37 / 44
第7話 深まる溝とすれ違い
いらっしゃい
しおりを挟む
そびえ立つタワマンを前にして、桔梗は呆然としていた。
何じゃこりゃ!
バベルの塔か?!
あの日、リョウからの突然の誘いに、一瞬何が起きているか分からなかったし、理解してからは戸惑った。
しかし花蓮のことがあった後だった桔梗は、誰かにすがりたかった。
しかも自分のことを、あまり知らない誰かに…。
誘いのメッセの後、実際会う約束をしてあれやこれやと決めていき、リョウの自宅で会うことになった。
行きはたまたま車で出掛けるところだった海斗に乗せてもらった。
そしてタワマンを前にしたわけだ。
…にしてもまさか、リョウの自宅で会うことになるとは…!
エントランスに入りすぐに、部屋番号を入力してインターホンを押す。
[あ、良かった無事に着いたみたいだね、今自動ドア開けるから、中に入ったら奥まで進んで専用のエレベーターで来てくれる?そっちのロックも解除しておくから。]
「は、はい。」
専用のエレベーターとな?!
度肝を抜かれつつ自動ドアを抜けて奥へと進み、専用のエレベーターへ。
エレベーターに乗り込んだ桔梗。
うぅぅ、今更ながら緊張してきた。
大丈夫だろうかあたし、心臓飛び出ないかっ?
エレベーターを降りてすぐ、重厚な扉が開き
「いらっしゃい。」
迎えてくれたリョウ。
そこは2フロアぶち抜きの、恐ろしく豪華な自宅であった。
本日はモデルの仕事。
久々に冴子の店のモデルである。
「新作のイメージが桃也ちゃんにピッタリだったから頼んだのよぉ、引き受けてもらえて良かったわ、ありがと。」
「冴子さん相変わらず凝ったデザインすね。」
「うふふ、男性だって下着オシャレしたっていいでしょ?それより桔梗ちゃんは元気?」
「えぇまぁ…。」
一応普通には接してるけど、花蓮のことがあってから何だかわだかまりが…。
てかまだ何で桔梗が花蓮のこと知ってるか聞いてねぇし。
桃也が考えを巡らせていると
「付き合わないの?」
「は?」
冴子がいきなりなかなかの質問をブッ込む。
「だって下着選んでるとき、いい雰囲気だったわよ。」
「普通に選んでただけっすよ。」
「じゃあ質問、もし桔梗ちゃんが桃也ちゃんが選んだ下着を身に着けて、自分以外の男に抱かれることになったらどうする?」
「そんなこと…。」
「あり得ないって言える?」
あり得ないとは言い切れない。
今はあの家にいて、恋愛に興味ないようだけど、桔梗の世界はこれからどんどん広がってゆく。
あの家にいるのも、恋愛に興味がないのも、今だけかもしれない。
と言うより、今だけだろう…。
もしも冴子さんが言った通り、俺が選んだ下着を着けた桔梗が、俺の知らない誰かに抱かれることになったら…。
「嫌っすね、凄く…。」
「下着を見られるのが?桔梗ちゃんが自分以外の誰かのものになるのが?」
桔梗が誰かのものに…?
そんなん…。
「桔梗が誰かのもの何て、嫌っす…。」
「でも今のままだったら、桔梗ちゃんはそのうち誰かのものになることもあるわよ、色々考えるのも悪くはないけど、気付いたときには…何て後悔はしちゃ駄目よ、いつかはいなくなるとしても、今は貴方の目の前にいるんだから。」
「…はい。」
後悔してほしくない…。
気付いたときには…。
海斗にも言われたことを、冴子さんにも言われてしまった。
俺だって後悔したくない。
だからと言って桔梗を愛しているか聞かれたら、正直すぐに答えられない。
花蓮に未練があるわけじゃないし、桔梗に問題があるわけでもないが、今一歩が踏み出せない。
だからって桔梗が誰かのものになるのが嫌だ何て…。
俺はどれだけ我儘なんだよ…。
黒岸家にも負けないくらい、広いリビングのソファに並んで座り、
「はい、外暑かったでしょ?」
冷えたミルクティーを振る舞われる。
「あ、ありがとうございます。」
あ…そうだ。
「あ、あのこれ…。」
こんなんいらないかな…。
桔梗はオズオズとボトルに入れた特製ジュースを袋ごと手渡す。
「これは?」
「あの、前に雑誌のインタビューで、眠りが浅くて困っていると読んだので、よく眠れる特製ジュースをと思って…。」
「桔梗が作ってくれたの?」
「は、はい。」
いらないかな…。
「わざわざありがとう。」
満面の笑顔で言われてホッとする。
いらないって言われなくて良かった、この笑顔癒しだぁ。
「少し飲んでもいい?」
「は、はい。」
リョウはキッチンに向かいコップを取ると、すぐに戻って来て早速ジュースを注いでみる。
「凄い色だね。」
「あ、見た目はあれですけど、味は悪くないと…。」
「そう?凄いけど綺麗なグリーンだと思うよ、じゃあいただきます。」
と言ってまずはひとくち。
「桔梗。」
「はい…。」
もしや不味かったか!
「これ砂糖とか入ってる?」
「いえ、野菜だけで作ってます、不味かったですか?」
「そんなことない凄く美味しい!こんなに甘いのに野菜だけとか…桔梗はいいお嫁さんになるね。」
「ひょっ!」
お嫁さんとか!
「後は今夜じっくり飲ませてもらうね、ホントにありがとう、それより…。」
「はい?」
「俺に話したいこと、あるんじゃない?」
「あ…。」
「メッセしててもしかしてって思ったんだけど、もしあるなら話してよ、どんなことでもちゃんと聞くから。」
穏やかに微笑むリョウの優しさに触れ、桔梗は桃也とのことを話した。
「そう…その桃也君の元カノの花蓮さんだっけ?そんなに綺麗なの?」
桔梗は頷いてから口を開いた。
「誰が見ても美人だろうなって人で…花蓮さんなら桃也さんの隣を歩くにふさわしいって…。」
「花蓮さんを見たことがないから何とも言えないけど…、俺は桔梗だって充分可愛いと思うよ。」
「にょっ?!」
「クスクス、どうしたの?おかしな声出して。」
「だだだっ、だって可愛い何て…!」
お世辞だと分かっていても心臓に悪い!
「初めて会ったとき…。」
そこまで言って桔梗の前髪をそ…とよかす。
「…っ!」
「この大きくて澄んだ瞳に吸い込まれそうになった、今日はピンで止めてないんだね、残念。」
「あ、う、うぅぅ…。」
ぷしゅ~っ、と真っ赤な顔になる桔梗を見て可愛いなぁと思う。
「今日はピン、持ってないの?」
「あ、え、えと…。」
確か鞄に…。
桔梗はショルダーバッグをガサガサすると、桃也に貰ったヘアピンを見つけた。
もぉにぃたんから貰ったヘアピン、持ち歩くクセが付いたな…。
「貸して。」
「え…。」
桔梗の手からヘアピンを取ると、器用に前髪を止める。
「うん、やっぱり綺麗な瞳だね。」
「あ、あ、ありがとうございます。」
ぐぅっ!
さっきから顔が熱すぎる!
何とか落ち着きたくてミルクティーを飲んでいると、
「桃也君のこと、好きなの?」
「あ…っ、それは…。」
自然とうつむく桔梗の頭を撫でてやる。
「言いたくないならいいけど、もし話せるならゆっくりでいいよ、ちゃんと聞くから。」
「胸が…苦しかった…、凄く痛くて…そしたら親友の光希に、それは、恋の痛みだと…。」
「好きなの?」
もう1度聞くと、今度は首を振る。
「分からない…でも、もし恋だとしても、これ以上好きになっちゃいけない気がして…。」
もしこれが恋だとしたら、それはもう…もぉにぃたんに迷惑をかけるだけだし、どうせ嫌われる…。
だったら…。
「俺にしない?」
「へっ!」
「俺のこと好きになってみない?」
リョウを…?
「いや、もうリョウはあたしの激推しだから…。」
「それはrunaのリョウってことでしょう?俺が言ってるのは、1人の男、川瀬遼平を好きになってみないってこと。」
「う、うぇぇっ!」
「俺のこと、川瀬遼平として好きになってくれたら嬉しいんだけど。」
な!
ななっ!
何ですとぅ⁉
何だ?
これは夢かっ?
いや夢に違いない!
桔梗は突然リョウの前で頬をつねる。
「痛い…夢じゃない…!」
「夢何かにしないでよ、これでも真剣に言ってるんだから。」
「ど、どうして…。」
「桔梗なら、runaのリョウじゃなくて、川瀬遼平を好きになってくれると思ったから。」
嫌な予感がする…。
桔梗に帰ることをメッセしたのに、返事がない。
今までこんなこと1度だってなかった。
何かあったんじゃ…。
玄関を開けてすぐに靴をチェック。
普段使いの靴はある。
家にはいるのか?
「ただいま。」
言いながらリビングに入ると、そこでは家族が出前で頼んだらしきお寿司を食べている姿があった。
「おかえり兄貴~。」
「桔梗はっ?何かあったのかっ?」
「違うよ、今日は出掛けてるだけ、たまには俺たちの夕飯のこと何かきにせずにゆっくりしておいでって言ったの。」
毅流に説明され、
何かあったわけじゃなかったか。
ホッとしてソファに荷物を置きながら
「そうか…。」
答えた後、キッチンで手を洗う。
「お前の分もあるから座って。」
隆一に言われ、手を拭いた後自分の席に座る。
隣に桔梗がいないことに違和感があるな…。
「桔梗は何処に行ってるんだ?光希と出掛けたのか?」
「あら違うわよ、桔梗ちゃんねぇ、あのリョウにお呼ばれしてるのよぉ!」
「何っ?!」
「兄貴うるさいよ~。」
「桔梗1人で行ったのか?!」
「桃也、まずは落ち着きなさい。」
「父さんの言う通りだよ、モモ兄まずは落ち着いて。」
毅流は言いながらチラッ、と静音に視線を投げ、
これ以上騒ぐと母さんキレるよ。
と、暗に伝える。
「ちなみにボクが送って行ったんだけどさぁ、すっごいタワマンだったよ、確かあれ、リョウの不動産のひとつじゃなかったかなぁ。」
「じゃあ俺が迎えに…!」
「問題ないわよ、桔梗ちゃんからちゃんと連絡あったから、とりあえず落ち着きなさい、それに今日初めてお呼ばれしたのに、何かあるわけないでしょ。」
「それは…っ。」
「それに桃也、あんたに口出す権利ないでしょ、彼氏でも何でもないんだから。」
その言葉に桃也は立ち上がる。
「後で食う…。」
それだけ言って出て行った。
「母さんいいのぉ?」
「いいのよ、1人になれば少しは頭も冷えるでしょ。」
何じゃこりゃ!
バベルの塔か?!
あの日、リョウからの突然の誘いに、一瞬何が起きているか分からなかったし、理解してからは戸惑った。
しかし花蓮のことがあった後だった桔梗は、誰かにすがりたかった。
しかも自分のことを、あまり知らない誰かに…。
誘いのメッセの後、実際会う約束をしてあれやこれやと決めていき、リョウの自宅で会うことになった。
行きはたまたま車で出掛けるところだった海斗に乗せてもらった。
そしてタワマンを前にしたわけだ。
…にしてもまさか、リョウの自宅で会うことになるとは…!
エントランスに入りすぐに、部屋番号を入力してインターホンを押す。
[あ、良かった無事に着いたみたいだね、今自動ドア開けるから、中に入ったら奥まで進んで専用のエレベーターで来てくれる?そっちのロックも解除しておくから。]
「は、はい。」
専用のエレベーターとな?!
度肝を抜かれつつ自動ドアを抜けて奥へと進み、専用のエレベーターへ。
エレベーターに乗り込んだ桔梗。
うぅぅ、今更ながら緊張してきた。
大丈夫だろうかあたし、心臓飛び出ないかっ?
エレベーターを降りてすぐ、重厚な扉が開き
「いらっしゃい。」
迎えてくれたリョウ。
そこは2フロアぶち抜きの、恐ろしく豪華な自宅であった。
本日はモデルの仕事。
久々に冴子の店のモデルである。
「新作のイメージが桃也ちゃんにピッタリだったから頼んだのよぉ、引き受けてもらえて良かったわ、ありがと。」
「冴子さん相変わらず凝ったデザインすね。」
「うふふ、男性だって下着オシャレしたっていいでしょ?それより桔梗ちゃんは元気?」
「えぇまぁ…。」
一応普通には接してるけど、花蓮のことがあってから何だかわだかまりが…。
てかまだ何で桔梗が花蓮のこと知ってるか聞いてねぇし。
桃也が考えを巡らせていると
「付き合わないの?」
「は?」
冴子がいきなりなかなかの質問をブッ込む。
「だって下着選んでるとき、いい雰囲気だったわよ。」
「普通に選んでただけっすよ。」
「じゃあ質問、もし桔梗ちゃんが桃也ちゃんが選んだ下着を身に着けて、自分以外の男に抱かれることになったらどうする?」
「そんなこと…。」
「あり得ないって言える?」
あり得ないとは言い切れない。
今はあの家にいて、恋愛に興味ないようだけど、桔梗の世界はこれからどんどん広がってゆく。
あの家にいるのも、恋愛に興味がないのも、今だけかもしれない。
と言うより、今だけだろう…。
もしも冴子さんが言った通り、俺が選んだ下着を着けた桔梗が、俺の知らない誰かに抱かれることになったら…。
「嫌っすね、凄く…。」
「下着を見られるのが?桔梗ちゃんが自分以外の誰かのものになるのが?」
桔梗が誰かのものに…?
そんなん…。
「桔梗が誰かのもの何て、嫌っす…。」
「でも今のままだったら、桔梗ちゃんはそのうち誰かのものになることもあるわよ、色々考えるのも悪くはないけど、気付いたときには…何て後悔はしちゃ駄目よ、いつかはいなくなるとしても、今は貴方の目の前にいるんだから。」
「…はい。」
後悔してほしくない…。
気付いたときには…。
海斗にも言われたことを、冴子さんにも言われてしまった。
俺だって後悔したくない。
だからと言って桔梗を愛しているか聞かれたら、正直すぐに答えられない。
花蓮に未練があるわけじゃないし、桔梗に問題があるわけでもないが、今一歩が踏み出せない。
だからって桔梗が誰かのものになるのが嫌だ何て…。
俺はどれだけ我儘なんだよ…。
黒岸家にも負けないくらい、広いリビングのソファに並んで座り、
「はい、外暑かったでしょ?」
冷えたミルクティーを振る舞われる。
「あ、ありがとうございます。」
あ…そうだ。
「あ、あのこれ…。」
こんなんいらないかな…。
桔梗はオズオズとボトルに入れた特製ジュースを袋ごと手渡す。
「これは?」
「あの、前に雑誌のインタビューで、眠りが浅くて困っていると読んだので、よく眠れる特製ジュースをと思って…。」
「桔梗が作ってくれたの?」
「は、はい。」
いらないかな…。
「わざわざありがとう。」
満面の笑顔で言われてホッとする。
いらないって言われなくて良かった、この笑顔癒しだぁ。
「少し飲んでもいい?」
「は、はい。」
リョウはキッチンに向かいコップを取ると、すぐに戻って来て早速ジュースを注いでみる。
「凄い色だね。」
「あ、見た目はあれですけど、味は悪くないと…。」
「そう?凄いけど綺麗なグリーンだと思うよ、じゃあいただきます。」
と言ってまずはひとくち。
「桔梗。」
「はい…。」
もしや不味かったか!
「これ砂糖とか入ってる?」
「いえ、野菜だけで作ってます、不味かったですか?」
「そんなことない凄く美味しい!こんなに甘いのに野菜だけとか…桔梗はいいお嫁さんになるね。」
「ひょっ!」
お嫁さんとか!
「後は今夜じっくり飲ませてもらうね、ホントにありがとう、それより…。」
「はい?」
「俺に話したいこと、あるんじゃない?」
「あ…。」
「メッセしててもしかしてって思ったんだけど、もしあるなら話してよ、どんなことでもちゃんと聞くから。」
穏やかに微笑むリョウの優しさに触れ、桔梗は桃也とのことを話した。
「そう…その桃也君の元カノの花蓮さんだっけ?そんなに綺麗なの?」
桔梗は頷いてから口を開いた。
「誰が見ても美人だろうなって人で…花蓮さんなら桃也さんの隣を歩くにふさわしいって…。」
「花蓮さんを見たことがないから何とも言えないけど…、俺は桔梗だって充分可愛いと思うよ。」
「にょっ?!」
「クスクス、どうしたの?おかしな声出して。」
「だだだっ、だって可愛い何て…!」
お世辞だと分かっていても心臓に悪い!
「初めて会ったとき…。」
そこまで言って桔梗の前髪をそ…とよかす。
「…っ!」
「この大きくて澄んだ瞳に吸い込まれそうになった、今日はピンで止めてないんだね、残念。」
「あ、う、うぅぅ…。」
ぷしゅ~っ、と真っ赤な顔になる桔梗を見て可愛いなぁと思う。
「今日はピン、持ってないの?」
「あ、え、えと…。」
確か鞄に…。
桔梗はショルダーバッグをガサガサすると、桃也に貰ったヘアピンを見つけた。
もぉにぃたんから貰ったヘアピン、持ち歩くクセが付いたな…。
「貸して。」
「え…。」
桔梗の手からヘアピンを取ると、器用に前髪を止める。
「うん、やっぱり綺麗な瞳だね。」
「あ、あ、ありがとうございます。」
ぐぅっ!
さっきから顔が熱すぎる!
何とか落ち着きたくてミルクティーを飲んでいると、
「桃也君のこと、好きなの?」
「あ…っ、それは…。」
自然とうつむく桔梗の頭を撫でてやる。
「言いたくないならいいけど、もし話せるならゆっくりでいいよ、ちゃんと聞くから。」
「胸が…苦しかった…、凄く痛くて…そしたら親友の光希に、それは、恋の痛みだと…。」
「好きなの?」
もう1度聞くと、今度は首を振る。
「分からない…でも、もし恋だとしても、これ以上好きになっちゃいけない気がして…。」
もしこれが恋だとしたら、それはもう…もぉにぃたんに迷惑をかけるだけだし、どうせ嫌われる…。
だったら…。
「俺にしない?」
「へっ!」
「俺のこと好きになってみない?」
リョウを…?
「いや、もうリョウはあたしの激推しだから…。」
「それはrunaのリョウってことでしょう?俺が言ってるのは、1人の男、川瀬遼平を好きになってみないってこと。」
「う、うぇぇっ!」
「俺のこと、川瀬遼平として好きになってくれたら嬉しいんだけど。」
な!
ななっ!
何ですとぅ⁉
何だ?
これは夢かっ?
いや夢に違いない!
桔梗は突然リョウの前で頬をつねる。
「痛い…夢じゃない…!」
「夢何かにしないでよ、これでも真剣に言ってるんだから。」
「ど、どうして…。」
「桔梗なら、runaのリョウじゃなくて、川瀬遼平を好きになってくれると思ったから。」
嫌な予感がする…。
桔梗に帰ることをメッセしたのに、返事がない。
今までこんなこと1度だってなかった。
何かあったんじゃ…。
玄関を開けてすぐに靴をチェック。
普段使いの靴はある。
家にはいるのか?
「ただいま。」
言いながらリビングに入ると、そこでは家族が出前で頼んだらしきお寿司を食べている姿があった。
「おかえり兄貴~。」
「桔梗はっ?何かあったのかっ?」
「違うよ、今日は出掛けてるだけ、たまには俺たちの夕飯のこと何かきにせずにゆっくりしておいでって言ったの。」
毅流に説明され、
何かあったわけじゃなかったか。
ホッとしてソファに荷物を置きながら
「そうか…。」
答えた後、キッチンで手を洗う。
「お前の分もあるから座って。」
隆一に言われ、手を拭いた後自分の席に座る。
隣に桔梗がいないことに違和感があるな…。
「桔梗は何処に行ってるんだ?光希と出掛けたのか?」
「あら違うわよ、桔梗ちゃんねぇ、あのリョウにお呼ばれしてるのよぉ!」
「何っ?!」
「兄貴うるさいよ~。」
「桔梗1人で行ったのか?!」
「桃也、まずは落ち着きなさい。」
「父さんの言う通りだよ、モモ兄まずは落ち着いて。」
毅流は言いながらチラッ、と静音に視線を投げ、
これ以上騒ぐと母さんキレるよ。
と、暗に伝える。
「ちなみにボクが送って行ったんだけどさぁ、すっごいタワマンだったよ、確かあれ、リョウの不動産のひとつじゃなかったかなぁ。」
「じゃあ俺が迎えに…!」
「問題ないわよ、桔梗ちゃんからちゃんと連絡あったから、とりあえず落ち着きなさい、それに今日初めてお呼ばれしたのに、何かあるわけないでしょ。」
「それは…っ。」
「それに桃也、あんたに口出す権利ないでしょ、彼氏でも何でもないんだから。」
その言葉に桃也は立ち上がる。
「後で食う…。」
それだけ言って出て行った。
「母さんいいのぉ?」
「いいのよ、1人になれば少しは頭も冷えるでしょ。」
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる