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第1話 新しい生活と懐かしい家族
好きなタイプ
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お風呂上がり自室に入ってすぐ
「うぉう!」
思わず悲鳴。
ううう…自分の部屋なのに慣れんなぁ。
昼間、夕食を作る前に
「もうセッティングしてあるよ。」
と、毅流に部屋に案内してもらったのだが…。
「おあっ!のっ!うぉうっ?」
ドアを開けて室内を見た瞬間、訳の分からぬ悲鳴を上げてしまう。
それ程桔梗の部屋は、見たことのない家具家電が並んでいた。
キッチンもリビングも最新の家具家電で揃っていたが…。
「まさかあたしの部屋までそうとは…っ!」
思わず膝から崩れ落ちる。
「桔梗どうしたのっ?」
あぁ、これは総額いくらなのだろう…。
「やっぱり勝手に家具家電替えちゃったの怒ったっ?」
「いや、怒ってない、むしろもぅ…申し訳ない気持ちでいっぱいっすよ…。」
母さんから聞いたのだろうか…。
家具の形も好みだし、カーテンとかベッドカバーが元々使ってたブルーで統一されている。
ちゃんとあたしの好みも織り込んでいる辺りがもう、余計申し訳ない。
「桔梗と再会出来るって聞いて俺たち嬉しくてさ、でも父さんと母さんの喜びはもう俺たちの比じゃなくて。」
「喜びを形にしたらこうなったと…?」
「うん、まぁ…。」
せっかくここまで用意してくれて、あたしの荷物までちゃんとセッティングしてくれたのに、
「こんな贅沢な部屋無理。」
何て言えないもんなぁ。
ありがたく使わせてもらおう。
少しずつ慣れなきゃな。
てか…少しずつ慣れればいいよな。
「ドライヤー…。」
あぁ、何て素敵なドレッサー。
今まで使ったことないっすよ。
学習デスクひとつ取ってもめっちゃオシャレ、センスいいし…。
やっぱ豪華だ、こりゃ慣れるの時間かかるぞ、あたし。
と、そこへ不意にノックの音。
おぉ、新鮮。
母さんも父さんも、何なら遊びに来た光希までもノック何かしないもんな。
「はい。」
ドアが開き毅流が顔を出した。
「今大丈夫?」
「うん、どした?」
「桔梗が使ってる教科書チェックしておいた方がいいかなと思ったんだけど、いつやる?」
「今からでもいいよ。」
「え?桔梗疲れてない?明日以降でいいよ?」
「別に疲れてないよ?」
桔梗って、何か底知れないなぁ。
「じゃあ、やろっか?」
「うん。」
そこで桔梗は学習デスクの引き出しから教科書を引っ張り出し、次々にテーブルに置いていく。
「これで全部かな。」
先にソファに座っていた毅流の隣に座る。
「じゃあ見せてもらうね。」
「どうぞ。」
1冊ずつ丁寧に目を通す。
けっこう書き込みしてるけど、綺麗に使ってるなぁ、内容も俺の教科書と似たり寄ったりなんだけど…。
「………。」
「何か問題?」
「いや、桔梗さ…。」
そこで教科書をパタンと閉じる。
「頭いい?」
「あ~、どうだろ、悪くはないかな、塾行かなくても苦労してないし、傍に常に天才がいたから。」
「天才が?」
「うん、幼馴染みの光希っていうのがいるんだけど、天才、あたしは多少苦手な教科あるけど、光希は苦手な教科なし、無敵。」
負けず嫌いが勉強にも出てたからなぁ、お陰で助かった。
「凄いんだね、その幼馴染み。」
「うん、天才だし道場の娘だから強いし何より、イケメン女子!」
「桔梗、写真、ある?」
「ん?あるよ、見る?」
「見たい…!」
何か毅流…目が血走ってないか?
テーブルに置きっぱなしのスマホを操作して
「ほい。」
手渡すと
「ばっ!」
毅流、短い悲鳴を上げ顔を真っ赤にしてしまう。
おぉ、これはどストライクか?
「そっかぁ、毅流の好みはイケメン女子かぁ。」
「桔梗、この女子について詳しく…!」
「いいけど、落ち着こうか?はい深呼吸。」
毅流と一緒にスーハースーハー深呼吸。
「では…。」
そこでなるべく詳しく光希についてご説明。
毅流はほぅほぅ、だのなるほど、だの呟きながら真剣に聞いていた。
「詳しく聞けば聞く程本人に会いたくなってきた。」
「あぁ、それなら多分そう遠くないうちに叶うかも。」
「嘘ホントっ?」
「うん、あたしが引っ越すって言ったら先に行って待ってろって言ってたから。」
「えっ?どういうことっ?」
「光希も近いうちにこっちに引っ越して来ると思う。」
「ええっ?」
何がどうなってそうなったわけ?
「何か混乱させちゃってるけど、光希はあたしに嘘つかないし有言実行だから、間違いなく来るから待ってて、それに多分毅流は光希のタイプだと思う。」
「ほほほほほっ、ホントにっ?」
「うん、光希が好きな芸能人の系統が毅流っぽいの多い。」
何と言うか癒しワンコ系、的な?
光希って自分がイケメンで強いから、男には癒しとか可愛さを求めるタイプだからな。
桃也さんとか海斗さんは少し外れてるけど、毅流は光希のタイプだと思う。
「桔梗、もしもホントに俺と光希ちゃんが出逢うことになったら、そのときは協力よろしく、その変わり俺も桔梗に好きな人が出来たら絶対協力するから…!」
「うん、分かった。」
毅流があたしに協力することはないだろうけど…。
「ちなみに桔梗の好きなタイプってどんな人?」
「あ~、考えたことないな、恋愛自体にあんまり興味がないから。」
「そうなの?俺はてっきり…。」
「てっきり?」
「あ、いや別に、もう少し詳しく教科書見てもいい?」
「うん?」
何かはぐらかされた感もあるけど、まぁいいか。
毅流は教科書を見ながらも考えを巡らせていた。
桔梗の初恋って多分、モモ兄だよな?
お隣同士だったとき、毎日遊びに来てはモモ兄の後ばっか付いて歩いて、大きくなったらモモ兄のお嫁さんになるって言ってたし、引っ越すときもモモ兄から離れたくないってわんわん泣いたし。
でも桔梗は昔のことぼんやりとしか覚えてないらしいし、昔のこと言って変に意識させるのも良くないし、黙ってた方がいいよな?
毅流から、
「これなら大丈夫、特に問題ないと思うよ。」
と言われホッとして一気に疲れが出て急に眠気が…。
「てなると思ったんだけどなぁ。」
一向に眠気が来ない…。
環境が変わったから、多少気分が高揚しとる?
そんな桔梗の姿はキッチンにあった。
一向に来ない眠気を誘うため、よく眠れる野菜ジュースを作りに来たのだ。
ついでに明日の朝食の準備しちゃうか、桃也さんお弁当だし。
この桔梗の野菜ジュース、レパートリーは数え切れない程ある。
小学校低学年の頃から料理をするようになった桔梗は、そのうち野菜ジュースに興味を持った。
と言うのも、光希が道場での鍛錬を日々レベルアップさせる中、いわゆる肉体改造もしていた頃、よく大量のサラダを食べているのを見て
もう少し簡単にたくさん食べられないかな?
と考えるようになり、そこから試行錯誤して桔梗特製野菜ジュース第一号を作り上げたのだ!
そこから更に研究し、色んな効果のジュースを作り出したわけだ。
「よし、出来た。」
スイッチを切って出来上がったジュースをコップに注ぎながら
「好きなタイプかぁ。」
と呟く。
今までの人生において、そんなこと考えたことない気がする…。
興味ないわけじゃないと思うんだけど、よく分からん。
「好きなタイプがどうかしたぁ?」
「ん?」
声の方を見るといつの間にかリビングに海斗が立っていた。
「海斗さん。」
全然気付かなかったな。
「何か欲しいの?」
「少し曲作りしてから寝ようと思って、頭が冴えるようにコーヒーでもと思ってねぇ。」
「それは良くない、ちょっと待って。」
手早くミキサーを洗い冷蔵庫を開けるとばばばばばっ、と数種類の野菜を取り出すと、ミキサーに入れやすい大きさにカット。
海斗は桔梗の隣に立つと、その華麗な手さばきを見つめた。
「桔梗ってさぁ、小さな巨人、て感じだよねぇ。」
と言って頭をポンポンする。
「ん?どゆこと?」
「ちっちゃな体なのに凄いパワーってことぉ、身長いくつ?」
「ん~、154くらいで伸び悩んでいる…。」
面白い言い方するなぁ、伸び悩みって…。
「海斗さんたちはみんな背ぇ高いよね。」
「まぁねぇ、兄貴は183、ボクは177、毅流は172だけどまだ伸びてるって言ってたかな。」
「みんなの端数だけでもいいから欲しい。」
「小さいの嫌なの?」
「嫌と言うか…何かと不便。」
「そういうときはボクたちみたいな長身の男に甘えればいいんだよ~。」
「甘える、ねぇ。」
呟いてミキサーのスイッチを入れる桔梗の横顔を見つめながら
恋愛が苦手なのか興味がないのか、気になるなぁ。
「よし、出来上がり。」
「はいコップ。」
「お、ありがとう。」
ジュースを注ぎながら
「コーヒーじゃ寝るときに眠くならないかもしれないから、こっち飲んでね、これでも充分頭が冴えるから。」
とご説明。
「ありがと、桔梗は気が利くねぇ。」
「そりゃ海斗さんの方でしょ、今もパッとコップ差し出すのとか洗練されてる感じ、もてそう。」
「それはまぁ否定しないかなぁ、実際モテてるし。」
「やはり…。」
でも何だろう…。
モテてるって言ってる割には、何だか…嬉しそうじゃなく見える。
「桔梗はどうなの?」
「ん?」
「さっきの、好きなタイプかぁって言ってたでしょ?桔梗の好きなタイプってどんななの?」
「分からぬ。」
「えっ?」
「今まで考えたことなかった、だからどんなタイプと聞かれると分からない。」
「じゃあさ、恋愛に興味ある?」
「それも…。」
「考えたことない、かな?」
素直にこくん、と頷いてミキサーを洗う。
「今まで誰かを好きになったことって…。」
「ない。」
あそっかぁ、確か桔梗ボクたちのことぼんやりとしか覚えてないんだっけ。
じゃあ兄貴が初恋っての、覚えてないんだろうなぁ。
あんなに兄貴にベッタリだったのに。
ミキサーを片付けてから、再度冷蔵庫を開ける桔梗に
「まだ何か作るのぉ?」
「うん、明日の朝ごはんの下ごしらえをね、桃也さんにはお弁当作らなきゃだから。」
夕飯時、明日の朝食の話になったのだが、桃也は少し遠方でのロケなので朝5時には家を出ると言ったので、ならば移動中に朝ご飯が食べられるようにとお弁当を作ることにした。
「桔梗って健気だねぇ。」
「そうかな?」
好きでやってるだけなんだが。
ロケバスに乗ったところで、桔梗が朝食用にと持たせてくれたお弁当を開けた。
すげぇ、ちゃんと作ってある。
俺はてっきり昨夜の残り物か何かを詰めただけかと…て、昨夜の残り何てねぇか、美味くてバクバク食っちまったもんなぁ。
ドリンクホルダーに入れたサーモボトルには、
「今日は日差しが強い分少し暑くなるみたいだから、これ飲んでファイト。」
桔梗特製野菜ジュース。
至れり尽くせりだな。
嬉しそうに卵焼きを口に運ぶ桃也に、
「彼女でも出来たか?」
声をかけたのはマネージャー。
「秘密だ。」
「うぉう!」
思わず悲鳴。
ううう…自分の部屋なのに慣れんなぁ。
昼間、夕食を作る前に
「もうセッティングしてあるよ。」
と、毅流に部屋に案内してもらったのだが…。
「おあっ!のっ!うぉうっ?」
ドアを開けて室内を見た瞬間、訳の分からぬ悲鳴を上げてしまう。
それ程桔梗の部屋は、見たことのない家具家電が並んでいた。
キッチンもリビングも最新の家具家電で揃っていたが…。
「まさかあたしの部屋までそうとは…っ!」
思わず膝から崩れ落ちる。
「桔梗どうしたのっ?」
あぁ、これは総額いくらなのだろう…。
「やっぱり勝手に家具家電替えちゃったの怒ったっ?」
「いや、怒ってない、むしろもぅ…申し訳ない気持ちでいっぱいっすよ…。」
母さんから聞いたのだろうか…。
家具の形も好みだし、カーテンとかベッドカバーが元々使ってたブルーで統一されている。
ちゃんとあたしの好みも織り込んでいる辺りがもう、余計申し訳ない。
「桔梗と再会出来るって聞いて俺たち嬉しくてさ、でも父さんと母さんの喜びはもう俺たちの比じゃなくて。」
「喜びを形にしたらこうなったと…?」
「うん、まぁ…。」
せっかくここまで用意してくれて、あたしの荷物までちゃんとセッティングしてくれたのに、
「こんな贅沢な部屋無理。」
何て言えないもんなぁ。
ありがたく使わせてもらおう。
少しずつ慣れなきゃな。
てか…少しずつ慣れればいいよな。
「ドライヤー…。」
あぁ、何て素敵なドレッサー。
今まで使ったことないっすよ。
学習デスクひとつ取ってもめっちゃオシャレ、センスいいし…。
やっぱ豪華だ、こりゃ慣れるの時間かかるぞ、あたし。
と、そこへ不意にノックの音。
おぉ、新鮮。
母さんも父さんも、何なら遊びに来た光希までもノック何かしないもんな。
「はい。」
ドアが開き毅流が顔を出した。
「今大丈夫?」
「うん、どした?」
「桔梗が使ってる教科書チェックしておいた方がいいかなと思ったんだけど、いつやる?」
「今からでもいいよ。」
「え?桔梗疲れてない?明日以降でいいよ?」
「別に疲れてないよ?」
桔梗って、何か底知れないなぁ。
「じゃあ、やろっか?」
「うん。」
そこで桔梗は学習デスクの引き出しから教科書を引っ張り出し、次々にテーブルに置いていく。
「これで全部かな。」
先にソファに座っていた毅流の隣に座る。
「じゃあ見せてもらうね。」
「どうぞ。」
1冊ずつ丁寧に目を通す。
けっこう書き込みしてるけど、綺麗に使ってるなぁ、内容も俺の教科書と似たり寄ったりなんだけど…。
「………。」
「何か問題?」
「いや、桔梗さ…。」
そこで教科書をパタンと閉じる。
「頭いい?」
「あ~、どうだろ、悪くはないかな、塾行かなくても苦労してないし、傍に常に天才がいたから。」
「天才が?」
「うん、幼馴染みの光希っていうのがいるんだけど、天才、あたしは多少苦手な教科あるけど、光希は苦手な教科なし、無敵。」
負けず嫌いが勉強にも出てたからなぁ、お陰で助かった。
「凄いんだね、その幼馴染み。」
「うん、天才だし道場の娘だから強いし何より、イケメン女子!」
「桔梗、写真、ある?」
「ん?あるよ、見る?」
「見たい…!」
何か毅流…目が血走ってないか?
テーブルに置きっぱなしのスマホを操作して
「ほい。」
手渡すと
「ばっ!」
毅流、短い悲鳴を上げ顔を真っ赤にしてしまう。
おぉ、これはどストライクか?
「そっかぁ、毅流の好みはイケメン女子かぁ。」
「桔梗、この女子について詳しく…!」
「いいけど、落ち着こうか?はい深呼吸。」
毅流と一緒にスーハースーハー深呼吸。
「では…。」
そこでなるべく詳しく光希についてご説明。
毅流はほぅほぅ、だのなるほど、だの呟きながら真剣に聞いていた。
「詳しく聞けば聞く程本人に会いたくなってきた。」
「あぁ、それなら多分そう遠くないうちに叶うかも。」
「嘘ホントっ?」
「うん、あたしが引っ越すって言ったら先に行って待ってろって言ってたから。」
「えっ?どういうことっ?」
「光希も近いうちにこっちに引っ越して来ると思う。」
「ええっ?」
何がどうなってそうなったわけ?
「何か混乱させちゃってるけど、光希はあたしに嘘つかないし有言実行だから、間違いなく来るから待ってて、それに多分毅流は光希のタイプだと思う。」
「ほほほほほっ、ホントにっ?」
「うん、光希が好きな芸能人の系統が毅流っぽいの多い。」
何と言うか癒しワンコ系、的な?
光希って自分がイケメンで強いから、男には癒しとか可愛さを求めるタイプだからな。
桃也さんとか海斗さんは少し外れてるけど、毅流は光希のタイプだと思う。
「桔梗、もしもホントに俺と光希ちゃんが出逢うことになったら、そのときは協力よろしく、その変わり俺も桔梗に好きな人が出来たら絶対協力するから…!」
「うん、分かった。」
毅流があたしに協力することはないだろうけど…。
「ちなみに桔梗の好きなタイプってどんな人?」
「あ~、考えたことないな、恋愛自体にあんまり興味がないから。」
「そうなの?俺はてっきり…。」
「てっきり?」
「あ、いや別に、もう少し詳しく教科書見てもいい?」
「うん?」
何かはぐらかされた感もあるけど、まぁいいか。
毅流は教科書を見ながらも考えを巡らせていた。
桔梗の初恋って多分、モモ兄だよな?
お隣同士だったとき、毎日遊びに来てはモモ兄の後ばっか付いて歩いて、大きくなったらモモ兄のお嫁さんになるって言ってたし、引っ越すときもモモ兄から離れたくないってわんわん泣いたし。
でも桔梗は昔のことぼんやりとしか覚えてないらしいし、昔のこと言って変に意識させるのも良くないし、黙ってた方がいいよな?
毅流から、
「これなら大丈夫、特に問題ないと思うよ。」
と言われホッとして一気に疲れが出て急に眠気が…。
「てなると思ったんだけどなぁ。」
一向に眠気が来ない…。
環境が変わったから、多少気分が高揚しとる?
そんな桔梗の姿はキッチンにあった。
一向に来ない眠気を誘うため、よく眠れる野菜ジュースを作りに来たのだ。
ついでに明日の朝食の準備しちゃうか、桃也さんお弁当だし。
この桔梗の野菜ジュース、レパートリーは数え切れない程ある。
小学校低学年の頃から料理をするようになった桔梗は、そのうち野菜ジュースに興味を持った。
と言うのも、光希が道場での鍛錬を日々レベルアップさせる中、いわゆる肉体改造もしていた頃、よく大量のサラダを食べているのを見て
もう少し簡単にたくさん食べられないかな?
と考えるようになり、そこから試行錯誤して桔梗特製野菜ジュース第一号を作り上げたのだ!
そこから更に研究し、色んな効果のジュースを作り出したわけだ。
「よし、出来た。」
スイッチを切って出来上がったジュースをコップに注ぎながら
「好きなタイプかぁ。」
と呟く。
今までの人生において、そんなこと考えたことない気がする…。
興味ないわけじゃないと思うんだけど、よく分からん。
「好きなタイプがどうかしたぁ?」
「ん?」
声の方を見るといつの間にかリビングに海斗が立っていた。
「海斗さん。」
全然気付かなかったな。
「何か欲しいの?」
「少し曲作りしてから寝ようと思って、頭が冴えるようにコーヒーでもと思ってねぇ。」
「それは良くない、ちょっと待って。」
手早くミキサーを洗い冷蔵庫を開けるとばばばばばっ、と数種類の野菜を取り出すと、ミキサーに入れやすい大きさにカット。
海斗は桔梗の隣に立つと、その華麗な手さばきを見つめた。
「桔梗ってさぁ、小さな巨人、て感じだよねぇ。」
と言って頭をポンポンする。
「ん?どゆこと?」
「ちっちゃな体なのに凄いパワーってことぉ、身長いくつ?」
「ん~、154くらいで伸び悩んでいる…。」
面白い言い方するなぁ、伸び悩みって…。
「海斗さんたちはみんな背ぇ高いよね。」
「まぁねぇ、兄貴は183、ボクは177、毅流は172だけどまだ伸びてるって言ってたかな。」
「みんなの端数だけでもいいから欲しい。」
「小さいの嫌なの?」
「嫌と言うか…何かと不便。」
「そういうときはボクたちみたいな長身の男に甘えればいいんだよ~。」
「甘える、ねぇ。」
呟いてミキサーのスイッチを入れる桔梗の横顔を見つめながら
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「よし、出来上がり。」
「はいコップ。」
「お、ありがとう。」
ジュースを注ぎながら
「コーヒーじゃ寝るときに眠くならないかもしれないから、こっち飲んでね、これでも充分頭が冴えるから。」
とご説明。
「ありがと、桔梗は気が利くねぇ。」
「そりゃ海斗さんの方でしょ、今もパッとコップ差し出すのとか洗練されてる感じ、もてそう。」
「それはまぁ否定しないかなぁ、実際モテてるし。」
「やはり…。」
でも何だろう…。
モテてるって言ってる割には、何だか…嬉しそうじゃなく見える。
「桔梗はどうなの?」
「ん?」
「さっきの、好きなタイプかぁって言ってたでしょ?桔梗の好きなタイプってどんななの?」
「分からぬ。」
「えっ?」
「今まで考えたことなかった、だからどんなタイプと聞かれると分からない。」
「じゃあさ、恋愛に興味ある?」
「それも…。」
「考えたことない、かな?」
素直にこくん、と頷いてミキサーを洗う。
「今まで誰かを好きになったことって…。」
「ない。」
あそっかぁ、確か桔梗ボクたちのことぼんやりとしか覚えてないんだっけ。
じゃあ兄貴が初恋っての、覚えてないんだろうなぁ。
あんなに兄貴にベッタリだったのに。
ミキサーを片付けてから、再度冷蔵庫を開ける桔梗に
「まだ何か作るのぉ?」
「うん、明日の朝ごはんの下ごしらえをね、桃也さんにはお弁当作らなきゃだから。」
夕飯時、明日の朝食の話になったのだが、桃也は少し遠方でのロケなので朝5時には家を出ると言ったので、ならば移動中に朝ご飯が食べられるようにとお弁当を作ることにした。
「桔梗って健気だねぇ。」
「そうかな?」
好きでやってるだけなんだが。
ロケバスに乗ったところで、桔梗が朝食用にと持たせてくれたお弁当を開けた。
すげぇ、ちゃんと作ってある。
俺はてっきり昨夜の残り物か何かを詰めただけかと…て、昨夜の残り何てねぇか、美味くてバクバク食っちまったもんなぁ。
ドリンクホルダーに入れたサーモボトルには、
「今日は日差しが強い分少し暑くなるみたいだから、これ飲んでファイト。」
桔梗特製野菜ジュース。
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「秘密だ。」
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