簡単に運命と言わないで――二人のアルファに囲まれて――

かぎのえみずる

文字の大きさ
12 / 27
長内編

第十二話 港の嫉妬

 椿と抱き合って一番ほっとしたのは、抱いたからと言って特別甘い空気になるわけでもないことだった。
 僕のチョーカーを噛みはするけども、椿は認めたくはないが気持ちのよい青年だ。
 子供っぽさが大分残るけれど、それでも嘘だけはつかない安心感もあったし、駆け引きなどというめんどくささも感じられない。
 一緒に湯船につかりながら、椿に後ろから抱きしめられる。
 行為だけは甘いのに、僕らが話していたのは将来の夢を目指した瞬間について、というロマンや夢はあっても愛はない会話だった。
「絵本作家ぁ? なにそれ、どんな話書きたいんだ」
「童話みたいに、いつまでもみんなで幸せに暮らしました、で終わる話」
「そんなん小説でもいいじゃねぇか」
「子供向けにしたいんだよ、いつかは爺さんになって近所の子供に読み聞かせてさ、お節介じいさんて呼ばれたい」
「変な夢だな、でも嫌いじゃない。……オレは、兄貴への反抗から今の職になったなあ」
「お兄さん?」
「内緒な、腹違いの兄貴がいるんだ。そいつのことが気に食わなくて、名声が欲しかった。そいつより上ランクの恋人も、夢も欲しかった。今はくだらねぇって思う」
「椿が弟って苦労しそうだね」
「そういやアンタ何歳よ」
「二十二歳だよ」
「へぇ。オレは二十八歳」
「落ち着きない二十八歳だね! 雪道さんは?」
「うるせぇ、あいつは三十三歳だったかな」
 他愛ない雑談をしながら、風呂から出るとスマホから着信があるのか椿はスマホを耳に当て誰かと会話をしている。
 マネージャーらしく、電話を切るなり、やべぇとつぶやいていた。

「明日収録なの忘れてた」
「ばかだなあ」
「なぁ、密。一緒に暮らさないか? お互い知る期間がどうしても必要だとか言うんなら、そのほうが手っ取り早い。三食昼寝つき家賃なしで囲ってやる」
「僕専用の部屋くれる?」
「それぐらいは。だけど寂しくてアンタはオレの部屋に来ることになりそうだけどな」
「ならいいよ、家賃なしは魅力的だ」
「そうと決まれば物件見に行こう! ああ、そうだ、料理はアンタが作るんだぞ」

 無邪気に心からはしゃぐ椿に徐々にほだされていく。



 週刊誌には僕と椿の写真に、テレビでは連日報道される。「鳥崎椿さん、同棲されるんですか?」「しちゃ悪いですか」と正直に答える椿の映像。

 どれもこれも記者たちは喜んで記事にし、SNSとではファンから僕への罵倒が連なっていた。

「それで、私を抜きにして本当に椿くんと同棲するのかな? だとしたら、随分と寂しいな、仲間はずれかね、私は」
 雪道さんから電話があったので、雪道さんの自宅に駆けつければにっこりと笑ってそんな言葉を言うものだから、僕は罪悪感が一気に募っていく。

「これでも君に気に入られようと必死だったけれど伝わらなかったかな」
「あ、の。怒りながらラットするの、は、やめて、ほしい、です」
「そうだね、息づかいが荒くなっていく、君も私も」

 じ、と睨むように見つめてくる雪道さん。
 言葉を探していると、僕の手を取って、不敵に微笑んだ。

「世間に私のモノでもあると、私が宣言してこようか。椿くんだけのものじゃないと」
「相当怒ってるのは、分かる、から、お願い」
「お願いって…………何? ん? 君が私の可愛い恋人だと、どうして私だけ言ってはいけないのかな」
 雪道さんは熱い吐息をつきながら、ソファーに座る僕の隣へ腰掛け、腰を強引に抱き寄せキスをした。
 僕がキスにうっとりしていると雪道さんは、キスを幾度も愉しみながら僕へ言葉をかける。

「同棲なら、私もいてもいいよな?」
「う、ん……いっしょ、で、いい」
「言葉には気をつけたまえ、一緒がいい、そうだろ?」
「あっ、ん!」

 キスをしながら雪道さんは、僕の股間を柔らかく揉み、僕が震える度に嬉しげに笑う。
 雪道さんは、机の上に置いてある紙袋を開けてごらん、と微笑みかける。
 僕は快楽とアルファのラットにより、ほぼほぼ何も考えられない状態だった。

「君へのプレゼントだ、気に入ってくれるといいな」

 黒い首輪だった――犬にするようなやつの、少しいかつめのやつ。
 僕は雪道さんの顔を不思議に見つめていると、雪道さんは僕から衣服を剥がし、首輪をつけさせる。

「私がいいというまで、犬のまねをして私に媚びるんだ。でないと、許さないよ」

 雪道さんは更に僕の目の前に、アイテムを追加した。尻尾つきのローターだ。
 静かな笑顔で雪道さんはキレていたのだと、理解するには遅すぎた。

感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

出来損ないのオメガは貴公子アルファに愛され尽くす エデンの王子様

冬之ゆたんぽ
BL
旧題:エデンの王子様~ぼろぼろアルファを救ったら、貴公子に成長して求愛してくる~ 二次性徴が始まり、オメガと判定されたら収容される、全寮制学園型施設『エデン』。そこで全校のオメガたちを虜にした〝王子様〟キャラクターであるレオンは、卒業後のダンスパーティーで至上のアルファに見初められる。「踊ってください、私の王子様」と言って跪くアルファに、レオンは全てを悟る。〝この美丈夫は立派な見た目と違い、王子様を求めるお姫様志望なのだ〟と。それが、初恋の女の子――誤認識であり実際は少年――の成長した姿だと知らずに。 ■受けが誤解したまま進んでいきますが、攻めの中身は普通にアルファです。 ■表情の薄い黒騎士アルファ(攻め)×ハンサム王子様オメガ(受け)

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。 ※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 様々な形での応援ありがとうございます!

愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます

まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。 するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。 初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。 しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。 でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。 執着系α×天然Ω 年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。 Rシーンは※付けます ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。 ※画像はpicrewさんよりお借りしました。 Xアカウント(@wawawa_o_o_)

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

回帰したシリルの見る夢は

riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。 しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。 嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。 執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語! 執着アルファ×回帰オメガ 本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます。 物語お楽しみいただけたら幸いです。 *** 2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました! 応援してくれた皆様のお陰です。 ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!! ☆☆☆ 2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!! 応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。