異世界漂流~転生者絶対倒すマン!~

名無なな

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絶対支配領主『バハムート』人類衰退度A+

第12話 仲間集め

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 村に戻ったタイガがまず取りかかったのは、バアル・ボウルの解体である。

 昨夜のように食べられる部位を切り取るのはもちろん、今回は竜の皮を剥いでいた。強靭の鱗に覆われた皮は、強度はおろか魔力耐性も高い。それを彼は村の防備に使おうと考えたのだ。
 タイガは自らが切り取った皮を村人に渡していき、同時に適切な指示を飛ばす。

「ボイルさん、最も固い背は正面に持って行ってください! ナタさんのそれは各建物に。っ手の空いた人は骨を村周辺に突き立てていってください、無駄に多いので間隔は狭く。地中深くまで!」

 今回のことで痛感したが、この村はちょっとした余波を浴びるだけで壊滅してしまうほど脆い。一つでも流れ弾が向かえば、多くの命が奪われることだろう。

(本来なら高い石壁が理想的だが、そこまでの猶予はない。せめて対空用のバリスタくらいは取り付けたいところだが……)

 どう足掻いても人手も物資も足りていない。ポピュラーな木材は周囲に一本も生えておらず、山から石を切り抜こうとも、それを運ぶには相当な労力がいる。金属類も数を集めるには時間を要する。結局、ドラゴンから採れる素材を頼りにしなければならなかった。
 それもこれもこれまでの管理者が、防壁を築いた程度で反逆の意思ありと見なしていたからだ。火竜バアル・バゼルとその子である炎竜バアル・ボウルが堕ちた今、次なる管理者が配置されるまでいくらか時間があるはずだ。つまりまともな防備を整えるには今しかない。

 しばらく作業を続けていると夕刻となり、一気に薄暗くなった。晴れ間の見えない世界なので、元々ほの暗さが漂っていたが。

「みなさーん! 夕食の準備ができましたよっ!」

 そう声を張り上げたのは、ドラゴンの肉を調理していたアイシャだ。他にも力仕事に不向きな女性や子供が担当している。
 それを聞きつけた男衆は一斉に群がる。タイガも遅れて今日の品を確認すると、どうやらドラゴン肉をシンプルに焼いたステーキだった。昨日と似たようなメニューだが、村人たちにげんなりした風な色は見受けられない。アイーガの言っていた通り、彼らにとって動物の肉は貴重品なのだろう。

 皆が思い思いに休む中で、タイガは食事もほどほどにしてこっそり作業を続けていた。やるべきことは山積している以上、誰よりも動ける自分が働かなければ。
 しかし足音が近づいてきたのを機に、彼は手を止めた。振り返るとアイシャがお皿にステーキを載せてやってきた。ちなみに皿は陶器である。


「……あの、お口に合いませんでしたか?」


 彼女はとても不安そうに言った。
 おそらくタイガがあまり食べていないことに気付いたのであろう。そんな悲しそうな顔をさせてまで、彼は作業を続ける気にはなれなかった。

 タイガはお礼を言ってから器を受け取り、金属製のフォークを使って頬張った。
 うん、と頷いて、

「美味しいよ。焼き加減もばっちりだし、塩も程よく効いている。……ん? ところで、塩っていったいどう手に入れているんだ? 近くに海でもあるのか?」
「海……聞いたことがあります。確か水なのに飲んだら逆に喉が渇く、悪魔の飲み物だと」

 アイシャの様子からして、この周辺に海はないらしい。人伝手に聞いた程度みたいなので、おそらく今ではほとんどが干上がってしまっているのだろう。長年この熱気に晒されていれば当然と言える。
 タイガの純粋な疑問に、彼女は丁寧に答えてくれた。


「私たちの村では岩塩を使っているんです。他の村と違って豊富に採れるので貿易品としても利用しています。この後、余ったお肉は燻製にしたりして保存しようと思ってます」
「へえ、岩塩か」


 粗塩とは違い一粒が大きいため、味がしっかりしている気がする。海がなく岩塩もなければ、生活は相当不便になっていたはずだ。
 それからしばらくアイシャと談笑する。タイガがこれまで転移してきた別の異世界のことにも触れた。少し面白可笑しく脚色を加えたおかげか、彼女は笑みを絶やさなかった。

「――――そこで俺の相棒であるサイボーグは最後、溶鉱炉……マグマに自ら身を捧げ、親指を立てこう言い残したんだ。『俺は戻ってくるアイルビーバック』とな」
「悲しいお話ですね……! でもそのシュワちゃんと言う人、とっても立派な人です!」

 彼女は目尻に浮かんだ涙を拭った。喜劇にするつもりが、いつの間にか感動路線を走ってしまっていた。影響とは恐ろしい。

「そうだ、この世界で不便はないか? 目下ドラゴンの支配に苦しんでいるのはそうだが、それとは別に何かあれば、できる限り実現してみせるぞ」

 日本と比べたら、この世界は戦国時代レベルで住みづらい環境だろう。トイレは汲み取り式で、料理もレパートリーが少ない。工夫すれば何とかなるものの、効率が悪いのは確かである。
 アイシャは少しだけ悩む様子を見せてから答えた。


「そうですね……、実は私、一度花を見てみたいと思っているんです?」
「花?」
「はい。今ではすっかり枯れてしまって、強靭な植物しか残っていないんですよ。村のおばあちゃんから聞くには、とても綺麗なものだって」


 てっきり生活レベルの不満を口にするとばかり思っていたが、アイシャにとってはそうではないらしい。考えてみると、彼女たちには今の生活が当たり前なので、すっかり順応しているのだろう。
 花が見たい――――日本では容易く実現できる、慎ましやかな願いだが、この世界ではとても困難な夢だ。花を育てるくらいなら、まずは作物を育てる方が優先される。あくまで余裕がある時に愛でるものであり、今のような逼迫した状況下に相応しいものではあるまい。

 タイガは彼女の微笑ましい願いに、つい頬が綻んでしまった。

「はは、なるほど。そうだな、ドラゴンを全て倒すことができたら、俺ができる限り実現してみせよう」
「ホントですか!?」
「ああ。確かに花は世界を彩るには相応しい。盲点だったよ」

 話しているうちに、他の人たちは再び工事を再開しようとしていた。タイガもそれに倣い身体を動かそうとする。
 その前に改めてアイシャに礼を述べた。

「ごちそうさま。本当に美味しかった。明日以降も楽しみにしているよ」
「は、はい! もちろんです!」

 彼女は器を引き取って、やや小走りで去ってしまった。顔を赤くしていた風に見えたのは気のせいか。
 工事再開の前に、タイガはまずアイーガの姿を探す。視線を右に左にやると、竜骨を直角に立てるための穴を掘っている彼を見つけた。

 近付き、アイーガさんと呼びかけると、彼は相変わらず人の良さそうな表情を向けてきた。


「これはタイガさん。どうかなさいましたか?」
「いえ……、少しお聞きしたいことがありまして」


 その口ぶりから真剣な内容であることを悟ったアイーガは一旦手を止めた。
 すぐ傍に手ごろなサイズの岩があったので互いに腰かける。ゴツゴツしていて座り心地は悪いものの、気を抜くには充分だった。
 一拍置いてからタイガは切り出した。


「――――実は、少しの間この村を離れようと思っています」


 アイーガは反応を見せず、話の続きに耳を傾ける。いちいちリアクションを挟まないことで、こちらが話しやすい空気を作ってくれているのだ。

「理由は無論、神竜バハムートを倒すためです。管理者が襲ってくるたびに撃退しているだけでは、いつまで経ってもドラゴンの脅威に怯えなくてはなりません。やはり根本から変えるには、頭目を討つ必要があります」
「なるほど……。しかしここを離れるということは、まさかお一人で挑むつもりですか?」

 まさか、とタイガは苦笑いを浮かべて、

「できることならそうしたいのですがね……。ここまで二体の竜と戦ってきて、単騎では難しいと知りました。なので、同志を募ろうと考えています」
「同志、ですか……?」
「はい。なので村長の知り合いか、もしくはドラゴン退治の実績を持つ者の噂を聞いたことはありませんか?」

 アイーガから聞いた話によると、ドラゴンの総数は百を超えるという。タイガはバアル・バゼルらを容易く撃破してみせたが、相手は決して雑魚ではない。それに戦闘は基本的に、多勢に無勢となるのだ。
 数で劣るのなら、そこを補強すればいい。単純にそう考えた彼は、いわゆる仲間探しの度に出るつもりだった。

 尋ねて、アイーガは即座に答えを返してきた。

「おお、それならば『スレイヤーズ』と呼ばれる傭兵団が適任でしょう! 彼らは実際にドラゴン討伐の実績があります!」

 反応を見るに、相当期待値の高い集団らしい。ちょっと引くくらいの熱の入りようである。
 しかしアイーガは不意に表情を渋くして、


「実はその『スレイヤーズ』……、首都ダンヘルクの方を根城にしているそうで。ここカンユ村から徒歩で一日はかかるのですよ」
「一日ですか……」


 自分なら半分以下に縮められるだろうが、それでも往復に一日近くかかる計算となる。その間にこの村が襲われる可能性がある。

(だがどのみち、その『スレイヤーズ』とやらと会ってみなければならん。ならバアル・ボウルを倒して間もない方が、次の刺客が来る確率は低いはず。……今しかないか)

 タイガは考えをまとめて、それをそのままアイーガへと伝えた。

「……手前勝手になりますが、明朝すぐにでも出立しようと思います。『スレイヤーズ』と話を付けて、何とかこちらに加勢してもらうために」
「……そうですな。元よりあなたは善意で我々に協力してくれているのですから、止める権利など持ち合わせておりませんよ」

 アイーガはそう言って、物柔らかな笑みを作った。タイガが不在となることに、少なからず不安を抱いているだろうが、それをおくびにも出さなかった。
 その後順調に工事が進み、完全に暗くなったところで彼は村長宅へと戻って行った。


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