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42.計画始動中。
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「ふーん、いいんじゃない。外には出せないけど」
「それっていいに入るの……!?」
久々にSouとオフが重なったひじりは、彼を家に呼んでいた。何だかんだ、引っ越してからメンバーを家に呼ぶのは初めてになる。玲雅はこちらを見ながら、キッチンで珈琲を淹れていた。
ひじりの書いた譜面を改めて見返しながら、Souは何度も頷く。
「いや、真面目に初の作曲にしてはいいとこいってると思うよ。何で作ったの?弦?」
「う、ううん。打ち込み。Souくんの真似した」
「なんか最近やたら背後に視線感じると思ったらそういうことだったんだ。別に言ってくれれば教えたのに。というか打ち込みの譜をわざわざ紙に写すとか」
ひじりは作詞はするものの、作曲に関しては初めての挑戦だった。しかし作曲に関して業界からも一定の評価を得ているSouにボロクソ言われなかっただけで、安心してしまう。
玲雅がコーヒーを運んできた。そのまま、Souの背後に寄る。
「そろそろ俺も見たいんだけど。あ、Souクン砂糖とミルクは?」
「ブラックで大丈夫、ありがとう」
「あ、あの。修正箇所終わってからでもいいでしょうか……」
その後Souの手伝いをもらいながら、違和感ある箇所を修正していった。正直楽器もPCも無しに修正指示を出来るSouは、本当に天才だと思った。しかし実際その内容で打ち込みをしてみると、一気に曲の質が上がったのを実感した。
改めて完成した曲を、玲雅は何度もリピートして聞き直していた。ひじりはそんな彼をハラハラしながら見守るも、彼の口もとが緩んでいることになんだか安心した。
「じゃ、俺帰るね」
「Souくんありがとう、ごめんねオフなのに」
「貸し1ね」
そう言って彼が出て行ってから、ひじりは改めて玲雅の作業部屋に入った。玲雅はすでに、デスクに向き直っている。ヘッドホンを付けながら、テーブルにペン先をコンコン叩きつけていた。なのでひとまず、ひじりは作業部屋を出た。
……二人で、曲を作ろうと言い出したのは玲雅だった。自分がひじりのものであるという証明をしたいと言われた時、ひじりは申し訳ないやら嬉しいやらで気が狂いそうだった。
発表したての『IC Guys』のニューアルバムを再生する。以前言っていたボーナストラックを流しながら、ひじりは目を閉じた。
……三田玲雅は。『IC Guys』のボーカルであり、ひじりの恋人。その二つが、ここ最近でようやくきちんと結びついた気がした。
「あー!?Hijiriてめえ!お前さてはちょっと肥えたな!?」
「わーんごめんなさい幸せ太りですううう」
今日は、Reo主催の衣装作成会だ。ステージがなくても、Reoは衣装のデザインをこまめに変えたがる。そのため、時間のあるメンバーは時折呼ばれて測定などをしているのだが。
「うるっせえ言い訳すんな!落とせ!あと2キロは落とせ!お前スタイル悪くないんだから維持に力注げ!」
「いや胸はもっと増やした方がいい」
「Souお前もだぞ!お前は逆に痩せすぎ、もっと食え!この後二人で焼肉はしごすんぞ!」
「私は!?」
「お前は水以外禁止!」
いつに無く、Reoはどうも檄をとばしているように見える。普段は比較的温厚なのに、どこか不思議だった。
そもそも10周年ライブを終えてから、今はほんの少しの休養期間として意識的に表舞台に出る仕事をセーブしている状態だ。それなのになぜ、急にこんなにはりきりだしているのだろうか。
Reoの指示を受けてNaokiが作成したダイエットメニューを見てげんなりしながら、ひじりは溜息を吐いた。
『Hijiriちゃん、ちょっとお話があるんですけど』
「え、え、何ですか」
急に、チーフマネージャーから電話がかかってきた。その神妙な声に、どうも冷や汗をかいてしまう。すると、チーフマネージャーが重々しく口を開いた。
『あのですね、明日から二週間。お休みしてください』
「えっ……め、珍しい。なんでですか?そんなの、おばあちゃん亡くなった時以来じゃ」
『Reoくん指示です。「あいつロケ弁で多分肥えてる」と』
「理由くだらな!!」
しかし、チーフマネージャーにまでそんな指示を出させるとは。そんなにまずいのだろうか、と思いながらひじりは脇腹を摘んだ。確かに、ここ数年の中ではつまめる体型にはなっているかもしれない。
……玲雅には何も言われない。そして玲雅の体型は一切変化が無い。その事に、逆に危機感が生まれてきた。
「わ、分かりました。頑張って痩せます!」
『その意気です!ちなみにReoくんはそのために新衣装作ってるらしいので、それを頭に入れておけって言ってました』
「何であの人そんなにガチなの!?」
訳が分からない。しかし、仕方ない。何だかんだメンバーで一番怒ると怖いのは彼だ、あまり敵に回したくはない。
『あと、Izumiさんの伝手でエステのチケットもらったのでそれも送ります。お休み中行ってきてくださいとの事です』
「あ、それ旦那さんのお店じゃ!?いいんですか!?」
『あとTakaくんが「お前俺を売りやがったな!」って言ってましたけど何したんですか?』
「……あー、の、ノーコメントで……」
「それっていいに入るの……!?」
久々にSouとオフが重なったひじりは、彼を家に呼んでいた。何だかんだ、引っ越してからメンバーを家に呼ぶのは初めてになる。玲雅はこちらを見ながら、キッチンで珈琲を淹れていた。
ひじりの書いた譜面を改めて見返しながら、Souは何度も頷く。
「いや、真面目に初の作曲にしてはいいとこいってると思うよ。何で作ったの?弦?」
「う、ううん。打ち込み。Souくんの真似した」
「なんか最近やたら背後に視線感じると思ったらそういうことだったんだ。別に言ってくれれば教えたのに。というか打ち込みの譜をわざわざ紙に写すとか」
ひじりは作詞はするものの、作曲に関しては初めての挑戦だった。しかし作曲に関して業界からも一定の評価を得ているSouにボロクソ言われなかっただけで、安心してしまう。
玲雅がコーヒーを運んできた。そのまま、Souの背後に寄る。
「そろそろ俺も見たいんだけど。あ、Souクン砂糖とミルクは?」
「ブラックで大丈夫、ありがとう」
「あ、あの。修正箇所終わってからでもいいでしょうか……」
その後Souの手伝いをもらいながら、違和感ある箇所を修正していった。正直楽器もPCも無しに修正指示を出来るSouは、本当に天才だと思った。しかし実際その内容で打ち込みをしてみると、一気に曲の質が上がったのを実感した。
改めて完成した曲を、玲雅は何度もリピートして聞き直していた。ひじりはそんな彼をハラハラしながら見守るも、彼の口もとが緩んでいることになんだか安心した。
「じゃ、俺帰るね」
「Souくんありがとう、ごめんねオフなのに」
「貸し1ね」
そう言って彼が出て行ってから、ひじりは改めて玲雅の作業部屋に入った。玲雅はすでに、デスクに向き直っている。ヘッドホンを付けながら、テーブルにペン先をコンコン叩きつけていた。なのでひとまず、ひじりは作業部屋を出た。
……二人で、曲を作ろうと言い出したのは玲雅だった。自分がひじりのものであるという証明をしたいと言われた時、ひじりは申し訳ないやら嬉しいやらで気が狂いそうだった。
発表したての『IC Guys』のニューアルバムを再生する。以前言っていたボーナストラックを流しながら、ひじりは目を閉じた。
……三田玲雅は。『IC Guys』のボーカルであり、ひじりの恋人。その二つが、ここ最近でようやくきちんと結びついた気がした。
「あー!?Hijiriてめえ!お前さてはちょっと肥えたな!?」
「わーんごめんなさい幸せ太りですううう」
今日は、Reo主催の衣装作成会だ。ステージがなくても、Reoは衣装のデザインをこまめに変えたがる。そのため、時間のあるメンバーは時折呼ばれて測定などをしているのだが。
「うるっせえ言い訳すんな!落とせ!あと2キロは落とせ!お前スタイル悪くないんだから維持に力注げ!」
「いや胸はもっと増やした方がいい」
「Souお前もだぞ!お前は逆に痩せすぎ、もっと食え!この後二人で焼肉はしごすんぞ!」
「私は!?」
「お前は水以外禁止!」
いつに無く、Reoはどうも檄をとばしているように見える。普段は比較的温厚なのに、どこか不思議だった。
そもそも10周年ライブを終えてから、今はほんの少しの休養期間として意識的に表舞台に出る仕事をセーブしている状態だ。それなのになぜ、急にこんなにはりきりだしているのだろうか。
Reoの指示を受けてNaokiが作成したダイエットメニューを見てげんなりしながら、ひじりは溜息を吐いた。
『Hijiriちゃん、ちょっとお話があるんですけど』
「え、え、何ですか」
急に、チーフマネージャーから電話がかかってきた。その神妙な声に、どうも冷や汗をかいてしまう。すると、チーフマネージャーが重々しく口を開いた。
『あのですね、明日から二週間。お休みしてください』
「えっ……め、珍しい。なんでですか?そんなの、おばあちゃん亡くなった時以来じゃ」
『Reoくん指示です。「あいつロケ弁で多分肥えてる」と』
「理由くだらな!!」
しかし、チーフマネージャーにまでそんな指示を出させるとは。そんなにまずいのだろうか、と思いながらひじりは脇腹を摘んだ。確かに、ここ数年の中ではつまめる体型にはなっているかもしれない。
……玲雅には何も言われない。そして玲雅の体型は一切変化が無い。その事に、逆に危機感が生まれてきた。
「わ、分かりました。頑張って痩せます!」
『その意気です!ちなみにReoくんはそのために新衣装作ってるらしいので、それを頭に入れておけって言ってました』
「何であの人そんなにガチなの!?」
訳が分からない。しかし、仕方ない。何だかんだメンバーで一番怒ると怖いのは彼だ、あまり敵に回したくはない。
『あと、Izumiさんの伝手でエステのチケットもらったのでそれも送ります。お休み中行ってきてくださいとの事です』
「あ、それ旦那さんのお店じゃ!?いいんですか!?」
『あとTakaくんが「お前俺を売りやがったな!」って言ってましたけど何したんですか?』
「……あー、の、ノーコメントで……」
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