異世界漂流~転生者絶対倒すマン!~

名無なな

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絶対支配領主『バハムート』人類衰退度A+

第13話 蒼い宝石の約束

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 その日の深夜、タイガはベッドの上で横になっているものの、一向に眠る気配がなかった。仰向けになって手を天井へと伸ばしている。

(あと、持って一週間ちょっとか)

 これは彼なりの自己分析術であった。掌を開閉することで、全身の調子を点検しているのだ。身体はそれなりに疲れているけれど、漂流生活が始まってからというもの、満足に眠れない日々が続いていたせいか、いつしかあまり眠らなくてよい体質になっていた。

 一週間――――それがこの異世界に留まることのできる日数だ。それを過ぎると、何の前触れもなくタイガは別の異世界へと転移されてしまう。本人の意思にかかわらず、だ。
 もっと時間に余裕があれば、他の手を借りずに一体ずつドラゴンを抹殺していく手段も取れた。しかし仲間を集め、一網打尽にすることを決意したのは、あまりに残された猶予が短いからである。


(いや、どのみち『スレイヤーズ』とは接点を持っていただろう。何故なら――――)


 思考に耽っていると、不意に扉がノックされた。どうぞ、と扉越しに来訪者へ呼びかけると、その者は恐る恐るといった風に入ってきた。

「あ、あの……お休みでしたか?」

 彼の元を訪れたのはアイシャであった。といってもタイガは、足音の軽さから彼女だと分かっていたのだけれど。
 日本のようなキャミソールやパジャマなどの裕福な衣服は、この世界にはほぼ存在していないのだろう。彼女は布製のシンプルな寝間着姿で現れた。それでも露出面積の多いそれは、ともすれば扇情的ですらあった。

 タイガは「相手は未成年、未成年……」と己に言い聞かしながら、軽い調子で出迎えた。

「別に大丈夫だけど……どうしたんだ? 一緒に寝てほしいのか? はは、なーんてな」

 おっさんくさいセクハラ一歩手前の発言に、アイシャは初々しく照れてみせる。


「そ、それは……! 遠慮しておきます……」
「冗談だよ。……何かあったのか?」


 タイガはほぼ無意識的に、半径数百メートル以内を探査している。その網に引っ掛かった不審者の類は感じ取れなかった以上、危機的な何かではあるまい。
 故に彼はリラックスした心持ちで接していた。

 アイシャはギュッと服の裾を握り締めながら口を開いた。

「……先ほど父から話を聞きました。タイガさん、明日には村を離れるそうですね」

 やはりその話題か、と別段隠し通したかったわけでもないため、タイガはそれを首肯した。


「ああ。急な話でな。まあ、離れるといってもそう長い期間じゃないんだ。ほんの二日程度、村を空けるだけだ」
「そう、ですか……」


 とは言ったものの、アイシャは未だ心許なさを抱いているようであった。努めて面には出さないようにしているが、そこはアイーガの方が上手だった。他者を慮るところは血筋のようだが。
 だが彼とて、一人の少女が寂しがっているからという理由で、やるべきことを疎かにするわけにもいかない。

 タイガは少しの間悩み、よしと呟いてアイシャを手招きした。

「確かアイシャは、魔法が使えるんだったよな? 何系統の魔法が得意なんだ?」
「え……はい。まだまだ未熟ですけど、一応水系の魔法が得意としています」

 唐突な問いかけに、彼女は首を傾げながらも近寄ってきた。するとタイガは、物を保管しておくのに便利な空間魔法を使って、そこからペンダントを取り出した。
 アイシャが戸惑っているうちに、それを素早く彼女の首に取り付ける。サイズはぴったりで、チェーンの先端には大粒の蒼い宝石が輝いていた。

「わあ……!」

 彼女はその宝石を持ち上げ恍惚そうな表情を浮かべる。タイガがアイシャの瞳に目を奪われたように、彼女もまたその宝石に目を奪われていた。
 しかし彼女はすぐに気を取り直して、

「こ、これはいったい……?」
「この世界にあるかどうかはさておき、それはペンダントと言ってな。女性の魅力を引き立てる装飾品の一つだよ」
「ですから……何でこんな高価そうなものを、私に?」

 事実、彼女に送ったペンダントの適正価格は、日本円にして五千万はくだらない。芸術的価値だけではなく、それにはもっと別の価値があっての値段だった。
 タイガは「よく似合っている」と満足げに首を振り、


「約束するよ。そのペンダントが、俺とキミとを繋いでくれる。アイシャに危険が迫っても、それがあれば俺は必ず駆けつける」
「……、」
「だから不安がることはない。キミは俺が守るよ」


 しばらくボーっとした顔になっていたアイシャは、ようやく本来の機能を取り戻した。慎ましやかな彼女にとって、そのような高級品を身に着けることに、どうしても抵抗があるのだろう。なおも食い下がろうとしてくる。

「私は別に……そのお気持ちだけで充分なんです。こんな高価な物、とてもいただけません」

 タイガにとっても、一度差し出したプレゼントを返品されるとなると、わりと心に傷を残してしまうため、意地でも彼女には受け取ってもらわなければならない。
 なので彼は、それ以上聞く耳持たないとアピールするべく、そっぽを向いた。


「いや、それはキミが持っているべきだ。何より――――ペンダントってやつは、女性の首元でなら輝くが……男のポケットにしまっておくのは、忍びなくてね」
「……、分かりました。ありがとうございます」


 アイシャはもう一度、ギュッとペンダントを握り締めた。

 そのまま彼女は口惜しそうな様子で部屋を出て行った。タイガは改めてベッドに身を放り投げた。
 目を閉じる。無垢なアイシャと言葉を交わしたおかげか、幾分肩の力が抜けたようで、急激に睡魔が襲ってくる。

(思った、より……疲れが蓄積して…………)

 タイガはそれに抗うことができず、眠りへと落ちていった――――

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