっどこ?
あたしは主上の手を振りほどいて身を乗り出す。
あ、居た!!
釣殿から見て一番手前の臼が、公達の集まっているもののようだ。
若い衆と同じように肩肌脱ぎになった元信様が、やんやの喝采の中、餅を搗いている。
捏ね取りの人と息を合わせて、テンポよく杵を振り下ろし、また振り上げる。
す、て、き…♡
あたしは胸の前で両手を打ち合わせて、元信様の姿に見入る。
若い衆には負けるけれど、上品に鍛えられた元信様の上半身を見て、あたしはなんだかドキドキする。
今夜もまた…情熱的に…
急に肩をつかまれて、抱きしめられる。
あたしは驚いて声を上げる。
えっ…何?
主上?
「そなたたち二人の絆はとても強い。
私たちや、それから二人を取り巻く状況が過酷な仕打ちをしても、まったく揺らがない」
「しかしそれが解っていてもなお私は、あなたが首に治部卿の愛のしるしをつけているのを見ると、胸が引き裂かれるように辛い。
何故…あなたは、この世界に来て、治部卿を愛したのだ…」
主上はあたしの顎に手をかけて仰向かせ、抵抗するあたしを強く抱きしめたまま強引に唇にキスする。
あたしは頭を振って離れようとするけど、力の差が歴然でまったく動けない。
嫌だ…!
助けて!
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