異世界漂流~転生者絶対倒すマン!~

名無なな

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絶対支配領主『バハムート』人類衰退度A+

第14話 『スレイヤーズ』

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 翌日タイガは村人が寝静まっている間に、首都ダンヘルクへと出発した。
 道中は一面荒野のようなもので、歩けど歩けど代わり映えしない景色に多少うんざりしてきていた。だが気を張っていないと方向感覚が狂ってしまうため、彼は一歩ずつ着実に途方もない距離を詰めていた。

 とはいえ無論徒歩ではない。それではアイーガの言っていた通り一日かかってしまう。なのでタイガは――――全力疾走で大地を駆けていた!

「単なる脳筋じゃねえか」とツッコミが入りそうだが、単純に彼にとって一番速い移動方法がこれだったのだ。以前習った飛行魔法を使えばもっと楽に動けるだろうが、速度に欠けそれでは大幅な短縮にはならない。

 元々警察学校で体力作りを徹底的にしていたため慣れており、さらに転生後も肉体鍛錬を怠らなかったので、ちょっとやそっとでは息切れしない身体になっている。魔力で身体能力をブーストしていることもあって、電車に並ぶほどの速度を手に入れていた。
 結局は約一日かかると言われた距離を、(体感で)六時間ほどに縮めて首都ダンヘルクへと到着した。タイガは額の汗を拭い、周囲を観察する。

 首都と言えば、整備されたインフラに新旧入り乱れる建物。道行く人はどこか小洒落ていて、通りはどこも賑わっている――――というのがおおよその印象だろう。
 しかしダンヘルクでは、そういった華やかな類は一切なく、雰囲気も陰鬱としており、人通りも疎らであった。建物はどこもかしこも損壊の痕が見られ、街を囲う城壁も所々亀裂が走っていた。

「首都というより地方の捨てられた砦みたいだな……」

 カンユ村よりはマシとはいえ、ここも竜に攻められたら一晩と持つまい。むしろこれまでどうやって存続してきたかが気になった。崖を背にして街が成立しているものの、正面からのブレス一発で崩壊しそうなものだが。

 門を潜り街へと入ろうとする際に、門番に通行料を要求された。彼は予め持ってきていたドラゴンの肉を一キロほど手渡した。
 門番はひゅう、と口笛を鳴らして、

「へえ、田舎から出てきたわりには上等な肉を手土産にしてきたな。何の肉だ?」
「ドラゴン」
「ははっ! なかなか笑える冗談だ、あんたさては詩人かい?」

 歌うのなら知らせてくれよ、と背中を押され、タイガは街の中へと入っていった。
 壁内に入ると一層寂れた空気が伝わってくる。活気の二文字を異世界にでも転移させられたか。

 彼はまず手始めに『スレイヤーズ』の所在について聞き込みを行った。大抵そういった情報が集まるのは酒場と相場が決まっているので、タイガは真っ先にそこへと向かった。幸いそれらしき看板が吊るされていたため、すぐに見つけることができた。
 外装こそ古ぼけていたものの、内装に至ってはそれが味となり、ミステリアスな雰囲気作りに一役買っていた。加えて店主が髭を蓄えた初老の男性ということもあって、酒場というよりバーに近い印象を受ける。

 客の姿はタイガ以外見られない。ひとまず手ごろなお酒を一つ注文した。
 店主が酒を用意している間に、素早く情報収集を開始する。


「ところでマスター、この街には『スレイヤーズ』という傭兵団があると聞いて訪れたんだが……、肝心の居場所が分からなくてね。知っているなら教えてくれないか?」
「……ふむ、見ない顔だ。どこから?」
「カンユ村ってところだ」
「ああ、あそこの塩をしばしば使うから覚えているよ。なかなかやり手の村長さんがいたはずだ」


 酒を目の前に置かれる。メニューを見ても酒の名称が日本とはまるで違うため、適当に頼んだが、どうやら蒸留酒の一種らしい。
 軽く口に含むと、強烈な味が舌を刺激した。アルコール分も相当高いようで、意識が一瞬くらっとする。一気飲みでもすればぶっ倒れてしまうだろうと、タイガはチビチビとゆっくりグラスを傾ける。

「話を戻すが……『スレイヤーズ』をお探しなので?」
「ああ。ちょっと頼みごと……ドラゴン退治の依頼をするためにね」

 そう告げた途端、店主は僅かに複雑そうな顔になった。その理由を探ろうにも、年の功か読み取らせてくれない。
 しかし店主は一転、ぱっと表情を明るくして言った。

「彼らに任せたのなら安心さ。費用はかかるが、その間の安全が保障されるんだから安いものだよ」
「……そうか。お墨付きがあるのなら安心だ」
「彼らなら崖のところにいるよ。壁に穴を開けてアジトにしているんだ。いざというときの避難場所にもなるしな」

 店主の態度に疑問を抱いたタイガだったが、酒を飲み終えると何も言わずに店を出て行った。会ってみれば分かることかもしれないし、彼には何となく目星が付いていたからだ。
 タイガは店主に言われた通り、崖目がけて突き進む。先ほどまでは遠くて気付かなかったけれど、確かにいくつか穴が開いている。見るからに頑丈そうな岩壁だ、籠城するには最適だろう。

 十分ほど歩いて、崖の真下まで辿り着いた。崖に面して、この街で最も真新しさを持つ建物が建っていた。カンユ村の村長宅よりも大きく、中からは弾む声が漏れ聞こえてくる。
 扉の前で二の足を踏んでいても仕方がない。タイガは臆せずドアをノックした。喧騒がいくらか小さくなった。

「ご歓談中失礼する。私の名はタイガ、ここから遠く離れたカンユ村からの使者である!」

 室内にいる者全員に聞こえるよう、多少声を張って要件を伝えた。五十人ほどの視線が一気に注がれる。
 この時当然いの一番に対応してくるのがリーダー格、もしくはそれに近しい人物だ。予想通り出てきたのは、頬に傷を持つ四十代半ばの男性だった。


「ようこそ、遠路遥々『スレイヤーズ』のアジトへ。俺の名はロイ、一応ここの団長を務めさせてもらっている」


 厳つい容姿にかかわらず、ロイは客人に対し友好的な態度で握手を求めてくる。タイガもまたそれに快く応じた。

「お会いできて光栄です。『スレイヤーズ』の方々の武勇は、我が片田舎でも耳にしています。この世界きってのドラゴン殺しの猛者たちだと」
「そう持ち上げられると気恥ずかしいな……。まあ立ち話もなんなんで、どうぞおかけくだせえ」

 そう言ってロイは近くで飲んでいた仲間に席を空けるよう視線を飛ばす。彼らは急いでテーブルの物を片付けた。
 どうやら酒盛りを開いていたらしく、そこかしこに酒瓶が転がっている。見ると周囲の者たちの顔が赤い。

 しかし突然の来訪者に酔いも覚めたのか、全員がタイガに視線を注いでいる。居心地が悪いと感じる人間もいるだろうが、幸い彼は注目されることに慣れていたため、気に留めず席に着いた。
 対面に座ったロイが、顎を触りながら真剣な面持ちで口を開く。

「さて……、さっきカンユ村から来たと言っていたが、村で何かあったんで?」

 実は、とタイガはここ二日間で起きた出来事を説明する。
 火竜バアル・バゼルを討ったものの、翌日には息子であった炎竜バアル・ボウルが村を襲ってきたこと。そしてその二体の竜を何とか屠ったこと。――――そのドラゴンらを倒したのが、自分であることなど。

 話している間、ロイはずっと神妙そうな顔をして耳を傾けていた。説明を終えてなお、自らの考えをまとめているのか沈黙を貫いている。「ドラゴンを倒しただって?」と驚く周囲の仲間とは対照的だ。
 やがてロイはなるほど、と頻りに頷きながら、


「事情は分かった。村が悪竜に襲われているというのに、駆けつけることすらできなかったこと、まずは謝罪する」
「無理もありません。何せ距離があり過ぎる。救援を要請するのにも、応援が到着するのにも。それに幸い死者は出ていませんから」


 ロイは頭を上げ、今度は顎に手を添えた。

「しかし俺には、タイガさんが訪ねてきた理由が分からない。村の防衛に関して言えば、あんたがいればこと足りるだろう。わざわざこんな場所まで来て、さらなる身の安全の確保を求めるとは思えない」
「確かに。だから私は、もっと別の依頼を持ってきました」
「もっと別の……?」

 はい、と彼が真剣そうに頷くと、場の空気が一気に引き締まった。
 ドラゴンからの村の防衛というだけで至難の業だというのに、この依頼人はそれ以上のものを頼もうとしているのだから。

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