華と光と恋心

かじゅ

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第5話 仄かな想い

打ち上げでのサプライズ

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 -bule-が打ち上げでよく使うお店は、由梨亜の兄が経営しているイタリアンのお店。
毎日かなりの賑わいで忙しいところに、毎回個室で打ち上げを行うため更に忙しくなってしまう。
そのため打ち上げの日は、由梨亜がヘルプで入るのだ。

駐車場に車を止め、店の入り口を見ると、先に着いていたシュウが入り口脇でタバコを吸っていた。
シュウは海斗たちに気付くとタバコを灰皿に押し付け、タタタタ~と駆け寄って来た。
「すみません待たせて。」
「大したことないよ、さっき着いたばかりだし、ちょうど電話かかってきたから外にいただけだから。」
と行ってフードを外す。
「とりあえず今日は裏口から…、裏口なら個室に直接行けるんで、海斗頼む。」
「はいは~い、皆さんこちらです、ボクが案内しまぁ~す。」
海斗が全員を連れて行く中、輝は素早く電話をかけた。
「今着いた、さっき言った通り目立たないように裏口から入るよ、じゃあ店で。」

個室に入り席に着くと、すぐに由梨亜と男性が料理と飲み物を持って来た。
「誠さんいつもすみません。」
「いいよいいよ、俺も-bule-のファンだからな、打ち上げしてもらえるのはありがたい。」
「こちらは誠さん、このお店のオーナーシェフかつ由梨亜のお兄さんなんだ。」
桔梗と光希はペコッとお辞儀する。
「君が桔梗ちゃん?」
「はい。」
「なるほど、由梨亜が最近君のことばかり話すのも分かるくらいキュートだね。」
「きゅっ!」
キュートとな!
初めて言われたぞ!
「桔梗気を付けてね~、マコちゃんは口説き上手だから。」
「お前にだけは言われたくない。」
「ボクは口説かれる方ですぅ、それにそういういい加減なのは卒業致しました。」
「それ由梨亜に聞いた。」
イマイチ信用してねぇけど。
「今日は急に参加してしまいすみませんでした。」
シュウはそう言って頭を下げた。
「構いませんよ、賑やかなの好きなので、ただうちの味がお口に合うといいんですが。」
「俺イタリアン大好きなんで大丈夫です。」
「ありがとうございます。」
とりあえず桔梗、光希以外は最初の一杯はビールにして、
「今日は祝杯でもあるから、3人の一杯目は特別なノンアルシャンパンどうぞ。」
「ありがとう由梨亜さん。」
「ありがと由梨亜~。」
本日運転手の海斗も勿論ノンアルシャンパンです。
「光希ちゃんよね?あ、ちゃん付け駄目なのよね、あたし由梨亜、よろしくね、て言うか大丈夫?」
「はい、何とか…もう少しでマシになると思うんで…!」
輝が光希はシュウ推しって言ってたから、まだ緊張してるのね、可愛い。
「それじゃ乾杯と行くか、ヒロ頼んだ。」
輝が振ると、祐翔は
「皆さんグラスをどうぞぉ!」
とまずは自分がグラスを掲げて見せた。
それを見て全員がグラスを掲げると、
「今夜の新生-bule-のライブ1発目大成功!これも皆さんのおかげであり、俺らの努力の賜物であります!お疲れ様でした!それでは乾杯!」
「かんぱ~い!」







 打ち上げも中盤に差し掛かり、
「そうそう、みんなに伝えたいことがあって来たんだ。」
これ忘れたら本末転倒だ。
「来月スタジアムで俺たちのツアーファイナルがあるのは知ってる?」
「勿論、光希は先行予約で惨敗しましたから。」
「思い出させないでくれよ。」
「それならちょうど良かった、実はみんなをそのライブと、ライブ終わりの打ち上げに招待したくて来たんだ。」
「えええええっ!」
「マジっすか!」
光希と祐翔が一気に興奮する。
「関係者席だけど、まだまだ余裕あるし、もし友達とか誘いたかったら誘ってもいいよ、だから今日無理に返事は聞かない。」
「あ、じゃあ連絡先交換してもいいですか?決定したらお知らせしたいんで。」
「そうだね。」
輝とシュウがスマホで連絡先を交換している中、和誠もスマホを取り出す。
「俺とも交換、テル忙しいときあるから。」
「分かったいいよ。」
そう言って和誠とも快く交換。
「それで…前々から俺たちのライブに来てたのに、どうして今になって招待何てするんですか?」
和誠の問いにシュウは苦笑してから言った。
「実はメンバーがねぇ…。」
-bule-をチェックしていたのは、何もシュウだけではない。
それはrunaの他のメンバーも同じこと。
そこに来て今夜は新生-bule-の初ライブ。
「前々から他のメンバーも来たいって言ってたんだけど、俺が止めてたの、俺1人ならまだしも、お前たちまで行ったら絶対にバレちゃうだろって。」
結果的に俺1人でも多少バレちゃってはいたけども。
「俺が今夜も行くって言ったら、とうとう他のメンバーがもう我慢の限界だって不満を爆発させちゃってさ、だったらまずは-bule-のライブを見に行くんじゃなく、俺たちのライブに来てもらおうよって、それで何とか納得させたんだけど、ここに着いてみんなを待ってたときに、リョウから確認の電話が入って、これから打ち上げだからそこで伝えるって言ったら、何でお前だけってそれはそれで怒っちゃって。」
と説明してあはははぁ、何て笑って見せる。
「だからみんなには是非来て欲しいんだ、俺のためにもね。」
「何があっても俺絶対行きます!俺リョウさんみたいなギタリスト目指してるんで!」
「ありがとう、それリョウに直接言ってあげて、喜ぶから。」
「マジっすか!絶対伝えます!」
「あたしも喜んで行かせてもらいます。」
ユキヤさんのドラム、生で聴ける何てチャンス、そうそうないし。
「あたしと光希も勿論行きます、でも誘いたい人がいるんで…。」
「構わないよ、その人たちが来られるかどうか分かったら、テル君から連絡もらえばいいし。」
「ありがとうございます。」
毅流は光希が誘うとして…。
もぉにぃたん、誘ったら来るかな?
「ボクもテルも勿論行きますよ~、こんなチャンス滅多にないしぃ、由梨亜はどう~?」
「えっ!あたしもいいのっ?いいなら絶対行きます!」
「ありがとう、それで…。」
シュウは隣に座る和誠に目を向ける。
「カズは来てくれるの?」
「聞かなくても分かるでしょう?」
フッ…と笑う和誠を見て内心ドキッ、としてしまう。
「勿論行きますよ。」
「あ、ありがとう…。」
少し切れ長の目で、綺麗な顔立ち…。思わずドキッとしちゃった。








 runaのライブに招待されたことによりハイテンションになった面々、招待に応じてもらえ、ハイテンションになったシュウはかなり酔っ払っていた。
「みんな凄いな。」
驚いている光希に、
「いつもはここまで酷くはないのよ、ただ今夜は新体制ライブが成功した上にrunaのライブに招待してもらえたから、タガが外れちゃったのかも。」
本日は一滴も飲んでいない由梨亜が説明した。
「かぁ君も普段はあっち側?」
「やだな桔梗~、ボクの飲み方はもっとスマートだよぉ。」
「由梨亜悪い、若葉のトイレ付き添ってやってくれ、ペース崩して飲んだみたいだ。」
「分かった。」
由梨亜が若葉をトイレに連れて行くのを見送ってから、
「分かったからもう落ち着け、泣くなみっともない。」
輝は酔って泣いている祐翔をなだめる。
「ヒロさん泣き上戸?」
「普段はそんなことないんだけどね~、リョウに会えるのが嬉しいんじゃない?ヒロの憧れだものぉ。」
「なるほど、まぁ…気持ち分かる。」
「お前の推しだもんな。」
「そうなのぉ?」
「うん、あのパワー系ギター最高。」
「そうなんだぁ?」
きっと桔梗、兄貴を誘うんだろうなぁ。
楽しくなりそう。

「カズくぅ~ん。」
すっかり出来上がったシュウが和誠にしなだれかかる。
「さっきまで呼び捨てだったのに君付け?甘えてる?」
アルコールにめっぽう強い和誠が冷静に言うと、何処かふてくされた顔でじぃっと見てくる。
「何?」
「カズ君だって敬語止めてるじゃん。」
「距離縮めたいからだけど、駄目?なら止める。」
「そのままでいい。」
「そう?」
何かカズ君余裕。
「狡い。」
「どうして?」
「だってカズ君余裕綽々なんだもん?」
「そう見える?」
「見える。」
なるほど、だからふててるのか。
「これでもギリギリなんだけど。」
「嘘だぁ。」
「俺の本心知ったらそんなこと言えなくなるよ。」
「本心…?」
カズ君の本心て…。
「俺の本心、聞きたかったら覚悟してね。」
意味深に笑う和誠を見て、シュウの奥底で何かがゾクリと震える。
「それまでは内緒、ね?」
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