華と光と恋心

かじゅ

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第2話 前途多難?学園生活

首謀者なんですけど…

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 今日も今日とて直帰して真っ直ぐリビングに入ると、
「何か久々過ぎて、逆に新鮮に見えるな、この光景。」
デリバリーのピザを広げている家族を見て桃也が言った。
桔梗がこの家に来てからと言うもの、結局毎日朝昼晩と、桔梗の手料理を食べていたため、少し前まで当たり前だったこのデリバリー風景が逆に新鮮に見えたりしてしまった桃也。
「手ぇ洗ってこっち座って食べなさい、今日桔梗ちゃん大変だったのよ。」
「そうなのか?」
荷物をソファに起き、キッチンで念入りに手を洗った後冷蔵庫からビールを取り出してから着席。
プルタブをプシュッと開けビールをひとくち飲み、ピザを手にしながら
「で、桔梗はどうした?」
と聞くと、静音が学校で起きた事件を詳しく説明。
「はぁ?何だよそれ危ねぇな、業者何やってたんだよ。」
「まぁさっき業者のお偉いさんも謝罪に来られたんだけど、ちょうど業者さんたち休憩中の事故だったし、他に犯人がいたみたいでね。」
「はぁっ?犯人っ?それもう事故じゃなくて事件じゃねぇか!」
「まぁまぁ兄貴落ち着いてぇ。」
「てかその桔梗と毅流はどうした?桔梗は無事なのかっ?」
「無事無事~、みんなこの程度で大袈裟だって本人が言ってるくらいだよぉ、夕飯も作るって言ったんだけど流石にそれはねぇ、今応接間で首謀者と話し合ってるよぉ。」
「なぁにぃっ?!どういうこった?!」








 と言うことでこちらは黒岸家の応接間。
桔梗、毅流が並んで座る向かい側には伊織、撫子に挟まれて見知らぬ女子が座っていた。
この革張りのソファ、校長室にあったのより多分…高級だな!
まったく場違いなことを考えている桔梗の隣で、毅流は女子を見て溜め息をついた。
「毅流どした?」
「いや、まさかとは思ったけどホントに梅山さんだったとは…。」
梅山…あっ、この真ん中の子の名か?
2人に挟まれた状態で座り、俯き加減の女子。
「名前は梅山優奈うめやまゆうな、隣のクラスだから桔梗が知らないのも無理はないわ。」
「隣のクラスの梅山さん、何故に面識のないあたしにペンキ缶を?」
「まぁ簡単に言うと嫉妬ですわ。」
「嫉妬?どゆこと?」

説明しよう!
ツインテールの似合う、見た目だけならそこそこ愛らしい少女、梅山優奈は小さい頃から、蝶よ花よと育てられた上、モテモテでもあったため、いつしか
自分はプリンセス、プリンセスには相応しい王子様が現れるハズ。
だから王子様が現れるまで待ってなくちゃ。
と、ちょっとイタ…もとい、夢見がちな少女に育ってしまった。
そんな優奈が高校に入学してすぐ、自転車で登校中に前輪を溝にハメてしまい立ち往生しているところに、
「大丈夫?」
颯爽と現れた(実際はたまたま通りかかっただけ)毅流に助けられ、
この人こそあたしの王子様だわ! とイタ…げふん、大いなる思い込みを発動させ、その日のうちに毅流に告白。
だがしかし!
賢明な諸君なら分かっておいでだろう!
そうである!
毅流の好きなタイプはイケメン女子!
何なら優奈とはまるっきり真逆なタイプ。
毅流は考える余地もなく
「悪いけど君とは付き合えない、ごめんね。」
とその場でハッキリお断りをしたのだが、
はっ!
あたしみたいな可愛いプリンセスが目の前に現れた上に、いきなり愛の告白何てしたから照れてるのねぇっ!
と、勘違いスキルを発動させ、そこから優奈はずっと毅流に定期的に告白しては振られていた。
しかしそれだけでは飽き足らず、毅流本人非公認のファンクラブを設立。
とは言ってもこのファンクラブ、毅流のファンクラブとは名ばかりで活動内容は
偶然を装って毅流と運命的な出逢いを繰り返し、最終的には自分のプリンセスは優奈なのだ、と自覚させる。
というもの。
活動内容的には毅流の、と言うよりも優奈を支えるファンクラブと言っても過言ではないだろう。
とにかく毅流は優奈に再三つきまとわれ、実害はないものの流石に辟易してしまった。
そこで学校側も考え、進級する際に毅流と優奈を別々のクラスにして様子を見ようということになった。
と言っても、勘違いスキルを装備している優奈にとってはクラスが違う程度、愛の試練だと思い込み更に気合が入ってしまった。
そんな優奈に入ってきた情報が、
春休み明けに女子が転入してくるらしいが、その女子、あろうことか黒岸家に居候しているらしい!
というもの。
冗談じゃないわ!
毅流君はあたしの王子様よ!
変な勘違いする前に思い知らせなくちゃ!

まぁ要は、
勘違いイタイ子ちゃんが桔梗に嫉妬して、思い知らせるために嫌がらせしようとしたら、大事件になっちゃった!
ということである。
以上!

「あぁ、そぅ…。」
毅流が好き過ぎちゃって暴走しちゃったんかぁ。
毅流、罪作りだな。
「ほら梅山さん!ちゃんと謝りな!」
「そうですわ、桔梗が被害届を出すことになったら貴女犯罪者ですよ。」
「ひぃっ。」
ホントにひぃっ、て言う子いるんだなぁ。
何て完全に的外れまくりなことを考えてる桔梗を、真っ青な顔で見つめ、カタカタ震えながら
「ごごっ、ごめんなさいっ、ほんのちょっと怖い思いすればいいと思っただけなのっ、怪我させよう何て思ってなくて、ホントにごめんなさいっ!」
頭を下げる優奈。
愛は盲目だな、もう毅流しか見えてなくて暴走して、結果あの暴挙に出ちゃったんだろうて。
まぁそんな暴挙に出なくても、あたしは毅流のタイプじゃないし、それは梅山さんも同じなんだけど。
「まぁまぁ顔上げて、別に怒ってないし怪我も大したことないし、とにかくあたし以外が巻き込まれなくて良かった、でももうあんな危ないことしたら駄目だよ。」
「えっ…じ、じゃあ。」
「まぁ、愛は盲目って言うし、想いが暴走しちゃうこともあるんだろうし、でも二度と暴走はしないでね、許すのは今回限り、必要以上に…。」
こっちに関わらないでね。
と言葉を繫げようとするより早く、優奈がいきなり凄い勢いで立ち上がる。
「ぬ?何だ?」
「やっぱり…やっぱりやっぱり川野辺さんがあたしの王子様なのねぇ!」
……………………………………。
「はぁっ?!」







 話し合いが終わり3人が帰宅したため、リビングに戻った桔梗と毅流はピザを食べ始めたのだが、
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ。」
流石の桔梗も盛大な溜め息をついた。
「要は毅流から桔梗に鞍替えしたってことぉ?」
「まぁ…単純明解に言うとそうだね。」
俺への被害は無くなるわけだけど、ターゲットが桔梗になっただけで問題解決したわけじゃないからなぁ。
「王子様って桔梗は女だぞ。」
「兄貴ぃ、ああいう子は性別の概念より自分の理想を優先させる便利な生き物なんだよぉ。」
「はぁ、そういうもんか?」
俺にはさっぱり理解出来ねぇ。
「とりあえず今回の件で被害届出さない変わりに、岩池さんと寶井さんが一緒じゃない限り、桔梗には近付いちゃ駄目って約束させた。」
「でも何でその女、桔梗が王子様何て言ってんだ?」
桃也の問いに桔梗はもう1度溜め息をついてから答えた。
「目、見られてた。」
「目ぇ?」
「あのとき頭からペンキかぶったせいで前が見えないから前髪かきあげてオールバックにしたんだけど、考え事してたから目付き悪かったみたいで…。」
「寶井さんも見たらしいんだけど、鋭い眼差しで滅茶苦茶かっこよかったって。」
「良く言い過ぎだ、ありゃ考え事してたから目付き悪かっただけ。」
昔から光希に、
考え事してるだけで目付き悪くなる何て損な顔だな。
て言われてたし。
「仲間に足場を揺するように指示して、自分はいいトコで桔梗が痛い目に遭うところを見物してたらしいんだけど、そのときにその目を見てハートを射抜かれたんだってさ。」
「何なの?その子はあたしたちと違う時空で生きてる子か何かなの?」
思わず静音も呆れ返る。
「転入早々前途多難だねぇ桔梗。」
「うぅ~ん。」
「でもほらっ、桔梗には俺も付いてるし岩池さんと寶井さんていう強力な友達だっているし、もしものときは佐野先生だけじゃなく翔ちゃんも力になってくれると思うし、ねっ?」
「今度何かあったら俺と静音が校長先生に直接相談に伺うっていう手もあるんだから、何かあったらすぐに言うんだよ?」
「うん、ありがとう。」
はぁ…何かホントに大ゴトになりそうだな。
光希、早く来てくれないかな…。
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