三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

文字の大きさ
284 / 307
第十一章 露顕と三日夜の餅

18.内侍さんの打ち明け話

しおりを挟む
 内侍さんに案内され、主上に手を引かれて長い長い廊下を歩く。
 「宮中もそうだが…女人が楽に移動できる手段があればよいのにと思う。
 もっとも、宮中の女人は月子姫のようにあちこち屋敷内を歩き回ったりしないが」

 主上は笑いを含んだ声で言い、あたしを見下ろす。
 主上って背が高い。
 いつも座ってることが多くて、並んで歩いたこととかあまりなかったから知らなかった。
 東宮より大きいかも。

 「痩せるために右大臣家(当時)をお散歩なさっていると左近衛中将(当時)から聞いて、なんとも愉快な方だと、その場で笑いをこらえるのに苦労した。
 そのような発想は、この世のものならざる月子姫ならではであろうな」

 「あのっ!主上!それは…」
 あたしは慌てて立ち止まる。
 主上はあたしに手を引っ張られてたたらを踏む。

 「…ああ、内侍は知って居るよ。
 式部も、かな?」
 主上は何でもないようにさらりと言って、後半は内侍さんに尋ねる。

 内侍さんも立ち止まって振り返り、あたしに深く頭を下げた。
 「姫様が伊都子姫様でないことは、卯月か…皐月には判っておりました。
 でも、それを姫様はお隠しになりたいようで居られたので、お話し申し上げる機会もなく…」

 あーなるほどねー。
 それで、あたしが変な質問とかしても、あまり動じなくなったんだ。
 時たま、意味深な発言もあったもんな。
 あたしは妙に納得する。

 んじゃ、結局、御仏なんて関係なかったんじゃないの!
 元信様も、式部さんも内侍さんも知ってたんなら…
 皆、あたしのこと信心がないなんて笑えなくってよ?!

「そう、だったのね…
 じゃあもう、繕うのはやめたわ。
 あたしはあたし!」

 あたしは、言いながら何だか可笑しさがこみあげてきて、一人で大笑いしてしまった。

 内侍さんはビックリしたようにあたしを見つめ、主上は「そう、月子姫は月子姫だ」とつられて笑いながら言ってあたしを抱きよせた。

 「そうなの。
 あたしの居たところは、痩せている方が可愛いって価値基準があって。
 伊都子姫の身体は、その基準からするとちょっと、いやかなり太めなのよ。
 だから痩せなくっちゃあ!って強迫観念みたいなものがあるのよね」

 主上の腕の中でもごもごと言うと、内侍さんも笑いだした。
 「月子姫様になられてから、召し上がる量も少し減ったようで。
 私共は勿論、右大臣家の厨司長も心配申し上げておりましたのよ」

 ええっ!
 あれで減ったの??
 道理でいつも、食べきれない量が出てくると思ったよ。
 
 「もうちょっと量減らしてもらおうかなあ…
 出てくるとつい、食べちゃうし」

 あたしが呟くと、主上は「月子姫は今のままでよい。あまりお痩せになると、また体力が落ちて肺にいる悪い病の虫が騒ぎ出す」と心配そうに言ってあたしの髪に頬を寄せる。

 あ…それもそうか…
 抗生剤の無い時代、免疫で抑え込むしかないんだよね。

 「主上、あたしをそんなに甘やかしてはダメよ。
 ブクブクに太っちゃうから」
 笑いながら身体を離す。

 主上は「そうしたら入内の輿を担ぐ人数を増やすまでだ」と言って、あたしの頬を撫でた。
 
 あたしはヒヤリとする。
 何でそんなことを言うの…
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

処理中です...