華と光と恋心

かじゅ

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第4話 好きなヒト

楽しい課外授業

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 ドアを開けてリビングに入る。
「あ、おかえりなさい。」
「ただいま、賑やかだな。」
桃也から荷物を受け取ったのは勿論桔梗。
桃也は桃也で、言われる前にきちんと手を洗う。
「桃也さん久々。」
「何だテルか、久々だな、てことは他の友達ってのは…。」
「うんそう、奥のソファに座ってるのが祐翔、ギター担当で、毅流の隣に座って対戦してるのがベース担当の和誠、よろしくね。」
「おぅ、てあれ?ドラムの子は来てないのか?」
「実は色々あって脱退したんだ、まぁ円満退社みたいなものだよ。」
「そっか…。」
あいつホントにバンドのことは言わねぇからなぁ。
1人で抱えらんねぇことくらい、話してくれてもいいんだけど…。
「テル~、お前の番だぞぉ。」
祐翔に声を掛けられ「はいはい。」と答えて
「あとで2人に挨拶来させるから。」
と言うとソファの方に向かった。
桃也が椅子に座ると、すぐに桔梗が桃也の分の夕食を並べ、特製ジュースをコップに注ぐ。
「ありがとな、あとは自分でやるから向こうでみんなとゲームの続きしてこいよ。」
「大丈夫、まだ回ってくるの先、ここにいる。」
と言っていつもの自分の席、桃也の隣に座る。
「無理してない?疲れてる。」
「もしかしてそれに合わせてジュース作ってくれたか?」
「流石、鋭いね。」
いや鋭いのはむしろお前だろ。
「いつもありがとな、無理はしてねぇけど疲れは多少な、俳優業はまだまだ慣れてねぇから。」
ペース配分が上手くいかん。
「無理はまだしも無茶は駄目だ。」
「分かってるよ、ありがとな。」
頭をポンポンすると、嬉しそうにニコニコした。
「桃也さんの手ぇデカい、そして温かい。」
「そうか?」
デカいのは分かるが温かいか?
「桃也さんの温もり、的な?」
「何だそりゃ。」
笑い飛ばす桃也を見て内心ホッとする。
良かった、普通に笑ってる。
笑えるってことはまだ、心に余裕があるってことだ。
もぉにぃたん慣れない仕事でも、何とか頑張ろうと無理しそう。
ちゃんとケアせねば。
「このアジの南蛮漬け美味いな。」
「あざっす!いいアジが手に入ったんですよ旦那。」
「何だよその喋り方~!お前たまにおもしれぇ喋り方んなるよな。」
「そかな?」
「ああ、おもしれぇよ、だからそのままでいてくれよ。」
「その方が桃也さん嬉しい?」
「うんまぁ、そうだな、楽しませてもらってるし。」
ある意味癒しにもなってるかも。
「ならば精進します。」
「はい、よろしくお願いします。」
と言って笑い合う2人を見て、輝は海斗を軽く肘でつつく。
「なぁにぃ?」
「あれってそういう関係?」
「そうなってもおかしくないかなぁ、ていうくらいなんだけどぉ、今のところ何も起きない鈍い関係~。」
「お前楽しんでんなぁ。」
「やだなぁ、優しく見守ってると言ってよぉ。」
「へいへい。」
どう見たって楽しんでんじゃん。
海斗と輝がそんな会話をしているとは知らず、桃也と桔梗の会話は続く。
「初めての課外授業?ああそうかもうそんな時期だったか、今回は何処だ?」
「桃也さんがCMしてるあのテーマパーク。」
「あそこか。」
ん…?待てよ。
「課外授業いつだ?」
「来週の金曜日。」
「なるほどな、分かった。」
ん?何がなるほど?
「何か桃也さん、企み?」
「そんな物騒な言い方すんなよ、それよりGWに買いに行った服着てくのか?」
「そのつもりだが、ちと迷ってる。」
「そうなのか?」
「うん、あんなにたくさん買ったから、どれにしたらいいか迷う。」
「何だそんなことか、だったら俺が選んでやるよ、いいだろ?」
「うん、まぁ…。」
もぉにぃたんならハズレないだろうし。
「お願いします。」
「桔梗~、次桔梗の番だよ。」
毅流に呼ばれ「は~い。」と答えながら立ち上がる。
「桃也さんも食べ終わったら一緒する?」
「そうだな、楽しそうだしいい息抜きにもなりそうだし。」
あとの2人のメンバーも紹介してもらいてぇし。
「食べたら行く。」
「ん、待ってる。」






 海斗に
「どうせならもう泊まっちゃいなよ~、帰るの面倒でしょ?」
と言われたときは3人とも
「いやいや夕飯だっていきなり押し掛けて状態だったのに、止まる何て流石にそれは図々しいだろう。」
と言って断ろうとしたのに、
「あ、もう客間に布団3人分用意して各々のお客様用パジャマ用意してしもぉたよ。」
「じゃあ今テルたちが帰ったら、桔梗のおもてなし無駄になっちゃうね~。」
「毅流も手伝ってくれたのに無駄になっちゃうなぁ。」
という駄目押しをされて、結局泊まることに…。
お風呂から上がり、桔梗の手作りデザートを振る舞ってもらい、
とりあえず客間行くか。
ということになり、客間でビール片手に話していると、
「今夜はボクもここに寝まぁ~す、よろしくねぇ。」
と、布団一式を持って海斗が乱入。
で、現在に至る。
「桔梗ちゃんて思った以上におもしれぇ子だな。」
会いに来て正解だったな。
「面白いし飯も美味かったし。」
「底知れない。」
「ちょっとカズぅ、物騒な言い方しないでよぉ。」
「褒めてる。」
「そう?ならいいけどぉ。」
「それはそうと…桔梗ちゃんと桃也さん、興味深い。」
「いい雰囲気なのにな、本人たちはまったくそう思ってない。」
「俺、付き合ってんだと思った。」
「ヒロだったらそう見るよね。」
「お前、イトコじゃなかったらぶってるからな。」
「すぐに乱暴に訴えるのは良くない。」 
「だったらいちいち俺を馬鹿にすんな!」
「ヒロ、お前こん中でカズとの付き合い1番長いのに、お前が1番慣れてないよな。」
「だよねぇ、カズに悪気ないじゃない。」
「分かってらぁ!分かってるけどムカつくんだからしゃあねぇだろぅ!」
そうやってすぐ熱くなるとこ、嫌いじゃないよ、て言ったらキレるな。
「ヒロ、とりあえず努力する。」
「はぁっ?何をだよ?」
「色々。」
「色々ぉっ?」
「うん。」
頷く和誠を見て溜め息。
まぁさ、こいつの面倒見られんの俺くれぇだろうしな。
「わぁったよ、どうせ腐れ縁だしよ
、色々な努力、見てやんよ。」
「うん、見てて。」
「あ、そういや話変わるけど、課外授業そろそろだったよな?」
輝に言われ、そう言えば…となる。
ちなみに祐翔と和誠も同じ高校出身で、年齢は海斗たちの1つ上。
大学は海斗たちとは別だが、そんなに離れてもいないのでバンドのミーティングなどで集まる場合は、今日利用したカフェ近辺で集合している。
「そうそう、あのテーマパークらしいよぉ、あそこの観覧車からの夜景、綺麗なんだよねぇ。」
「誰かと乗った?」
「ボクじゃないよ~、テルが。」
「あぁ、由梨亜ちゃんとね。」
「やるなぁテルぅ!」
「茶化すな。」
由梨亜とは坂本由梨亜さかもとゆりあと言って、輝の恋人であり海斗とは腐れ縁。
ライブの際には輝のサポートにも入ったりもするので、メンバーとも仲良しである。
「ちなみに今日のこと、由梨亜には黙っておけよ、絶対あいつ怒るから。」
「どうしてあたしだけ置いて行ったの~!行きたかったのにぃっ!的な?」
「あぁ、実はあいつも桔梗ちゃんに会いたいって言ってるからな、お前たちも黙ってた方がいいぞ、先に桔梗ちゃんに会った何て言ったらやっかまれるぞ。」
「ぜってぇ言わねぇ。」
「ああ見えて空手有段者。」
「ねぇ~、ただ巨乳なだけじゃないもんねぇ。」
「それ言ってぶっ飛ばされないのお前だけだな。」
「そりゃボクとテルと由梨亜は腐れ縁だしぃ?」
「だからこそ呆れてもうツッコミ入れる気力もないだけだろ。」
「次は誘おう。」
「だな、次こそ誘わねぇ上に後々バレたら血を見んぞ。」









 その頃桃也は桔梗の部屋に来ていたのだが…。
「これ…?」
「何だよ不満か?でも選んでくれって言ったのはお前だろ?」
あぁ、そこ突かれると痛いっす。
「う~ん…。」
まぁ課外授業だし見学だし、そんな激しく動くこともないだろうし…。
「俺はこのワンピース、いいと思うぞ。」
桃也が選んだのは初夏にピッタリの白地に花柄のワンピース。
「これ試着したときも思ったけど、似合ってたぞ。」
「そ、そう?」
「ああ、だからスカートも履いたらどうだ?お前普段スカート履かないだろ。」
「バレていたか…。」
あんま慣れてないんだよね。
「似合ってるし問題ないし、俺はお前のスカート姿も見たい。」
「あ、あぁ、うん、分かった。」
もぉにぃたんのストレートな言葉、たまにドキッとする。
他の女性にもこんな感じ?
てか…。
もぉにぃたんの彼女って、翻弄されとるだろうな。
「ぬ…?」
何だ?今の…。
「どうした?まだ不満か?」
だったら天気悪かったときバージョンも考えといた方がいいのか?
「いや、何か胸が…。」
ズキンと傷んだ。
病気か?
「もぉにぃたん。」
「どうした?」
「とりあえずこのワンピースにするけど、雨降ったバージョンも一応選んでほしい。」
「俺も今同じこと考えてた。」
ニッカリ笑う桃也を見て、胸がほんわか温かさに充たされる。
もぉにぃたん、癒し…。
さっきの痛みは何だったんだろう?
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