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第2話 前途多難?学園生活
新たな学園生活
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いよいよ始業式。
新たな制服に身を包み、やや緊張の面持ちで毅流と共にワゴンに乗り込む。
「じゃあ出発するよ。」
運転席に座る隆一が後部座席に並んで座る毅流、桔梗の方を見ながら言った。
ちなみに助手席には静音が乗っている。
普段は最寄りの駅から電車に乗って通っているのだが、今日は黒岸夫妻が桔梗と共に校長に挨拶することになっているため、車での登校となった。
今日から桔梗が通う高校は、生徒主体の自由な方針であり、なかなか名の知れた進学校。
中にはセレブな生徒も通っている。
かくいう黒岸家もセレブ枠に入るくらいの家ではあるし、家族5人中3人が芸能関係の仕事をしている上に、家族全員が眉目秀麗、そして桃也も海斗もこの高校の卒業生。
良くも悪くも目立つのだ。
そこにお世話になる桔梗。
下手に隠して後々公になれば、おかしな噂も立つだろうし、何より桔梗や毅流が傷付くような事態は避けたい、ということで、学校側とも話し合い、公にすることにしたのだ。
ちなみにこの話、桔梗の両親は把握済みらしいが、桔梗本人は
「聞いてると思うけど…。」
と、昨夜静音が念のために話してきたことで初めて知ったのだった。
母さん、マジでもう…。
そんなにフランス移住が良かったのか?
浮かれ過ぎだろうよ。
学校に到着し、教室に向かう毅流と別れ桔梗は黒岸夫妻と共に校長室へ。
うぅぅ、緊張するぅ。
校長室に通され、
「おはようございます。」
穏やかな微笑みを称えた校長に迎えられ、3人も挨拶。
「どうぞお座り下さい。」
促され静音と隆一に挟まれて革張りのソファに座った。
優しそうなナイスミドルな校長先生だな。
「桃也君と海斗君はお元気ですか?」
「お陰様で、桃也の方は少しずつですが仕事の量も増えてきていますし、海斗も大学とバンド活動を上手く両立してやっています。」
「そうですか、それは何よりです、さて…。」
隆一に向けていた目を桔梗に向け、ニコリと笑う。
「川野辺桔梗さん。」
「は、はいっ。」
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、以前の高校で在学中の貴女の資料を拝見しましたが、かなり優秀なようですね。」
「あ、ありがとうございます。」
「我が校は生徒主体の自由な校風です、ここでも貴女の実力は充分に発揮出来ると思いますよ、とは言え慣れないこともあると思いますから、そんなときは頼れる友人に相談して下さい。」
「は、はい。」
「大丈夫よ桔梗ちゃん、毅流もいるんだから。」
静音に肩をポン、とされただけで幾分緊張が解ける感じがした。
「とりあえず始業式は黒岸さんたちと後ろの方で参加して頂いて、その後教室に移動という形にしてあります。」
「はい、よろしくお願いします。」
始業式でやや解れたものの、担任教師と教室に向かう頃には、再び緊張してきた。
うぅ、知らない人たちばかり、上手くやれるのか?
大丈夫か?
「川野辺さん?」
「は、はい。」
長い廊下を歩く途中、担任である女性教師、佐野実里が声を掛けてきた。
「桃也君と海斗君は元気かしら?あの子たち私の教え子だったの。」
「そうなんですか?」
もぉにぃたんとかぁ君の先生だったのか、何となく親近感。
「元気ですよ、何かと忙しいですけど栄養バランスはバッチリです。」
「そうですか、それは良かった。」
栄養バランス…、まさかそこを断言してくるとは思わなかったわ、なかなか面白い子。
「さぁ、ここが貴女の教室です。」
2-Cと書かれたプレートが付いた教室のドアをスライドさせ、実里が入って行くのを見て桔梗は大きく深呼吸して
よし!
心の中で気合を入れて1歩を踏み出し教室へ。
「ぬ…っ?」
毅流~っ!
そこに毅流の姿を見て驚いていると、毅流は周囲に分からない程度に微笑んで見せた。
何だぁ、毅流同じクラスかぁ。
一気に肩の力が抜けた桔梗。
実里に促されて自己紹介する際、
「川にょべ桔梗です、よろしくお願いします。」
力が抜け過ぎて自分の名前を甘噛みしたわけで…。
その日の夜、食卓には家族全員が揃い、当然桔梗と毅流の始業式の話になった。
「まさか自分の名前を噛むとは思わなかった。」
「それだけ毅流見付けて安心しちゃったってことでしょ~?」
「うんまぁ…。」
でも初日にみんなの前で噛むとか、ちょっとかっちょ悪い。
光希ならきっと、しれっと完璧にこなしちゃうんだろな。
「あ、そう言えば佐野先生に桃也さんとかぁ君は元気ですか?て聞かれたよ。」
今思えば、緊張でガッチガチのあたしを和ますために話しかけてくれたんだろうて。
「何だ、佐野先生が担任なのか?」
桃也が毅流を見るとコクッと頷いた後、
「しかも体育は翔ちゃんだよ、本人から直接言われたから。」
言葉を繋げた。
「翔ちゃん?」
だいぶ親しげだが何者?
「あ~、桔梗は翔ちゃん何て言われても分からないよねぇ、翔ちゃんは体育教師であり、ボクの友達のお兄ちゃんなんだよ。」
「あ、そゆこと。」
「そそ、前は家にもよく遊びに来てたしねぇ、勿論事前に桔梗のことよろしくぅ、て連絡しておいたよぉ。」
「それは…。」
何か申し訳ねぇ。
「ちなみに海斗兄、翔ちゃんに何て言ったの?」
「え?桔梗をよろしくぅ、くらいにしか言ってないけどぉ、何かまずかった?」
「いや、まずくはないんだけど…翔ちゃんてたまに的外れなことしたり言ってくるから、大丈夫かなぁ。」
悪気がない分、対処に困るときあるんだよね。
何処となく…何となく嫌な予感がしないでもない。
新たな制服に身を包み、やや緊張の面持ちで毅流と共にワゴンに乗り込む。
「じゃあ出発するよ。」
運転席に座る隆一が後部座席に並んで座る毅流、桔梗の方を見ながら言った。
ちなみに助手席には静音が乗っている。
普段は最寄りの駅から電車に乗って通っているのだが、今日は黒岸夫妻が桔梗と共に校長に挨拶することになっているため、車での登校となった。
今日から桔梗が通う高校は、生徒主体の自由な方針であり、なかなか名の知れた進学校。
中にはセレブな生徒も通っている。
かくいう黒岸家もセレブ枠に入るくらいの家ではあるし、家族5人中3人が芸能関係の仕事をしている上に、家族全員が眉目秀麗、そして桃也も海斗もこの高校の卒業生。
良くも悪くも目立つのだ。
そこにお世話になる桔梗。
下手に隠して後々公になれば、おかしな噂も立つだろうし、何より桔梗や毅流が傷付くような事態は避けたい、ということで、学校側とも話し合い、公にすることにしたのだ。
ちなみにこの話、桔梗の両親は把握済みらしいが、桔梗本人は
「聞いてると思うけど…。」
と、昨夜静音が念のために話してきたことで初めて知ったのだった。
母さん、マジでもう…。
そんなにフランス移住が良かったのか?
浮かれ過ぎだろうよ。
学校に到着し、教室に向かう毅流と別れ桔梗は黒岸夫妻と共に校長室へ。
うぅぅ、緊張するぅ。
校長室に通され、
「おはようございます。」
穏やかな微笑みを称えた校長に迎えられ、3人も挨拶。
「どうぞお座り下さい。」
促され静音と隆一に挟まれて革張りのソファに座った。
優しそうなナイスミドルな校長先生だな。
「桃也君と海斗君はお元気ですか?」
「お陰様で、桃也の方は少しずつですが仕事の量も増えてきていますし、海斗も大学とバンド活動を上手く両立してやっています。」
「そうですか、それは何よりです、さて…。」
隆一に向けていた目を桔梗に向け、ニコリと笑う。
「川野辺桔梗さん。」
「は、はいっ。」
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、以前の高校で在学中の貴女の資料を拝見しましたが、かなり優秀なようですね。」
「あ、ありがとうございます。」
「我が校は生徒主体の自由な校風です、ここでも貴女の実力は充分に発揮出来ると思いますよ、とは言え慣れないこともあると思いますから、そんなときは頼れる友人に相談して下さい。」
「は、はい。」
「大丈夫よ桔梗ちゃん、毅流もいるんだから。」
静音に肩をポン、とされただけで幾分緊張が解ける感じがした。
「とりあえず始業式は黒岸さんたちと後ろの方で参加して頂いて、その後教室に移動という形にしてあります。」
「はい、よろしくお願いします。」
始業式でやや解れたものの、担任教師と教室に向かう頃には、再び緊張してきた。
うぅ、知らない人たちばかり、上手くやれるのか?
大丈夫か?
「川野辺さん?」
「は、はい。」
長い廊下を歩く途中、担任である女性教師、佐野実里が声を掛けてきた。
「桃也君と海斗君は元気かしら?あの子たち私の教え子だったの。」
「そうなんですか?」
もぉにぃたんとかぁ君の先生だったのか、何となく親近感。
「元気ですよ、何かと忙しいですけど栄養バランスはバッチリです。」
「そうですか、それは良かった。」
栄養バランス…、まさかそこを断言してくるとは思わなかったわ、なかなか面白い子。
「さぁ、ここが貴女の教室です。」
2-Cと書かれたプレートが付いた教室のドアをスライドさせ、実里が入って行くのを見て桔梗は大きく深呼吸して
よし!
心の中で気合を入れて1歩を踏み出し教室へ。
「ぬ…っ?」
毅流~っ!
そこに毅流の姿を見て驚いていると、毅流は周囲に分からない程度に微笑んで見せた。
何だぁ、毅流同じクラスかぁ。
一気に肩の力が抜けた桔梗。
実里に促されて自己紹介する際、
「川にょべ桔梗です、よろしくお願いします。」
力が抜け過ぎて自分の名前を甘噛みしたわけで…。
その日の夜、食卓には家族全員が揃い、当然桔梗と毅流の始業式の話になった。
「まさか自分の名前を噛むとは思わなかった。」
「それだけ毅流見付けて安心しちゃったってことでしょ~?」
「うんまぁ…。」
でも初日にみんなの前で噛むとか、ちょっとかっちょ悪い。
光希ならきっと、しれっと完璧にこなしちゃうんだろな。
「あ、そう言えば佐野先生に桃也さんとかぁ君は元気ですか?て聞かれたよ。」
今思えば、緊張でガッチガチのあたしを和ますために話しかけてくれたんだろうて。
「何だ、佐野先生が担任なのか?」
桃也が毅流を見るとコクッと頷いた後、
「しかも体育は翔ちゃんだよ、本人から直接言われたから。」
言葉を繋げた。
「翔ちゃん?」
だいぶ親しげだが何者?
「あ~、桔梗は翔ちゃん何て言われても分からないよねぇ、翔ちゃんは体育教師であり、ボクの友達のお兄ちゃんなんだよ。」
「あ、そゆこと。」
「そそ、前は家にもよく遊びに来てたしねぇ、勿論事前に桔梗のことよろしくぅ、て連絡しておいたよぉ。」
「それは…。」
何か申し訳ねぇ。
「ちなみに海斗兄、翔ちゃんに何て言ったの?」
「え?桔梗をよろしくぅ、くらいにしか言ってないけどぉ、何かまずかった?」
「いや、まずくはないんだけど…翔ちゃんてたまに的外れなことしたり言ってくるから、大丈夫かなぁ。」
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