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第7話 深まる溝とすれ違い
綺麗なヒト
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runaのライブから3日後…。
未だ桔梗と桃也はギクシャクしていた。
今日は賢吾が所属しているサッカー部が、校内グラウンドにて練習試合。
彼女である伊織が応援に行くと言うのでその伊織に撫子が付き添い、毅流は親友の応援。
そこで桔梗と光希は差し入れを…。
というわけで、サッカー部に特製ジュースと手作りレモンのハチミツ漬けを差し入れし、2人はそのまま職員室に来ていた。
「あら川野辺さんに狭霧さん。」
「佐野先生こんにちは。」
挨拶する光希の隣で桔梗は大きなバッグをガサガサ。
「川野辺さん?」
「夏休みでも頑張ってる先生に差し入れ、甘いけど無糖のシュークリームと、疲れも吹っ飛ぶ特製ジュース。」
「あらありがとう、とても美味しそうなのに無糖なの?」
「はい、研究に研究を重ねて作りました。」
「川野辺さんはいいお嫁さんになるわね。」
実里がニッコリ笑って受け取っていると、
「俺の分はっ?」
実里の向かいの席で作業していた翔が、我慢出来ず催促してきた。
「ある。」
再びバッグをガサガサして翔に同じ物を手渡す。
「ついで。」
「ついでか~い!でも嬉しいから許す!」
美味そうだし!
「あれ?これ…。」
そんな中、光希が実里のデスクで何かを見つける。
「ん?」
光希の隣に並んで目線を辿ると…。
「これ、桃也さん…?」
「ええそうよ、これは桃也君が2年生のときに撮った写真。」
写真立てに入った写真の中では、今よりあどけない桃也が、得意げに優勝旗を持っていた。
「この人、綺麗…。」
桔梗の視線は桃也の隣に写る女性に釘付けになる。
正確には写真には実里、桃也、そしてその隣には綺麗な女生徒と可愛い女生徒が写っていた。
桔梗が釘付けになったのは桃也の隣に写る女生徒。
1番右に写る女生徒の可愛さもさることながら、桃也の隣に写る女生徒は、透き通る白い肌、輝く笑顔、長い黒髪はサラサラかつ太陽の光でキラキラして見える。
桔梗が前髪の隙間から見ても、充分に綺麗な女生徒。
「この2人は遠野花蓮さんと崎島真雪さん、親友同士でいつも一緒にいたの、今の貴女と狭霧さんみたいにね。」
「花蓮さん…。」
何だろう、胸がザワつく…。
「何か…。」
桃也さんとこの花蓮さんて人、距離近くないか?
嫌な予感が…。
「桔梗、そろそろ…。」
光希が嫌な予感に捕われ、桔梗を連れて行こうとしたが…。
「桃也と遠野も残念だったよなぁ。」
翔の言葉に桔梗がピクッと反応。
「残念…?」
「桔梗、伊織たち待ってるからそろそろ行こうぜ。」
ヤバい、これ多分ヤバい、今の桔梗に聞かせたくねぇ…!
「待って、松岡先生今のどういう意味?」
余計なこと言うなよ…!
という意味を込めて光希がギンッ!と睨んだところで、あっけらかんな翔には気付かれず…。
「桃也と遠野は付き合ってたんだよ、美男美女で誰もが羨むカップル、そこに来ていつも2人は学年トップ争ってたんだぜぇ、2人は周囲に認められたカップルだったのに、卒業と同時に別れちまったんだよ、何があったか知らないけど、桃也ももったいねぇことしたよなぁ。」
「佐野先生…!」
「大丈夫よ狭霧さん、貴女の気持ちは分かったから、でも今は川野辺さんを落ち着かせてあげて?」
「はい、じゃあ後は任せます。」
「えぇ、完膚無きまでにけちょんけちょんにしてあげるわ。」
「あざっす、行くぞ桔梗。」
呆然とする桔梗を、半ば引きずるように職員室を出た。
「松岡先生、そのシュークリーム美味しい?」
「ええ滅茶苦茶、佐野先生も食べた方がいいですよ。」
「貴方二度と差し入れしてもらえないでしょうね。」
「へっ!何で?」
俺何かしたかっ?
「松岡先生、そんなだからいつまで経っても彼女も出来なきゃモテもしないのよ…!」
「えええっ!」
「うちの生徒傷付けた罪は重いわよ、覚悟なさい…!」
耳鳴りがする…。
胸が締め付けられて痛い…。
あの人がきっと、もぉにぃたんの初めての人…。
遠野花蓮さん…。
凄く、綺麗な人…。
もぉにぃたんはあんなに綺麗な人と付き合ってたんだ。
笑顔も素敵で、性格も良さそうな感じだ。
もぉにぃたんの隣に並んで、お似合いで…もぉにぃたんの隣に立つに相応しい…。
「桔梗っ!」
大声で呼ばれ、急に腕を掴まれ止められる。
「え…?」
「昇降口過ぎてる、何処まで行くつもりだ?」
「あ、ごめん…。」
「いいけど…。」
この調子だと職員室からの道すがら、あたしが言ったことなど耳に入ってなかったんだろな。
たく…松岡の野郎…!
「で、どうしたんだよ?」
「え…あ…何か…。」
歯切れが悪い桔梗が靴を履いてる隣で、光希も靴を履くと外に出る。
「さっきの花蓮さんの話聞いておかしくなったんだろ?」
無言で光希を見た後、うつ向いてしまう。
「言ってみろよ。」
「…。」
光希を見つめ、再びうつ向いた後、重い朽ちを開いた。
「耳鳴りがする…でもそれよりも、胸が痛いんだ…締め付けられて…こんなこと初めてで…。」
「桔梗。」
名前を呼ばれ、顔を上げて前髪の隙間から光希を見つめた。
「それが恋だよ、恋の痛みだ…。」
光希の言葉に
「違う…。」
そう言いたいのに、言葉が喉の奥に詰まって出てこない。
あたしが、恋?
もぉにぃたんに…?
そんなの…戯れ言だ…。
呆然とする桔梗、桔梗を見つめ続ける光希の間を、やけに乾いた風が吹き抜けていった…。
未だ桔梗と桃也はギクシャクしていた。
今日は賢吾が所属しているサッカー部が、校内グラウンドにて練習試合。
彼女である伊織が応援に行くと言うのでその伊織に撫子が付き添い、毅流は親友の応援。
そこで桔梗と光希は差し入れを…。
というわけで、サッカー部に特製ジュースと手作りレモンのハチミツ漬けを差し入れし、2人はそのまま職員室に来ていた。
「あら川野辺さんに狭霧さん。」
「佐野先生こんにちは。」
挨拶する光希の隣で桔梗は大きなバッグをガサガサ。
「川野辺さん?」
「夏休みでも頑張ってる先生に差し入れ、甘いけど無糖のシュークリームと、疲れも吹っ飛ぶ特製ジュース。」
「あらありがとう、とても美味しそうなのに無糖なの?」
「はい、研究に研究を重ねて作りました。」
「川野辺さんはいいお嫁さんになるわね。」
実里がニッコリ笑って受け取っていると、
「俺の分はっ?」
実里の向かいの席で作業していた翔が、我慢出来ず催促してきた。
「ある。」
再びバッグをガサガサして翔に同じ物を手渡す。
「ついで。」
「ついでか~い!でも嬉しいから許す!」
美味そうだし!
「あれ?これ…。」
そんな中、光希が実里のデスクで何かを見つける。
「ん?」
光希の隣に並んで目線を辿ると…。
「これ、桃也さん…?」
「ええそうよ、これは桃也君が2年生のときに撮った写真。」
写真立てに入った写真の中では、今よりあどけない桃也が、得意げに優勝旗を持っていた。
「この人、綺麗…。」
桔梗の視線は桃也の隣に写る女性に釘付けになる。
正確には写真には実里、桃也、そしてその隣には綺麗な女生徒と可愛い女生徒が写っていた。
桔梗が釘付けになったのは桃也の隣に写る女生徒。
1番右に写る女生徒の可愛さもさることながら、桃也の隣に写る女生徒は、透き通る白い肌、輝く笑顔、長い黒髪はサラサラかつ太陽の光でキラキラして見える。
桔梗が前髪の隙間から見ても、充分に綺麗な女生徒。
「この2人は遠野花蓮さんと崎島真雪さん、親友同士でいつも一緒にいたの、今の貴女と狭霧さんみたいにね。」
「花蓮さん…。」
何だろう、胸がザワつく…。
「何か…。」
桃也さんとこの花蓮さんて人、距離近くないか?
嫌な予感が…。
「桔梗、そろそろ…。」
光希が嫌な予感に捕われ、桔梗を連れて行こうとしたが…。
「桃也と遠野も残念だったよなぁ。」
翔の言葉に桔梗がピクッと反応。
「残念…?」
「桔梗、伊織たち待ってるからそろそろ行こうぜ。」
ヤバい、これ多分ヤバい、今の桔梗に聞かせたくねぇ…!
「待って、松岡先生今のどういう意味?」
余計なこと言うなよ…!
という意味を込めて光希がギンッ!と睨んだところで、あっけらかんな翔には気付かれず…。
「桃也と遠野は付き合ってたんだよ、美男美女で誰もが羨むカップル、そこに来ていつも2人は学年トップ争ってたんだぜぇ、2人は周囲に認められたカップルだったのに、卒業と同時に別れちまったんだよ、何があったか知らないけど、桃也ももったいねぇことしたよなぁ。」
「佐野先生…!」
「大丈夫よ狭霧さん、貴女の気持ちは分かったから、でも今は川野辺さんを落ち着かせてあげて?」
「はい、じゃあ後は任せます。」
「えぇ、完膚無きまでにけちょんけちょんにしてあげるわ。」
「あざっす、行くぞ桔梗。」
呆然とする桔梗を、半ば引きずるように職員室を出た。
「松岡先生、そのシュークリーム美味しい?」
「ええ滅茶苦茶、佐野先生も食べた方がいいですよ。」
「貴方二度と差し入れしてもらえないでしょうね。」
「へっ!何で?」
俺何かしたかっ?
「松岡先生、そんなだからいつまで経っても彼女も出来なきゃモテもしないのよ…!」
「えええっ!」
「うちの生徒傷付けた罪は重いわよ、覚悟なさい…!」
耳鳴りがする…。
胸が締め付けられて痛い…。
あの人がきっと、もぉにぃたんの初めての人…。
遠野花蓮さん…。
凄く、綺麗な人…。
もぉにぃたんはあんなに綺麗な人と付き合ってたんだ。
笑顔も素敵で、性格も良さそうな感じだ。
もぉにぃたんの隣に並んで、お似合いで…もぉにぃたんの隣に立つに相応しい…。
「桔梗っ!」
大声で呼ばれ、急に腕を掴まれ止められる。
「え…?」
「昇降口過ぎてる、何処まで行くつもりだ?」
「あ、ごめん…。」
「いいけど…。」
この調子だと職員室からの道すがら、あたしが言ったことなど耳に入ってなかったんだろな。
たく…松岡の野郎…!
「で、どうしたんだよ?」
「え…あ…何か…。」
歯切れが悪い桔梗が靴を履いてる隣で、光希も靴を履くと外に出る。
「さっきの花蓮さんの話聞いておかしくなったんだろ?」
無言で光希を見た後、うつ向いてしまう。
「言ってみろよ。」
「…。」
光希を見つめ、再びうつ向いた後、重い朽ちを開いた。
「耳鳴りがする…でもそれよりも、胸が痛いんだ…締め付けられて…こんなこと初めてで…。」
「桔梗。」
名前を呼ばれ、顔を上げて前髪の隙間から光希を見つめた。
「それが恋だよ、恋の痛みだ…。」
光希の言葉に
「違う…。」
そう言いたいのに、言葉が喉の奥に詰まって出てこない。
あたしが、恋?
もぉにぃたんに…?
そんなの…戯れ言だ…。
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