三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第十一章 露顕と三日夜の餅

17.首にマーキング

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 あたしも急いで身を起こす。
 やだもう…恥ずかしい…

 「新婚さんでございますから…」
 内侍さんは微笑んでいる。

 うっ…余裕だな。
 そう言えば、内侍さんは恋人居るのかな。
 結婚はしてないって言ってたけど。

 しかし、あたしの着物を直しているときに内侍さんは「…あら…」と顔を赤らめた。
 
 「え?何?」
 あたしが訊くと
 「ちょっと失礼いたします」
 と立って行き、御帳台から何か持ってきた。

 「これ…どういたしましょう…」
 内侍さんが渡したのは、鏡。
 顔を映すと、ん?別にどうもないけど。

 「いえ、もう少し下…首のあたりでございます」
 と言うので、首を映す。

 あっ!やだぁ~~~
 あたしも赤くなる。

 左鎖骨のくぼみの上あたりに、くっきりとキスマーク。

 朝は無かったから、これ、今つけたやつだ!
 どうすんのよ、位置的に着物や髪の毛で隠せないじゃない!

 「これ絶対、わざとよね…」
 あたしが呟くと、内侍さんも困ったように微苦笑して頷く。
 「これから皆様がお越しあそばすので、姫様はご自分のものだと主張なさる印なのでしょう」

 結構、強気な性格してるよね…
 人の身体にマーキングするのやめてくれる?

 「白粉で…少し隠せますかしら…」
 内侍さんがあたしの首を見ながら呟く。
 
 「もういいわ、隠さなくて。
 知らんぷりして通す。
 元信様がそうしたいんでしょ」

 と言ってから内侍さんの言葉の意味に気づく。
 何で?皆が来るの?
 
 そう言えば、元信様が餅つきを釣殿で観てくださいとか言ってたなぁ。
 臼6基に、大勢の男衆を集めて餅つき大会って…

 「三日夜の餅って、こんなに大袈裟な行事なの?」
 イメージでは男女が二人だけで食べるものだと思ってたんだけど。
 
 内侍さんは、くすっと笑って、あたしの後ろに回り髪を梳かし始める。
 米のとぎ汁を使った泔《ゆする》を髪につけ、紙で拭いてつやつやにする。

 「東宮様と公達の皆様が悪ノリなさって、どうせなら皆で三日夜の餅を食べようと。
 そうしたら、主上が『屋敷の主が月子姫に変わったことと、新しく西の対屋を改装したことを近隣の皆にも知らせるため、祝いの餅撒きをしよう』と仰せになって…」

 だーかーらー、どうして屋敷の主が、あたしなのよ!
 あたしは元信様の妻で、それだけで良いんだよ!!

 「月子姫、お支度はできましたか」
 と、深いバリトンの声が聴こえた。

 主上!
 なしてあなたが独りでこんなところに…

 あたしは呆然と見上げる。
 内侍さんは慌てて床に手をついて、低く頭を下げる。

 「治部卿が忙しくて手が離せないと言うのでね。
 私が貴女を釣殿までお連れすることにしたのだよ」

 うっそつけ!
 無理矢理、元信様を押しとどめて、勝手に来ちゃったんでしょうよ…

 主上はかがんであたしの手を取る。
 その時、あたしの喉のキスマークに気づいたようで、一瞬、動きを止めた。

 どこかが痛むようにきゅっと目を細め、あたしの手を握る手に力を籠める。
 優しく手を引いて、あたしを立ちあがらせた。
 「さあ、参りましょうか。
 内侍、案内しておくれ」

 内侍さんは慌てて立ち上がり「こちらでございます」と先に立って部屋を出た。
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