三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第十二章 終わらない物語

2.ノブレス・オブリージ

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 「この餅撒きは、お祝いやお披露目の意味も勿論あるが、飢えた民に少しでも食べ物が行き渡るようにという施しの意味もあるのです。
 兄上はずっと、この夏の災害に心を痛めて居られて、折に触れ施しを続けて居られるのだが…」

 右近衛大将様が戻ってきて、あたしの髪を撫でる。
 「月子姫、大丈夫ですか。
 姫君のご覧になるものではないので、皆、お止めしていたのですよ」

 あたしは東宮の腕の中でイヤイヤするように首を振る。
 あたしは、あなた方が思っているような、深窓の姫君じゃない。
 
 TVで外国の難民のニュースとか、災害による飢饉の話題を見て知っている。
 日本国内でだって、大きな地震と津波があって原発事故が起きて、何年経っても故郷に帰れない人もいる、そんなことだって知っている。
 学校の歴史の授業でも戦やら一揆やらいろいろ習った。

 「何とかしなくちゃ…」
 あたしは呟いた。

 「えっ?」
 東宮はあたしの頬に頬を寄せる。

 「とりあえずの難民救済、都の衛生対策、それから灌漑事業。
 農業政策については、その後ね」

 「はっ??」
 右近衛大将様が素っ頓狂な声を上げ、公達が揺れる櫓の上を歩いてこちらに来た。

 「ノブレス・オブリージよ!
 貴族には財産と権利と社会的地位だけじゃない、義務と責任も伴うのよ。
 この人たちを救えなくて、何が主上よ、東宮よ。
 やるわよ、みんな!」

 あたしは東宮の胸から顔を上げ、怒号の飛び交う中、力強く言う。

 本当のネバーランドは、子供のままでいる楽しいだけの場所じゃない。
 皆が今日に感謝して明日に希望を持って生きられる世界のことだ。

 人事を尽くした後に、大いなるものの力にすがるのは良いと思う。
 だけど何もしないでただ神頼みじゃダメなんだよ!

 東宮の腕から抜け出し「輿に乗せて!」と言って、義光に手を取ってもらって輿に乗る。
 
 「ちょ、月子姫?」
 皆が慌てたように、輿の周りに集まる。

 「先に戻るわ。
 主上と話さなきゃいけないことがたくさんあるの」
 
 あたしは「西の対屋まで連れて行って」と輿を持つ従者に言った。
 は、と従者の人たちは言って、輿を慎重に持ち上げ、階段を降りる。

 東宮を含む貴公子たちは呆気に取られて顔を見合わせ、それから慌てて階段を降り始めた。
 右近衛大将様が、すべての餅を撒き終わった家人にも下がるように言い、家令に命じて餅撒きの終了を告げさせた。

 まだまだ人がいる。
 衛士が追い払うようにして、帰らせている大きな声が聴こえる。

 櫓は誰か昇ってきて屋敷内に入ったりしないように、すぐに取り壊すようだ。
 大工道具を持った人たちが走り寄っていく。

 どうしたらいい?
 輿に揺られながらあたしは考え込む。
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