283 / 307
第十一章 露顕と三日夜の餅
17.首にマーキング
しおりを挟む
あたしも急いで身を起こす。
やだもう…恥ずかしい…
「新婚さんでございますから…」
内侍さんは微笑んでいる。
うっ…余裕だな。
そう言えば、内侍さんは恋人居るのかな。
結婚はしてないって言ってたけど。
しかし、あたしの着物を直しているときに内侍さんは「…あら…」と顔を赤らめた。
「え?何?」
あたしが訊くと
「ちょっと失礼いたします」
と立って行き、御帳台から何か持ってきた。
「これ…どういたしましょう…」
内侍さんが渡したのは、鏡。
顔を映すと、ん?別にどうもないけど。
「いえ、もう少し下…首のあたりでございます」
と言うので、首を映す。
あっ!やだぁ~~~
あたしも赤くなる。
左鎖骨のくぼみの上あたりに、くっきりとキスマーク。
朝は無かったから、これ、今つけたやつだ!
どうすんのよ、位置的に着物や髪の毛で隠せないじゃない!
「これ絶対、わざとよね…」
あたしが呟くと、内侍さんも困ったように微苦笑して頷く。
「これから皆様がお越しあそばすので、姫様はご自分のものだと主張なさる印なのでしょう」
結構、強気な性格してるよね…
人の身体にマーキングするのやめてくれる?
「白粉で…少し隠せますかしら…」
内侍さんがあたしの首を見ながら呟く。
「もういいわ、隠さなくて。
知らんぷりして通す。
元信様がそうしたいんでしょ」
と言ってから内侍さんの言葉の意味に気づく。
何で?皆が来るの?
そう言えば、元信様が餅つきを釣殿で観てくださいとか言ってたなぁ。
臼6基に、大勢の男衆を集めて餅つき大会って…
「三日夜の餅って、こんなに大袈裟な行事なの?」
イメージでは男女が二人だけで食べるものだと思ってたんだけど。
内侍さんは、くすっと笑って、あたしの後ろに回り髪を梳かし始める。
米のとぎ汁を使った泔《ゆする》を髪につけ、紙で拭いてつやつやにする。
「東宮様と公達の皆様が悪ノリなさって、どうせなら皆で三日夜の餅を食べようと。
そうしたら、主上が『屋敷の主が月子姫に変わったことと、新しく西の対屋を改装したことを近隣の皆にも知らせるため、祝いの餅撒きをしよう』と仰せになって…」
だーかーらー、どうして屋敷の主が、あたしなのよ!
あたしは元信様の妻で、それだけで良いんだよ!!
「月子姫、お支度はできましたか」
と、深いバリトンの声が聴こえた。
主上!
なしてあなたが独りでこんなところに…
あたしは呆然と見上げる。
内侍さんは慌てて床に手をついて、低く頭を下げる。
「治部卿が忙しくて手が離せないと言うのでね。
私が貴女を釣殿までお連れすることにしたのだよ」
うっそつけ!
無理矢理、元信様を押しとどめて、勝手に来ちゃったんでしょうよ…
主上はかがんであたしの手を取る。
その時、あたしの喉のキスマークに気づいたようで、一瞬、動きを止めた。
どこかが痛むようにきゅっと目を細め、あたしの手を握る手に力を籠める。
優しく手を引いて、あたしを立ちあがらせた。
「さあ、参りましょうか。
内侍、案内しておくれ」
内侍さんは慌てて立ち上がり「こちらでございます」と先に立って部屋を出た。
やだもう…恥ずかしい…
「新婚さんでございますから…」
内侍さんは微笑んでいる。
うっ…余裕だな。
そう言えば、内侍さんは恋人居るのかな。
結婚はしてないって言ってたけど。
しかし、あたしの着物を直しているときに内侍さんは「…あら…」と顔を赤らめた。
「え?何?」
あたしが訊くと
「ちょっと失礼いたします」
と立って行き、御帳台から何か持ってきた。
「これ…どういたしましょう…」
内侍さんが渡したのは、鏡。
顔を映すと、ん?別にどうもないけど。
「いえ、もう少し下…首のあたりでございます」
と言うので、首を映す。
あっ!やだぁ~~~
あたしも赤くなる。
左鎖骨のくぼみの上あたりに、くっきりとキスマーク。
朝は無かったから、これ、今つけたやつだ!
どうすんのよ、位置的に着物や髪の毛で隠せないじゃない!
「これ絶対、わざとよね…」
あたしが呟くと、内侍さんも困ったように微苦笑して頷く。
「これから皆様がお越しあそばすので、姫様はご自分のものだと主張なさる印なのでしょう」
結構、強気な性格してるよね…
人の身体にマーキングするのやめてくれる?
「白粉で…少し隠せますかしら…」
内侍さんがあたしの首を見ながら呟く。
「もういいわ、隠さなくて。
知らんぷりして通す。
元信様がそうしたいんでしょ」
と言ってから内侍さんの言葉の意味に気づく。
何で?皆が来るの?
そう言えば、元信様が餅つきを釣殿で観てくださいとか言ってたなぁ。
臼6基に、大勢の男衆を集めて餅つき大会って…
「三日夜の餅って、こんなに大袈裟な行事なの?」
イメージでは男女が二人だけで食べるものだと思ってたんだけど。
内侍さんは、くすっと笑って、あたしの後ろに回り髪を梳かし始める。
米のとぎ汁を使った泔《ゆする》を髪につけ、紙で拭いてつやつやにする。
「東宮様と公達の皆様が悪ノリなさって、どうせなら皆で三日夜の餅を食べようと。
そうしたら、主上が『屋敷の主が月子姫に変わったことと、新しく西の対屋を改装したことを近隣の皆にも知らせるため、祝いの餅撒きをしよう』と仰せになって…」
だーかーらー、どうして屋敷の主が、あたしなのよ!
あたしは元信様の妻で、それだけで良いんだよ!!
「月子姫、お支度はできましたか」
と、深いバリトンの声が聴こえた。
主上!
なしてあなたが独りでこんなところに…
あたしは呆然と見上げる。
内侍さんは慌てて床に手をついて、低く頭を下げる。
「治部卿が忙しくて手が離せないと言うのでね。
私が貴女を釣殿までお連れすることにしたのだよ」
うっそつけ!
無理矢理、元信様を押しとどめて、勝手に来ちゃったんでしょうよ…
主上はかがんであたしの手を取る。
その時、あたしの喉のキスマークに気づいたようで、一瞬、動きを止めた。
どこかが痛むようにきゅっと目を細め、あたしの手を握る手に力を籠める。
優しく手を引いて、あたしを立ちあがらせた。
「さあ、参りましょうか。
内侍、案内しておくれ」
内侍さんは慌てて立ち上がり「こちらでございます」と先に立って部屋を出た。
1
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる