2 / 44
第1話 新しい生活と懐かしい家族
再会
しおりを挟む
殆どの荷物は数日前に引っ越し業者にあらかじめ運んでもらい、貴重品などの軽い荷物だけを持って桔梗は単身新幹線に乗り数時間、大都会に降り立ったわけだが…。
大都会と言っても都心からは離れており、そこまでごみごみしてはいない。
母親に指示された通り、最寄りの駅で降りて送迎用のロータリーに佇む。
ポケットからスマホを取り出しある画像を表示。
美人だなぁ…。
何度見ても感心してしまう。
「この美女が駅まで迎えに来るから待ってるように、知らない人に付いて行かないようにね。」
母親に事前に迎えに来る人物の写真を、スマホに送ってもらったときに言われた言葉を思い出す。
あたしをいくつだと?
あたし的にはよっぽどフランスに旅立った2人のが心配だ。
大丈夫かね?
あの2人、良くも悪くも楽天的だからなぁ。
「…。」
ヤバいな。
ちょっと緊張してきた。
これから平気か?
一緒に住むのに。
「ぬぅ…。」
ちょっと、光希に連絡入れようかな…。
いや、その前に深呼吸…。
桔梗が自分を落ち着かせようとスーハースーハー深呼吸をしていると、目の前にすぅっ、と静かに黒光りするワゴン車が止まる。
「ぬ…?」
顔を上げ、長い前髪の隙間からワゴンを見ると助手席の窓が開く。
「桔梗ちゃんよね?」
「は、はい。」
画像の美人だ!
本物のが若々しく見える!
「ごめんね待たせてぇ、乗って乗って。」
笑顔で言われ「あ、はい。」と短く答えて素早く助手席に乗り込む。
「わざわざここまでありがとうございます。」
「いいのよいいのよこれくらい~!」
あっけらかんに答えながらサングラスを掛け直すと、ゆっくりと運転を再開。
「迷わず来られた?」
「は、はい、前もって詳細に教えてもらってたんで。」
「良かった、それなのに遅れちゃってごめんね。」
「いや、ピッタリくらいでしたよ。」
「そう?て言うか、敬語おかしいわね。」
敬語おかしい?
「あの、何か失礼な言い方しました?」
「違う違う、そうじゃなくて、桔梗ちゃんに敬語使われるのが何かおかしいなって。」
「あぁ…。」
そういうことか。
「ママから桔梗ちゃんがあたしたち家族のこと、昔のことだからぼんやりとしか覚えてないっていうのは事前に聞いてたけど、良ければ敬語止めてくれると嬉しいかなぁ。」
「あ、はい、うん…。」
頑張って敬語を使わないようにとしている桔梗が微笑ましく見えクスッ、と笑うと「お願いね。」何て言ってみせた。
母さん…。
みんなのことぼんやりとしか覚えてないの言っちゃったんだなぁ。
まぁ…。
変に知ったかぶりしたり無理に話合わせたりせずに済むのはいいんだが…。
「何だか申し訳ない…。」
「ん?何が?」
「いや、これから一緒に生活させてもらうのにぼんやりとしか覚えてないとか…。」
「あらそれはしょうがないわよ、だって桔梗ちゃんちっちゃかったもの、それにもしかしたら一緒に生活してたら思い出すかもしれないじゃない?気にしない気にしない。」
と言って笑う。
いやぁ…、母さんよりも楽天的な人だなぁ。
「あ、そうそう、ママから聞いてると思うけど一応自己紹介ね、あたしは黒岸静音です、桔梗ちゃんからはママちゃんて呼ばれてたわ。」
ま、ママちゃん…。
あえて言ってくるってことは、呼んでも…てか、呼ばれたい?
「仕事は脚本家、一応業界では売れっ子って言われてます。」
と言ってエヘッ。
「家に着いたら会わせるけど、旦那は隆一、売れっ子演出家、長男は桃也、次男海斗、三男毅流、で、三男の毅流が桔梗ちゃんと同級生で、同じ高校に通うことになるわ。」
家族全員の画像、あらかじめもらってるけど、あのイケメンと一緒に通うのか。
目の保養になるなぁ。
「あとは家に着いてから改めてね。」
「うん。」
閑静な住宅街の奥、一際大きい家が黒岸家である。
うわぁ、もう車庫までデカい…。
間違いない…セレブだ!
売れっ子よ、エヘッ何てお茶目に言ってたけどガチのやつだ!
「車庫に入れてくるから待ってて~。」
手前で降ろしてもらい、玄関前で待つことに…。
スライドドアの玄関にも圧倒されてしまう。
このドアの大きさからいって…絶対玄関も広い!
セレブ、やっぱりセレブ?
にしては…。
ママちゃん、気さく。
他の人も気さくだといいんだが…。
て、セレブはお高い感じっていうのは、あたしの偏見よな。
「お待たせ。」
指タッチで簡単に解錠しドアをスライドさせ
「ただいま~。」
と玄関内へ…。
やはりデカい!広い!
「とりあえずみんなリビングにいるから行きましょ。」
と、リビングに入るとそのえげつない広さに度肝を抜かれたが
おぉ!暖炉!暖炉がある!
てかあれ!この前テレビで観た!
最新式のアイランドキッチン!
しかも冷蔵庫でかっ!業務用っ?
うはぁ、何て素敵なキッチン、あんなトコで料理したいもんだなぁ。
最新式のキッチンに内心うっとりしていると、
「何よ、リビングで待ってるって言ったのに誰もいないじゃない。」
静音がボヤいていると、複数の足音が聞こえ、やがてリビングの扉が開いた。
「ちょっとあんたたち何してたのよ、桔梗ちゃんみたいなレディを待たせるとは何事?」
レディ?
あたしが?
「すまんすまん、もう少し遅いかと思っていたんだよ。」
「まったく、桃也たちだけならまだしも、隆一まで…。」
「だからごめんて、て言うか…桔梗ちゃんだね?」
静音に被ってよく見えなかったがヒョコッ、と顔を出してきた。
おぉ、画像で見るよりジェントル。
「川野辺桔梗です、今日からよろしくお願いします。」
深々~、と頭を下げる。
「よろしくね、僕のことは昔みたいにパパちゃんと呼んでくれていいからね。」
やっぱりか。
「はいあんたたち、横一列に並ぶ。」
そう言われ、3兄弟は桔梗の前に横一列に並ぶ。
「じゃあ桔梗ちゃん改めて紹介するわね、こっちから長男桃也、次男海斗、三男毅流、はい挨拶!」
「長男桃也、モデル兼俳優、つっても俳優業は始めたばっかで大したことねぇけどな、年は23、よろしく。」
「あ、あぁ…!」
画像じゃ気付かなかったけど言われたらそうだ。
桃也さんて某有名テーマパークのCM出てたな。
「ボク海斗~、よろしくねぇ、21歳で大学生しながらバンド活動してるんだぁ。」
何か、ユルイし、セクシー…むしろ、エロい?
「俺毅流、来月から一緒の高校だよ、よろしくね。」
可愛いイケメン、目の保養。
「よろしく。」
ママちゃんに敬語止めてって言われたから敬語じゃなくしたけど、平気だったかな?
「てかお前、その暖簾みたいな前髪邪魔じゃね?」
桃也が近付いてきて前髪に触れながら言ってきた。
暖簾…。
「ちょっと兄貴ぃ、女の子の前髪見て暖簾て…。」
「な、何だよっ。」
思ったこと言っただけだぞ!
「ごめんね桔梗、モモ兄悪気があるわけじゃないんだよっ。」
「いや、例え上手い。」
「へっ!」
暖簾か…確かにそんな感じだな。
「この暖簾が落ち着くんで…。」
「そ、そうか。」
とりあえず怒ってはないよな?
「今夜は桔梗ちゃんの歓迎会だから夕飯はお寿司の出前でも取ろうか?」
隆一の問いに「え?」となる。
「あれ、桔梗ちゃんお寿司は嫌い?」
「いや、好きだけど、あんなに素敵なキッチンがあるのにと思って。」
その言葉に静音の目がキラーン!と輝き、反して隆一たちはビクッ!
「でしょでしょ桔梗ちゃん!そう思うでしょっ?」
「うん、まぁ、あのキッチンで料理出来たら楽しいだろうなぁと思う。」
「そうよねぇ!」
ハイテンションになり桔梗の肩を抱く。
「あたしもそう思うしせっかく桔梗ちゃんの歓迎会をするんだもの腕によりをかけて中華でもと思って材料も全部買ってあるのよ~!」
うぉう、めっちゃ早口。
これだけ興奮してるってことは、料理上手なんだろなぁ。
と思っている桔梗を、静音の手からかすめ取ったのは3兄弟。
「ん?ん?」
何だ?どうした?
せっかくのイケメン顔が歪んでるぞ?
何か…怯えてる?
「桔梗っ、余計なこと言っちゃ駄目だよっ。」
毅流が小声で言うと、
「そうだよぉ、母さんに料理させちゃ絶対に駄目。」
海斗も小声で言ってきた。
「何故に?料理好きだし上手なのでは?」
「好きなのは合ってるが…上手くはないんだよ、なんつぅかその、不味くはないんだけど、何作っても味が…微妙…。」
そこで3兄弟、同時に大きな溜め息。
微妙?
「ちょっとあんたたち!余計なこと言ってんじゃないでしょうね…!」
怒鳴る声に振り返り、静音をじっと見つめてから歩み寄る。
「ママちゃん、材料買ってあるって言ったよね?」
「ちょっ、桔梗っ!」
まさか作ってとか言うんじゃないよなっ?
「揃えてあるわよ。」
「見てもいい?」
「いいわよぉ、来て来て。」
静音は途端にご機嫌になり、桔梗の手を引いて冷蔵庫の前に。
「じゃ~ん!」
広い冷蔵庫の中を見てすぐ
「おぉ!」
と歓喜の声を上げる。
すげぇ、めっちゃ揃ってる。
しかも材料ひとつひとつが高級そうだな。
「ね?ね?いいでしょ中華。」
「うん、食べたいんだけど、ひとつ条件出していい?」
「なぁに?」
「あたしに全部作らせて。」
「ええっ?」
軽快にキャベツを切っている桔梗の手際に思わず見惚れる。
「毅流ぅ、見過ぎだよ。」
「えっ!あっ!ごめっ!ちがっ!」
「とりあえずちゃんと餃子包んでねぇ。」
今夜の歓迎会の主役である桔梗1人に作らせるわけにいかず、3兄弟が手伝うという形で何とか静音から了承を得た桔梗。
海斗、毅流はダイニングテーブルで餃子作り。
桃也は唐揚げを揚げている。
桔梗は回鍋肉に入れるキャベツを楽しそうに刻んでいたがピタッと手を止める。
「そろそろ?」
呟いて桃也に寄る。
「桃也さんそれもう油から上げていいよ。」
「お、おぅ。」
いそいそと唐揚げを掬う桃也、餃子作りをしている海斗、毅流。
それぞれの手際を見てから再びキャベツを刻む。
3人とも器用だけど、普段料理何てしてなさそだな。
「普段はご飯どしてんの?」
「それぞれ仕事先で外食ってのが多いかもな、あとは出前とかテイクアウト。」
桃也の言葉にげんなり。
「駄目だ、育ち盛りがいるのに。」
呟いて毅流を見る。
「あ、でもたまにハウスキーパーさんに来てもらったりしてたから、ちゃんと手料理も食べてたよ。」
1人慌てながらも言ってくる毅流を見て再度げんなり。
毎日食べなくちゃ駄目だ。
「桔梗、唐揚げとりあえず全部バットに上げたぞ。」
「ちょっと待って。」
桔梗はいそいそとスマホを取り出し、ある画面を表示すると、
「じゃあ桃也さんはこれを見ながら麻婆豆腐を作って、材料はこれ、あたしもいるから。」
「おぅ、分かった。」
桃也にスマホと材料一式を渡すと、桔梗は冷蔵庫を開ける。
おぉ、ママちゃん、中華だけじゃなく色々考えていたんだな、色んな食材があるし、野菜も充実している!
これなら作れるな。
冷蔵庫から周りに目を向ける。
これだけ道具が揃ってるから、あるよな多分。
キョロキョロと見渡し
「あった!」
ミキサー発見!
やはり最新式だ!
桔梗はにんまぁ、と笑ってウキウキ気分で目当ての材料をぱぱぱぱぱっと手に取ると、ミキサーに入れやすい大きさにカット。
「うふふふふぅ。」
楽しそうに笑って鼻歌混じりでミキサーに材料を入れる。
「あれぇ、桔梗の今の鼻歌メロディーって今人気のバンドの新曲じゃな~い?」
「あ、うん。」
嬉しすぎて無意識に鼻歌まで出てしまっていたか…。
「あのバンドいいよねぇ。」
そう言えば…。
「海斗さんはバンドでどんな曲歌うの?」
聞きながら手際良くミキサーに材料を入れていく。
「そのうち聴かせてあげる。」
「うん?」
今は駄目なのか。
「あいつは俺たち家族の前では歌わないんだよ、プロになるまでは聴かせないんだと。」
スマホを見つつ麻婆豆腐を作りながら桃也が言った。
「そうなのか。」
プロ意識ってやつ?
考えながらミキサーのスイッチオン。
おぉ、我が家のポンコツミキサーとは違うな!
いい仕事してくれる!
しかもポンコツミキサーに比べて、音も静かだ。
いい感じだな。
あっという間に出来上がり、スイッチオフしたところで、
「餃子終わったよ。」
毅流が言ってきた。
「はいはい。」
答えながら食器棚を見て人数分のコップを取り出し、ミキサーで作り立てのジュースを注いでいく。
「3人ともこれ飲んでみて。」
「何作ったの?」
「美味しいジュースかなぁ?」
「俺はこれを…。」
「いいよ桃也さん、麻婆豆腐はあたしが代わる、ありがとね。」
こうして3人はジュースを前に立ち、同時に脳裏に浮かんだのは…。
何このいかにも苦そうな緑色の液体は!!!!!
で、立ち尽くす。
「毒じゃないよ、むしろ健康になる。」
麻婆豆腐を作りながらチラッと3人を見ると、
えぇ、ホントにぃ?嘘でしょ?
と言いたげな視線を投げてくる。
「騙されたと思って飲んでみて、それで騙されたと思ったら何でもするから。」
「何でもぉ?」
ん?
何か海斗さんの目が妖しく光ってる気が…何だ?
「桔梗を邪な目で見るな。」
桃也は海斗の頭をペイッと叩くと、コップを手にした。
「兄貴飲むの?!」
「モモ兄勇者だ!」
大袈裟だし。
桃也は目の高さまでコップを持ち上げ、マジマジと見つめた。
この手際から言って桔梗は料理上手で間違いねぇ。
それに料理すること自体好きそうだし楽しんでる。その桔梗が作ったもんだし…。
桃也は気合を入れるとゴクゴクゴクッ!
「ちょっ!兄貴っ!」
そんなに一気に飲まなくとも!
飲んだ桃也の目がカッ!と見開いたかと思うと動きが止まる。
「ほらぁ、言わんこっちゃない~。」
「味どう?好みに合わせて微調整するよ。」
あらかじめ用意していたお皿に出来上がった麻婆豆腐を盛り付けていると、
「桔梗!」
桃也が興奮したように桔梗の肩を掴む。
「うお?」
「何だこの美味さは!」
「嘘だろ!」
海斗、毅流が同時に叫ぶ。
「叫ぶ前に飲む。」
桔梗に冷ややかに言われ、オズオズと飲む2人を見てから桃也に視線を向ける。
「どうする?微調整する?」
「ん?あぁ頼む、疲れてるときはこの甘さもいいけど、普段はもう少しサッパリしててもいいかな。」
「分かった。」
「てかこれ野菜だけだろ?何でこんなに甘いんだ?」
「野菜も意外と甘いのだよ、桃也さん、で…そっちの2人は?」
「ボクはもう少し甘くてもいいかなぁ。」
「俺意外ともう少しパンチあってもいいかなとか思っちゃった。」
「そう、分かった、で…騙された?」
……………。
まぁ、ある意味騙されたような気はするが…。
「すみませんでした。」
3人とも謝るしかないわけで…。
そんなわけで夕食。
成人した4人は中華料理に似合う黒ビール、未成年の2人は烏龍茶。
「それでは新たな家族、桔梗ちゃんとの再会を祝して、乾杯!」
隆一の乾杯の後にみんなで
「かんぱ~い!」
と言ってそれぞれ食べたい物をお皿に取っていく。
その姿を桔梗はじぃっ、と見ていた。
大丈夫かな?
あたしの味付けで問題ないか?
父さん母さん、光希とか友達には美味いって言われてるけど、味の好みは人それぞれだしなぁ。
さっきの野菜ジュースみたいに微調整で済めばいいけど…。
「どうした桔梗?」
一向に動かない桔梗に気付き、桃也が声を掛けていると
「シェフを呼べ~い!」
海斗が声を上げた。
「ぬ?」
「いやこれ美味し~、桔梗って料理上手だね~、思わず大声出ちゃった。」
「おおおおお、ホッとしたぁ。」
すっかり脱力する桔梗を見て思わず笑ってしまう。
「何だ、俺たちの口に合うか気が気じゃなかったのか?」
「まぁ…好みって人それぞれだし。」
「もう少し自分に自信持てよ、俺はあの手際の良さ見ただけで味も相当だと思ってたけどな。」
うわぁ、桃也さんみたいなイケメンなら歯の浮くような台詞言ってもかっちぇ~!
「確かにこれは想像以上の美味しさ、何か手伝った俺たちまで料理上手に思えちゃうな。」
桔梗の指示が良かったんだな。
「いやぁ、桔梗ちゃんはいいお嫁さんになるなぁ。」
「どうせならこのまま家にお嫁に来ちゃう?あたし桔梗ちゃんみたいな娘欲しいわぁ。」
「いやいや…。」
こんな顔面偏差値バカ高い方々には、それ相応の美女がふさわしい!
「でも冗談抜きで、毎日こんな美味い飯食えんなら、仕事終わり次第直帰する。」
「作ろうか?」
「マジかっ?」
「ちょっとモモ兄ぃ、桔梗だって学校があるんだよ、毎日何て桔梗に負担が…。」
「じゃあお前は食いたくねぇの?この絶品飯。」
「それは…。」
「へーき、無理ない程度に作るし、手伝って欲しいときは言う、それにあたしは手際がいい、でしょ?」
と言って桃也を見てニッと笑う。
「そうだな。」
「パパちゃんママちゃん、あたし作るのいい?」
「勿論だよ~、静音、リモートワーク多めにしよう!」
「異議なし!」
「まったくみんなして!」
桔梗の優しさに甘えて!
「まぁまぁ毅流、みんなだって毎日何て言わないよぉ、それにボクも早く帰れるときは必ず手伝うしさぁ、それにぃ、毅流だって本音を言えば食べたいでしょ~?」
「ま、まぁ…。」
本音を言えば食べたいけども。
「桔梗、ホントに無理は駄目だよ、無理なときはどうにでもするから。」
「分かってる、ありがとう。」
とりあえず…。
みんなの好みがあたしの味付けと合っていて良かった。
「あのジュースも頼む。」
「勿論、あれなら作り置き出来るし。」
それにあのミキサーさえあれば問題ない。
この最新式のキッチン…。
フルに活用するぞ!
大都会と言っても都心からは離れており、そこまでごみごみしてはいない。
母親に指示された通り、最寄りの駅で降りて送迎用のロータリーに佇む。
ポケットからスマホを取り出しある画像を表示。
美人だなぁ…。
何度見ても感心してしまう。
「この美女が駅まで迎えに来るから待ってるように、知らない人に付いて行かないようにね。」
母親に事前に迎えに来る人物の写真を、スマホに送ってもらったときに言われた言葉を思い出す。
あたしをいくつだと?
あたし的にはよっぽどフランスに旅立った2人のが心配だ。
大丈夫かね?
あの2人、良くも悪くも楽天的だからなぁ。
「…。」
ヤバいな。
ちょっと緊張してきた。
これから平気か?
一緒に住むのに。
「ぬぅ…。」
ちょっと、光希に連絡入れようかな…。
いや、その前に深呼吸…。
桔梗が自分を落ち着かせようとスーハースーハー深呼吸をしていると、目の前にすぅっ、と静かに黒光りするワゴン車が止まる。
「ぬ…?」
顔を上げ、長い前髪の隙間からワゴンを見ると助手席の窓が開く。
「桔梗ちゃんよね?」
「は、はい。」
画像の美人だ!
本物のが若々しく見える!
「ごめんね待たせてぇ、乗って乗って。」
笑顔で言われ「あ、はい。」と短く答えて素早く助手席に乗り込む。
「わざわざここまでありがとうございます。」
「いいのよいいのよこれくらい~!」
あっけらかんに答えながらサングラスを掛け直すと、ゆっくりと運転を再開。
「迷わず来られた?」
「は、はい、前もって詳細に教えてもらってたんで。」
「良かった、それなのに遅れちゃってごめんね。」
「いや、ピッタリくらいでしたよ。」
「そう?て言うか、敬語おかしいわね。」
敬語おかしい?
「あの、何か失礼な言い方しました?」
「違う違う、そうじゃなくて、桔梗ちゃんに敬語使われるのが何かおかしいなって。」
「あぁ…。」
そういうことか。
「ママから桔梗ちゃんがあたしたち家族のこと、昔のことだからぼんやりとしか覚えてないっていうのは事前に聞いてたけど、良ければ敬語止めてくれると嬉しいかなぁ。」
「あ、はい、うん…。」
頑張って敬語を使わないようにとしている桔梗が微笑ましく見えクスッ、と笑うと「お願いね。」何て言ってみせた。
母さん…。
みんなのことぼんやりとしか覚えてないの言っちゃったんだなぁ。
まぁ…。
変に知ったかぶりしたり無理に話合わせたりせずに済むのはいいんだが…。
「何だか申し訳ない…。」
「ん?何が?」
「いや、これから一緒に生活させてもらうのにぼんやりとしか覚えてないとか…。」
「あらそれはしょうがないわよ、だって桔梗ちゃんちっちゃかったもの、それにもしかしたら一緒に生活してたら思い出すかもしれないじゃない?気にしない気にしない。」
と言って笑う。
いやぁ…、母さんよりも楽天的な人だなぁ。
「あ、そうそう、ママから聞いてると思うけど一応自己紹介ね、あたしは黒岸静音です、桔梗ちゃんからはママちゃんて呼ばれてたわ。」
ま、ママちゃん…。
あえて言ってくるってことは、呼んでも…てか、呼ばれたい?
「仕事は脚本家、一応業界では売れっ子って言われてます。」
と言ってエヘッ。
「家に着いたら会わせるけど、旦那は隆一、売れっ子演出家、長男は桃也、次男海斗、三男毅流、で、三男の毅流が桔梗ちゃんと同級生で、同じ高校に通うことになるわ。」
家族全員の画像、あらかじめもらってるけど、あのイケメンと一緒に通うのか。
目の保養になるなぁ。
「あとは家に着いてから改めてね。」
「うん。」
閑静な住宅街の奥、一際大きい家が黒岸家である。
うわぁ、もう車庫までデカい…。
間違いない…セレブだ!
売れっ子よ、エヘッ何てお茶目に言ってたけどガチのやつだ!
「車庫に入れてくるから待ってて~。」
手前で降ろしてもらい、玄関前で待つことに…。
スライドドアの玄関にも圧倒されてしまう。
このドアの大きさからいって…絶対玄関も広い!
セレブ、やっぱりセレブ?
にしては…。
ママちゃん、気さく。
他の人も気さくだといいんだが…。
て、セレブはお高い感じっていうのは、あたしの偏見よな。
「お待たせ。」
指タッチで簡単に解錠しドアをスライドさせ
「ただいま~。」
と玄関内へ…。
やはりデカい!広い!
「とりあえずみんなリビングにいるから行きましょ。」
と、リビングに入るとそのえげつない広さに度肝を抜かれたが
おぉ!暖炉!暖炉がある!
てかあれ!この前テレビで観た!
最新式のアイランドキッチン!
しかも冷蔵庫でかっ!業務用っ?
うはぁ、何て素敵なキッチン、あんなトコで料理したいもんだなぁ。
最新式のキッチンに内心うっとりしていると、
「何よ、リビングで待ってるって言ったのに誰もいないじゃない。」
静音がボヤいていると、複数の足音が聞こえ、やがてリビングの扉が開いた。
「ちょっとあんたたち何してたのよ、桔梗ちゃんみたいなレディを待たせるとは何事?」
レディ?
あたしが?
「すまんすまん、もう少し遅いかと思っていたんだよ。」
「まったく、桃也たちだけならまだしも、隆一まで…。」
「だからごめんて、て言うか…桔梗ちゃんだね?」
静音に被ってよく見えなかったがヒョコッ、と顔を出してきた。
おぉ、画像で見るよりジェントル。
「川野辺桔梗です、今日からよろしくお願いします。」
深々~、と頭を下げる。
「よろしくね、僕のことは昔みたいにパパちゃんと呼んでくれていいからね。」
やっぱりか。
「はいあんたたち、横一列に並ぶ。」
そう言われ、3兄弟は桔梗の前に横一列に並ぶ。
「じゃあ桔梗ちゃん改めて紹介するわね、こっちから長男桃也、次男海斗、三男毅流、はい挨拶!」
「長男桃也、モデル兼俳優、つっても俳優業は始めたばっかで大したことねぇけどな、年は23、よろしく。」
「あ、あぁ…!」
画像じゃ気付かなかったけど言われたらそうだ。
桃也さんて某有名テーマパークのCM出てたな。
「ボク海斗~、よろしくねぇ、21歳で大学生しながらバンド活動してるんだぁ。」
何か、ユルイし、セクシー…むしろ、エロい?
「俺毅流、来月から一緒の高校だよ、よろしくね。」
可愛いイケメン、目の保養。
「よろしく。」
ママちゃんに敬語止めてって言われたから敬語じゃなくしたけど、平気だったかな?
「てかお前、その暖簾みたいな前髪邪魔じゃね?」
桃也が近付いてきて前髪に触れながら言ってきた。
暖簾…。
「ちょっと兄貴ぃ、女の子の前髪見て暖簾て…。」
「な、何だよっ。」
思ったこと言っただけだぞ!
「ごめんね桔梗、モモ兄悪気があるわけじゃないんだよっ。」
「いや、例え上手い。」
「へっ!」
暖簾か…確かにそんな感じだな。
「この暖簾が落ち着くんで…。」
「そ、そうか。」
とりあえず怒ってはないよな?
「今夜は桔梗ちゃんの歓迎会だから夕飯はお寿司の出前でも取ろうか?」
隆一の問いに「え?」となる。
「あれ、桔梗ちゃんお寿司は嫌い?」
「いや、好きだけど、あんなに素敵なキッチンがあるのにと思って。」
その言葉に静音の目がキラーン!と輝き、反して隆一たちはビクッ!
「でしょでしょ桔梗ちゃん!そう思うでしょっ?」
「うん、まぁ、あのキッチンで料理出来たら楽しいだろうなぁと思う。」
「そうよねぇ!」
ハイテンションになり桔梗の肩を抱く。
「あたしもそう思うしせっかく桔梗ちゃんの歓迎会をするんだもの腕によりをかけて中華でもと思って材料も全部買ってあるのよ~!」
うぉう、めっちゃ早口。
これだけ興奮してるってことは、料理上手なんだろなぁ。
と思っている桔梗を、静音の手からかすめ取ったのは3兄弟。
「ん?ん?」
何だ?どうした?
せっかくのイケメン顔が歪んでるぞ?
何か…怯えてる?
「桔梗っ、余計なこと言っちゃ駄目だよっ。」
毅流が小声で言うと、
「そうだよぉ、母さんに料理させちゃ絶対に駄目。」
海斗も小声で言ってきた。
「何故に?料理好きだし上手なのでは?」
「好きなのは合ってるが…上手くはないんだよ、なんつぅかその、不味くはないんだけど、何作っても味が…微妙…。」
そこで3兄弟、同時に大きな溜め息。
微妙?
「ちょっとあんたたち!余計なこと言ってんじゃないでしょうね…!」
怒鳴る声に振り返り、静音をじっと見つめてから歩み寄る。
「ママちゃん、材料買ってあるって言ったよね?」
「ちょっ、桔梗っ!」
まさか作ってとか言うんじゃないよなっ?
「揃えてあるわよ。」
「見てもいい?」
「いいわよぉ、来て来て。」
静音は途端にご機嫌になり、桔梗の手を引いて冷蔵庫の前に。
「じゃ~ん!」
広い冷蔵庫の中を見てすぐ
「おぉ!」
と歓喜の声を上げる。
すげぇ、めっちゃ揃ってる。
しかも材料ひとつひとつが高級そうだな。
「ね?ね?いいでしょ中華。」
「うん、食べたいんだけど、ひとつ条件出していい?」
「なぁに?」
「あたしに全部作らせて。」
「ええっ?」
軽快にキャベツを切っている桔梗の手際に思わず見惚れる。
「毅流ぅ、見過ぎだよ。」
「えっ!あっ!ごめっ!ちがっ!」
「とりあえずちゃんと餃子包んでねぇ。」
今夜の歓迎会の主役である桔梗1人に作らせるわけにいかず、3兄弟が手伝うという形で何とか静音から了承を得た桔梗。
海斗、毅流はダイニングテーブルで餃子作り。
桃也は唐揚げを揚げている。
桔梗は回鍋肉に入れるキャベツを楽しそうに刻んでいたがピタッと手を止める。
「そろそろ?」
呟いて桃也に寄る。
「桃也さんそれもう油から上げていいよ。」
「お、おぅ。」
いそいそと唐揚げを掬う桃也、餃子作りをしている海斗、毅流。
それぞれの手際を見てから再びキャベツを刻む。
3人とも器用だけど、普段料理何てしてなさそだな。
「普段はご飯どしてんの?」
「それぞれ仕事先で外食ってのが多いかもな、あとは出前とかテイクアウト。」
桃也の言葉にげんなり。
「駄目だ、育ち盛りがいるのに。」
呟いて毅流を見る。
「あ、でもたまにハウスキーパーさんに来てもらったりしてたから、ちゃんと手料理も食べてたよ。」
1人慌てながらも言ってくる毅流を見て再度げんなり。
毎日食べなくちゃ駄目だ。
「桔梗、唐揚げとりあえず全部バットに上げたぞ。」
「ちょっと待って。」
桔梗はいそいそとスマホを取り出し、ある画面を表示すると、
「じゃあ桃也さんはこれを見ながら麻婆豆腐を作って、材料はこれ、あたしもいるから。」
「おぅ、分かった。」
桃也にスマホと材料一式を渡すと、桔梗は冷蔵庫を開ける。
おぉ、ママちゃん、中華だけじゃなく色々考えていたんだな、色んな食材があるし、野菜も充実している!
これなら作れるな。
冷蔵庫から周りに目を向ける。
これだけ道具が揃ってるから、あるよな多分。
キョロキョロと見渡し
「あった!」
ミキサー発見!
やはり最新式だ!
桔梗はにんまぁ、と笑ってウキウキ気分で目当ての材料をぱぱぱぱぱっと手に取ると、ミキサーに入れやすい大きさにカット。
「うふふふふぅ。」
楽しそうに笑って鼻歌混じりでミキサーに材料を入れる。
「あれぇ、桔梗の今の鼻歌メロディーって今人気のバンドの新曲じゃな~い?」
「あ、うん。」
嬉しすぎて無意識に鼻歌まで出てしまっていたか…。
「あのバンドいいよねぇ。」
そう言えば…。
「海斗さんはバンドでどんな曲歌うの?」
聞きながら手際良くミキサーに材料を入れていく。
「そのうち聴かせてあげる。」
「うん?」
今は駄目なのか。
「あいつは俺たち家族の前では歌わないんだよ、プロになるまでは聴かせないんだと。」
スマホを見つつ麻婆豆腐を作りながら桃也が言った。
「そうなのか。」
プロ意識ってやつ?
考えながらミキサーのスイッチオン。
おぉ、我が家のポンコツミキサーとは違うな!
いい仕事してくれる!
しかもポンコツミキサーに比べて、音も静かだ。
いい感じだな。
あっという間に出来上がり、スイッチオフしたところで、
「餃子終わったよ。」
毅流が言ってきた。
「はいはい。」
答えながら食器棚を見て人数分のコップを取り出し、ミキサーで作り立てのジュースを注いでいく。
「3人ともこれ飲んでみて。」
「何作ったの?」
「美味しいジュースかなぁ?」
「俺はこれを…。」
「いいよ桃也さん、麻婆豆腐はあたしが代わる、ありがとね。」
こうして3人はジュースを前に立ち、同時に脳裏に浮かんだのは…。
何このいかにも苦そうな緑色の液体は!!!!!
で、立ち尽くす。
「毒じゃないよ、むしろ健康になる。」
麻婆豆腐を作りながらチラッと3人を見ると、
えぇ、ホントにぃ?嘘でしょ?
と言いたげな視線を投げてくる。
「騙されたと思って飲んでみて、それで騙されたと思ったら何でもするから。」
「何でもぉ?」
ん?
何か海斗さんの目が妖しく光ってる気が…何だ?
「桔梗を邪な目で見るな。」
桃也は海斗の頭をペイッと叩くと、コップを手にした。
「兄貴飲むの?!」
「モモ兄勇者だ!」
大袈裟だし。
桃也は目の高さまでコップを持ち上げ、マジマジと見つめた。
この手際から言って桔梗は料理上手で間違いねぇ。
それに料理すること自体好きそうだし楽しんでる。その桔梗が作ったもんだし…。
桃也は気合を入れるとゴクゴクゴクッ!
「ちょっ!兄貴っ!」
そんなに一気に飲まなくとも!
飲んだ桃也の目がカッ!と見開いたかと思うと動きが止まる。
「ほらぁ、言わんこっちゃない~。」
「味どう?好みに合わせて微調整するよ。」
あらかじめ用意していたお皿に出来上がった麻婆豆腐を盛り付けていると、
「桔梗!」
桃也が興奮したように桔梗の肩を掴む。
「うお?」
「何だこの美味さは!」
「嘘だろ!」
海斗、毅流が同時に叫ぶ。
「叫ぶ前に飲む。」
桔梗に冷ややかに言われ、オズオズと飲む2人を見てから桃也に視線を向ける。
「どうする?微調整する?」
「ん?あぁ頼む、疲れてるときはこの甘さもいいけど、普段はもう少しサッパリしててもいいかな。」
「分かった。」
「てかこれ野菜だけだろ?何でこんなに甘いんだ?」
「野菜も意外と甘いのだよ、桃也さん、で…そっちの2人は?」
「ボクはもう少し甘くてもいいかなぁ。」
「俺意外ともう少しパンチあってもいいかなとか思っちゃった。」
「そう、分かった、で…騙された?」
……………。
まぁ、ある意味騙されたような気はするが…。
「すみませんでした。」
3人とも謝るしかないわけで…。
そんなわけで夕食。
成人した4人は中華料理に似合う黒ビール、未成年の2人は烏龍茶。
「それでは新たな家族、桔梗ちゃんとの再会を祝して、乾杯!」
隆一の乾杯の後にみんなで
「かんぱ~い!」
と言ってそれぞれ食べたい物をお皿に取っていく。
その姿を桔梗はじぃっ、と見ていた。
大丈夫かな?
あたしの味付けで問題ないか?
父さん母さん、光希とか友達には美味いって言われてるけど、味の好みは人それぞれだしなぁ。
さっきの野菜ジュースみたいに微調整で済めばいいけど…。
「どうした桔梗?」
一向に動かない桔梗に気付き、桃也が声を掛けていると
「シェフを呼べ~い!」
海斗が声を上げた。
「ぬ?」
「いやこれ美味し~、桔梗って料理上手だね~、思わず大声出ちゃった。」
「おおおおお、ホッとしたぁ。」
すっかり脱力する桔梗を見て思わず笑ってしまう。
「何だ、俺たちの口に合うか気が気じゃなかったのか?」
「まぁ…好みって人それぞれだし。」
「もう少し自分に自信持てよ、俺はあの手際の良さ見ただけで味も相当だと思ってたけどな。」
うわぁ、桃也さんみたいなイケメンなら歯の浮くような台詞言ってもかっちぇ~!
「確かにこれは想像以上の美味しさ、何か手伝った俺たちまで料理上手に思えちゃうな。」
桔梗の指示が良かったんだな。
「いやぁ、桔梗ちゃんはいいお嫁さんになるなぁ。」
「どうせならこのまま家にお嫁に来ちゃう?あたし桔梗ちゃんみたいな娘欲しいわぁ。」
「いやいや…。」
こんな顔面偏差値バカ高い方々には、それ相応の美女がふさわしい!
「でも冗談抜きで、毎日こんな美味い飯食えんなら、仕事終わり次第直帰する。」
「作ろうか?」
「マジかっ?」
「ちょっとモモ兄ぃ、桔梗だって学校があるんだよ、毎日何て桔梗に負担が…。」
「じゃあお前は食いたくねぇの?この絶品飯。」
「それは…。」
「へーき、無理ない程度に作るし、手伝って欲しいときは言う、それにあたしは手際がいい、でしょ?」
と言って桃也を見てニッと笑う。
「そうだな。」
「パパちゃんママちゃん、あたし作るのいい?」
「勿論だよ~、静音、リモートワーク多めにしよう!」
「異議なし!」
「まったくみんなして!」
桔梗の優しさに甘えて!
「まぁまぁ毅流、みんなだって毎日何て言わないよぉ、それにボクも早く帰れるときは必ず手伝うしさぁ、それにぃ、毅流だって本音を言えば食べたいでしょ~?」
「ま、まぁ…。」
本音を言えば食べたいけども。
「桔梗、ホントに無理は駄目だよ、無理なときはどうにでもするから。」
「分かってる、ありがとう。」
とりあえず…。
みんなの好みがあたしの味付けと合っていて良かった。
「あのジュースも頼む。」
「勿論、あれなら作り置き出来るし。」
それにあのミキサーさえあれば問題ない。
この最新式のキッチン…。
フルに活用するぞ!
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる