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41.生憎、俺はGカップ以下は女に見えないから。

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 玲雅の家には、彼の作業室とリビング、そして二人の寝室がある。これらのコーディネートは、何だかんだみやこの設計を元にした。玲雅は渋っていたが、あまりに気に入ったひじりの意見に沿ってくれた形だ。
 二人で湯船に浸かりながら、玲雅はひじりの髪を撫でた。

「……酔い醒めた?」
「そ、そこそこに……」

 実際汗で流れたのか、それとも未だに一緒に入浴というものに照れを感じてしまうからか。ひじりはすっかり、素面に戻っていた。

「というか、何で心変わりしたの?嬉しかったけど」
「嬉しい?」
「一緒にいられる時間が伸びて。一緒に住んでても先帰られると寂しい」

 ……どれだけ寂しがりなのだろう。しかもそれを、いつもの無表情で言うから反応に困ってしまう。
 ひじりは少し悩んでから、口を開いた。

「……あのアナウンサーの子いたじゃないですか」
「ああ、あのTakaクンのファンの?」
「……その人に玲雅様が狙われてる、みたいな事を……ちらーっと小耳に挟みまして」

 それを聞き、玲雅は不思議そうに首を傾げた。

「Takaくんを狙ってるんじゃないの?」
「いやその、結果的にはそうだったんですけど。勘違いではあったんですけど、その……万が一何かって考えたら」

 もにょもにょと話すひじりを、玲雅はじっと見つめる。しかしすぐに、それは溜息に変わった。

「あるわけないでしょ。俺はひじりだけだよ」
「あの、その疑ってるわけでは」
「言っておくけど、俺はちゃんと毎回逃げてるから」

 それを聞き、はっとした。玲雅を勢いよく見上げる。

「逃げ……え、って事は、誘われてるって事ですか!?」
「言ってたでしょ、こないだの飲みでも連絡先渡されたとか。ひじりは『やっと玲雅くんの魅力を分かる人が増えた』とか言ってたけど」

 記憶はある。しかしそれでいくと、彼はかなりの回数誘われている事になる。今更ながら、胸が痛くなってきた。
 あからさまに表情を変えてしまったひじりを、玲雅は抱きしめた。

「……やっと妬いてくれた」
「ひゃ、え」
「あー……なんだこれ。ごめん、不謹慎だけどすごく嬉しい」

 そういえば、彼は無駄を嫌うたちだ。それなのに、わざわざそれを知らせていたという事は。

「あの、もしかして……妬かせたかったんですか」
「当たり前。俺ばかり妬くの、余裕ないみたいだし」

 それを聞き、急に顔が熱くなる。そんなひじりに、たたみかけるように玲雅は続けた。

「雪斗はもちろんだし、タクヤも。何ならそっちのメンバーにも俺は妬いてるよ。一回俺皆にひじりをどう思ってるか聞いたことあるし」
「ど、どどどどういう事ですか!?」
「Naokiクンは『あんなクソガキ絶対ない』、Reoクンは『妹でしかない』、Souクンは『あと3つくらい胸のサイズ上げれば許容範囲』、Takaクンは『あれと彼女になるくらいならSouくんと付き合う』って」
「うちのメンバーひどすぎません?」
「……ちょっと思った」

 とりあえず次あったらSouとTakaはまず殴ろう、と思っていると玲雅の唇が重なった。その熱を受け止めると、彼はまた囁く。

「ひじりに、もっと独占されたいし。もっと独占したいんだよ、俺は」

 その言葉に、胸の奥が熱くなる。そして、口から押し出された。

「……あの、新曲。今日発表の」
「ん?『promise』?」
「それ、です。あの……あの、曲って」

 玲雅は備えていた水を口に含んで、「あれね」と呟いた。

「『カトレア』のマイナーアレンジ版。次のアルバムのボーナストラックにするんだよ」
「え」
「ひじり、好きって言ってたでしょ」

 確かに、思い返せばあの曲たちの共通点は見える。口ずさんで確認するひじりを見つめながら、玲雅は続けた。

「構想自体はちょっと前から作ってたんだけどね。最初はもっと『カトレア』に近かったんだけど、どんどん脱線しちゃった」
「あ……ちょっと分かりますそれ」

 とはいえ、主にその状況に陥るのはSouだが。彼はいつもそのせいで息詰まり、よく家にこもってグロテスク系ゲームで発散していると聞いていた。
 玲雅はひじりに「それがどうしたの」と聞く。ひじりは気まずそうに、玲雅から目を逸らした。

「……あの。あの曲、私が泣いてる時に歌ってくれてたじゃないですか」
「うん」
「……他の人も聞いちゃったんだなあ、って。ちょっとだけ、ちょっとだけですよ。寂しくなっちゃって。その、私だけの玲雅様じゃないのに」

 それを聞き、玲雅は止まった。そして、抱きしめる力を急に強める。

「可愛い。本当に可愛い。何でそんなに可愛いかな」
「ちょ、ほぁ、ひゃっ」
「やっとこっちに来たね、ひじり」

 そう囁くと、玲雅はまた口付けてきた。今度は入念に、縫い付けるように舌を叩き込まれる。そんな激しい口づけは初めてで、下腹部が重く、熱くなる。

「俺は、ひじりだけのだから。どれだけ『IC Guys』として歌っても、俺はひじりのだから」

 その言葉は、そっと……ひじりのタガを、外した。





 浴室から出ると、体を拭くだけ拭いて玲雅はひじりをベッドまで手引きした。服を着ずに、という事は……合図だ。再び、下腹部が熱くなる。
 ベッドに乗り上げると、玲雅は早速ひじりを押し倒した。そして、首に食らいつく。

「っ、あ」

 その咥え方は、まるで動物が子にするやり方に似ていた。しかし、それよりももっと荒っぽい、舌も張り巡らされ、その度ひじりの身は跳ねた。

「れ、玲雅くんっ……」
「これ好きだね、ひじり」

 そう囁きながら、彼の唇が耳まで移動する。そのまま、今度は耳をくわえられた。

「ひゃうっ」
「好きだよ、ひじり。好き」

 彼は分かっている。その声に、ひじりがどれだけ弱いのか。
 何度もしつこく、舌で舐められる。反射で逃げようものなら、押さえつけられる。そこに、ほんの少しの執着を感じてしまった。だからこそ、熱くなる。
 この人は、自分を求めている。かつてこんなにも、この人を求めた……今も抜け出せていない、自分を。

「好きだっ……」

 熱く、甘い。柔らかな囁き。あまりにも、狂おしい。
 ひじりの手が、玲雅の剥き出しの背中に回った。玲雅の「もっと」の囁きに、ひじりは力を込める。

「俺の、俺のひじり……っ」

 ぬちゅ、ぬちゅ、と玲雅の猛りがひじりの中に入ろうとしてくる。その熱に、ひじり自身もすでに洪水を起こしていた。

「玲雅くっ、お願いっきて……」

 そう、口走ってしまえば。玲雅の肉棒は、一瞬にして入り込んできた。

「あうっ……!」
「きて、って言ったの自分でしょっ……」

 ぬぐ、ぐっ、と音を立てながら突き込まれる。荒い息を絡ませながら、玲雅の腰は止まらない。

「あっ、あっ、やあっ、あっ」
「妬かれないのも寂しい、けど……っでも、安心してくれる?」
「ふぁ、あっあっ!」
「ひじり、ひじりっ」

 細かい声が、ひじりの脳をちりちりと焼いていく。その甘さは、もはや猛毒にも等しかった。
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