簡単に運命と言わないで――二人のアルファに囲まれて――

かぎのえみずる

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長内編

第六話 港の献身的愛情

 僕の裸に、先ほどまでシていたからフェロモンがダダ漏れらしく、一気に港さんが欲情しラットを発生させた。
 二人そろったラットに、体がしんどく、ゾクゾクとし続けてしまう。

「これは、聞いたことがない。オメガの番が、二人必要など」
 鼻を押さえながら、港先生は顔を顰めた。
 戸惑いは顔からすぐに分かるが、それよりも、と港先生ははっとする。

「フェロモンがドア越しにも凄かった、即効性のヒート抑制剤ならあるから、飲みなさい。このまま理性なく項を噛まれるのは嫌だろう、君も」
「あっ、てめぇ、人の番に!」
「残念ながら私の番でもあるのだよ、椿くん。他のアルファに襲われさせたくないんだ」

 鞄からミネラルウォーターと、薬を手際よく出した港先生は僕に優しく飲ませ、すぐそばの椅子に座り僕の頭をなでた。
 優しく微笑んでから、港先生はぎっと椿を睨む。

「何か勘違いしているようだが、番はオメガ次第だ。世間では子供を孕ます為の存在だとかで差別されてるが、それを言うならアルファはオメガに子供を産んで貰うための、ただの番人だ。オメガが選ぶ立場だ」
「ふぅ、ん、すみません、なでられると、二人そろってると、ラットで感じて、しまいます」
 思ったより甘い声が出たからか、港先生は顔を赤らめ僕をもう一度見つめると、おろおろとしてから手を離した。

「何か作ろう、食べるといい。椿くんも風呂に入ってこい、きちんと話す場を設けよう。……最低なことにもう事後だが、まだ項は無事らしく安心したよ」

 港先生は僕に笑いかけてから、椿を引っ張り風呂へ連れて行ってからキッチンへと戻ったようだった。
 おなかがすく、ものを食べずに一晩中セックスしてたから、一気に暖かな胃に刺激的な匂いにぐううと腹がなった。

 港先生が戻ってきて、アサリのミルクスープと、明太フランスパンを持ってきた。
 僕が腰から悦が抜けなくて動けないのを悟ったらしく、ベッド脇に置くと、優しく食べさせようとしてくれた。

「じ、自分で食べられます……」
「敬語はいらないよ、私にとっても運命の人なのだから」
「あの、ありがとう」
「ああ、簡単なものしか作れなくてすまないね」
「そうじゃなくて! 抑制剤とか、僕にも選択肢をくれたこととか」
 僕が礼をつげて、ミルクスープを口にすると港先生は、ああ、と小さく笑った。
 ミルクスープは腹に優しくアサリの出汁がいい仕事をしていた。
 野菜も入っていて、食べやすいスープで心も体も温まり落ち着く。
「既にあいつにされたあとのようだが、強姦は君も嫌だろう?」
 バイト休んでまで、椿の精子を欲しがってしまってたところなんですよ、なんて言えず笑ってごまかしパンを囓る。あ、このパン美味しいな。
「君がね、このことにうんざりしてなかったら、是非とも私にもチャンスが欲しいな」
「……チャンスも何も。運命が、二人、か。神様の馬鹿ッ、何を考えているんだろう」
「そうだね、非常に興味深い話だよ。抑制剤が効いているとはいえ、やはり匂いで分かるんだ、私にも運命でこの匂いは私一人ではきっと成立しないと。独占できないのは悔しいけれどね」

 港先生は、でも、と笑って遠慮がちに僕の頭をなでた。
「でも、相手が君なのはとても、嬉しいことだよ。とても、愛らしいから」
 やばい。この人天然人たらしだ。ナチュラルにそんな言葉を言ってくるなんて、顔が赤くなる。
 ミルクスープを飲み干すことで、誤魔化した。

「おかわりいる?」
「あ、いいの?」
「うん、君のために作ったから食べて欲しいものだよ。よそってくる」

 明太フランスパンを囓りながら待っていると、風呂から出た椿が、滴を髪から垂らして僕の近くまでずんずん歩き、僕から明太フランスパンを奪って食べた。

「ああいうのがタイプか」
「え」
「何だよでれでれしやがって、オレの時と態度違うじゃねぇか、アンタはオレのファンじゃないのか」
「でれでれなんてしてないよ! っていうか、そもそも態度違うって椿の場合襲ってきたからだろ! 殴らせろ、いいから殴らせろ。ヒートを利用しやがって!」

 今もその拗ねてる声がピンポイントで腰にくる、なんて言えないし!
 さっきまでの自分の痴態を思い出すと、恥ずかしいし!
 気恥ずかしくて顔をあわせられないとばかりに顔を押さえると、椿が僕の顔をぐいと引っ張り、キスをする。
僕はどうなってしまうんだろう……。
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