簡単に運命と言わないで――二人のアルファに囲まれて――

かぎのえみずる

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長内編

第二十話 約束の二週間



 駆けつけた椿は話を聞くなり、茫然としていた。
 雪道さんも静まりかえっている。
 二人とも自分が選ばれると思ってない顔だし、僕も今からこの二人のどちらかを選ぶなんて難しかった。
「オメガがアルファを選ぶのか」
「オメガ差別やめろよ」
「差別ではなく、人生皮肉だなと思ってね」
 椿に注意された雪道さんは半笑いし、肩を竦めた。雪道さんは今まで選ぶ側の人生を歩んできたのだろう、戸惑いが透けて見える。
 椿は椿で、過去に恋人を寝取られた経験から敵うわけがないと思い込んでいる節があった。
 僕は再びチョーカーをつけながら、二人にそれぞれ軽くチョップをする。
「何するんだよ」
「痛いね、これでも落ち込んでいるんだよ」
「僕はね、恋を恋だと認めたくない。けど特別に認めてあげる、二人に条件与えたよね、前に。それをクリアできたほうが先着順で、僕の恋と認める」
「おっまえ、こんなときに! 真剣なときに茶化すなよ!」
「茶化してるんじゃないよ、ねぇ雪道さん」
 雪道さんの顔色から、後悔しているのは見て取れる。今までの行動や、優越感に利用しようとしたばかりに運命を失う恐怖で顔を真っ白にしているのも。
 だからこその、チャンスだ。
 頑張るときは今しかないんだよ、と視線に込めると雪道さんは察して、真剣な顔で頷く。

「私の期限はあと取材期間が残り二週間だから、あと二週間。それまでに椿が例のソフトを手に入れなければ私が君を手に入れてもいいんだね?」
「貴方も運命の一人だからね」
「ちょっと、納得したのかよ、雪道? マジでか、そんな遊びみたいな……」
「遊びだと思うなら手を抜けばいい。私は真剣に密が欲しい」
「な?! お、オレだって……くっそ、負けないからな!」

 僕が恋をしかけていたのは椿だったけれど。でも、きっとこれでよかったんだ。
 雪道さんが挑む機会がなければ、きっと雪道さんはこの日守れなかった行為を一生後悔し続ける。
 アルファにあぐらをかいて、油断しきっていたことも。

「もちろん、治療行為もできますが……治療薬の在庫がうちでは切れてまして。入手に一ヶ月かかるんですが、この症例の場合二週間で処置しないと手遅れです」

 医者の先生が慌てたように付け足すと、僕は二人にたたみかける。
「ならこうだ、僕は薬の入手に費やす。二人は勝負の続き。これでいい? 二人だって同じ番、嫌なんでしょう? 独占できるチャンスなら手に入れたいんでしょう」
「……密、一番大事なのはな、お前だ。お前が選びたいなら選べ、選べないときは薬の入手に専念しろ。オレらはオレらで、勝手に争うから」
 椿のこういう素直なところは好ましい。どんな言葉をかけていいのか悩んでいる雪道さんは少し可愛い。

 僕らはこうして、思い思いの二週間を過ごすこととなる。




 家に帰るなり、椿が僕を寝室へ誘った。項は絶対噛まないと約束したので、僕は招かれるままに寝室へ向かう。
「ちょっと、発破かけてくれ」
「どういうこと?」
「えっちしたい、項は噛まないから。怖いんだ、あの日からえっちできねぇまま、もしもアンタを失ったらって考えたら」
「……いいよ、慰めてあげる、きちんとゴムと避妊薬はさせてね」
「分かってるよ、ばーっか」

 僕が笑うと椿もようやく笑ってくれて、椿は久しぶりに僕の身体に触れる。
 鎖骨に噛み痕をつければ。胸の膨らみを親指の腹で捏ねくり、時折優しく撫でる。撫でる所作が今までの椿にない、優しい仕草だったので僕は思わず感じてしまう。
 椿からの行為は酷く優しい物で、胸からの愛撫だけでも身体の中心が熱くなっていくのを感じる。ひくひくと僕の後ろがひくつく上に濡れ、飢えを感じる。
 椿はキスを優しく触れるようにしながら、僕自身に手をかけ、僕の陰茎を握るとゆっくりと扱く。
「やだ、それ、感じる、やだ」
「可愛い顔してやんの」
 椿は僕の身体に愛撫を送り、今度は舌で胸の尖りを愛撫し始めた。時折は咬み、酷く愛しいんだと行為だけで伝える。
「ほら、慰めろよ。慰めてサービスして」
「え、と……よしよし、椿。毎日ポン太郎入手頑張ってて偉い!」
「ぶっははは、マジ、マジさ。オレ、密好きだよ」
 椿は僕にキスをしながら、僕が慰めるように頭を撫でてやると椿は嬉しげに笑った。
 深めにキスをするとやがて互いを求め合う、かたり、と扉の音が聞こえた気がした。
 一瞬だけ覗いていた雪道さんと目が合うが、雪道さんはそのままその場を去って行った。

「こっちに集中しろよ、よその男なんて考えるな。たとえ運命でも」
「椿、ん、そろそろ、挿れ、て」
「嫌だね、アンタのペースに惑わされない。今日は……今日だけはオレに付き合えよ」
 椿が微苦笑を浮かべるものだから、僕はしょうがないな、とそのまま椿の好きにしてあげる。
 椿は、僕の菊に舌を伸ばし、舌を尖らせたような感触で僕の中に舌が入ってきた。
 暖かく熱が伝わる感触に、僕は身を震わせ、生理的な涙をこぼす。
 頸を振りながら、もっとと強請ると椿は吸い、舌先で愛撫をしていた。やがて限界がきたのか、椿は屹立した肉棒にゴムを嵌め、僕に宛がう。

「欲しい? オレの欲しいってお願いしてくれよ」
「う、ん。椿の、欲しい、お願い、だぁら」
「舌っ足らずになるほどか、しょうがないなぁ密は。いいよ、オレのくれてやる、受け止めろ」

 椿は僕を一気に貫くと、久しぶりの感覚にそれだけで僕は射精してしまう。
 僕が身体をびくびくと震わせていると、椿は瞬いてからニィと笑いかけ、腰を律動させる。
「あっ、やだ、イってるから、イっちゃってるからああ」
「イってるときに突かれるの嫌い?」
「好きぃい。だめ、もう、ヨくてだめぇ!」
 僕は椿の頭を胸に抱き、よしよしと撫でながら強請る。もっと突いて欲しい、椿の全てが欲しいと。椿は嬉しげに興奮し、腰をピストンさせるとやがて、達した、
 達してもなお快楽を求め身体を揺する椿に僕は声が溢れて止まらなかった。

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