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絶対支配領主『バハムート』人類衰退度A+
第4話 神竜『バハムート』
しおりを挟むその後、タイガの持ち帰った肉を使って、ささやかながら宴が開かれた。
一番広い村長宅へと集い、皆浮かれた風に騒いでいる。日頃抑圧された生活から解き放たれたのだから、当然と言えよう。
その立役者であるタイガの下へ、何人もの村人がお礼を言いに来た。老人から果ては子供まで、感謝の言葉を忘れなかった。
タイガはドラゴン肉の串焼きを持って、喧騒から少し離れた壁際まで避難していた。村では貴重な野菜まで使った一品は、噛むたびに旨味を伝えてくる。
「タイガさん」
アイシャがいくつか料理を持って、彼の傍に身を置いた。熱狂する村人を見る視線には、年不相応な慈愛を感じさせる。
「アイシャは子どもたちから好かれているんだな。見ていたよ、すごい懐きようだった」
「あれは……その、村長の娘として当然の振る舞いをしただけで」
「照れることはないだろう。立場通りに振る舞える者は決して多くない中で、君はそれを全うしているのだから。自信を持った方が良い」
「そう、ですか」
それきり彼女は俯いてしまった。顔が朱に染まって見えるのは熱気のせいか。
それから少しの間、タイガは村人を眺めていた。何かと照合しようとする目付きから、観察しているのだと分かる。
「……なあ、アイシャ」
彼は視線を固定したまま、傍らにいる彼女に話しかけた。
はい? とアイシャもこちらを窺うことなく、ただ声だけで繋がりを持つ。
「はぐらかさずに答えてほしいんだが――――異世界人は、俺で何人目になる?」
「…………っ!」
彼女の反応を受けて、ずばり確信に至る。
タイガがそう考えたのは、村人の反応だった。確かにアイシャを助け、ドラゴンを倒したことに対する感謝はあった。しかし突如降って湧いたような男に対し、疑問の一つも現さなかった。
そして村人たちの眼には、どこか憐憫の色があったことが何よりの決め手であった。
アイシャが言葉を選んでいるうちに、タイガは一方的に自らの考えを打ち明ける。
「想像になるが、俺が現れるよりも以前に、何人か異世界人が訪れたはずだ。おそらく複数人。……そして、その存在を言いづらそうにしているのは、彼らが皆、ドラゴンに返り討ちにあったからだ、違うか?」
より正しく言えば、彼らは異世界転生者だったのだろう。タイガの丁寧な言葉遣いを意外そうに感じていたのも、他の転生者が揃って砕けた口調だったからに違いない。何かしらのチート能力を得て、少しばかり図に乗ってしまったのか。タイガはそういった者たちをこれまで多く見てきた。
そしてテンプレに則って、転生者はこの世界のラスボスに挑み、敗れ去った。小説の読み過ぎだ、たかがチート能力を得たからといって、即ち勝てると思い込んでしまった。
答え合わせをするように、アイシャは小さく頷いた。
「……はい。異世界人はタイガさんで四人目です。その、タイガさんのように、ちょっと変わった名前をしていました。タローさんや、ゴローさんや」
ひょっとしたら同郷なのかもしれない。そう思うと、一度会ってみたかった気持ちになる。
「皆良い人でした。正義感に燃えていて、支配者の話をすると飛んでいきました。どの方も凄い魔法を持っていて、私たちも期待しました。……けれど、その全員が帰ってくることはありませんでした」
「火竜バアル・バゼルだったか? あれが支配者じゃないのか?」
「はい。あれはこの地区の支配者で、頭領は別にいると聞いています。姿は見たことありませんが……、名前だけは知っています」
カタカタ、と彼女は小刻みに震えていた。明らかに怯えているようだった。
アイシャは気持ちを落ち着かせて、ゆっくりと口を動かしてその名を告げた。
「――――神竜バハムート」
バハムート、と復唱して、心に刻みつける。
どこぞの宗教が始まりで、巨大魚の竜だったはずだ。中二病御用達の伝承だが、名前倒れでないとすれば、相当な難敵であることは明白である。
「神竜、ね……」
些か誇張が過ぎるな、とタイガは独りごちる。
壁から背を離し、彼はアイシャの方へと向き直った。
「ためになる話をどうもありがとう。随分と参考になった」
「それはよかったです。……あの、どちらへ?」
「一足先に休むことにするよ。時差ボケみたいに、身体がちょっと重いんだ」
「ジサボケ?」
こちらの世界にはない概念を使われて、首を捻るアイシャ。元の世界とのギャップを改めて感じつつ、与えられた部屋へと入る。
石造りのベッドに毛皮を敷いただけの簡素な寝床に、タイガはごろりと寝転がった。
喧騒がすぐ隣から広がっているものの、別段苦痛ではなかった。むしろ彼にとっては一人ではないことを実感できて、安らかな眠りに繋がる子守唄のように感じていた。
目を閉じ、タイガは泥のように眠りに落ちた。
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