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第二部 視線
第二十三話 無垢であどけないエロス
しおりを挟む後日、二人でラブホにいき柚に衣装を見せれば、柚はぶんぶんと首を振って顔を顰めた。
想定内なので、さて柚を説得するための言葉を並べ立てようかと枯葉は内心を押し隠し、笑いかける。
「きっと兄さんの無垢さにはこれが似合うと思います」
「いや、色の問題じゃ……」
色の問題ではないというのなら、色は嫌いではないことを確信する。
形状や女物を着ることへの抵抗だろう。白いベビードールはレースがひらひらとついていて、それでいて半透明だからエロスも見せるあざとい女性向けではある。可愛さをウリにしているような、女性向けのもの。
ベビードールをひらつかせ、枯葉は実に残念そうに憂いを帯びた。
「これを選んだの、僕なんですが、そうですか。残念です」
「弟の顔をフルに利用するなよ……ッ」
「ばれましたか」
ぱっと顔を明るくするなり、ばれたなら作戦変更。
柚はおねだりに弱かったはずだ、と柚の両手を枯葉は握って見つめた。
「お願いしますから。ねぇ、お・に・い・ちゃ・ん?」
「ぐっ……!!」
響きにとっておきの甘みを含ませ、目を細め秋波を送り、手の指先にそれぞれキスを一つ一つ丁寧に枯葉はしてみる。そのうちの一本は甘噛みし、柚の目を真っ直ぐ見つめる。するとどうだ、頑なだった柚は諦めたように頷いた。
「お前……他の奴にも、その顔見せてるのか」
「まさかあ、兄さんだけですよ。僕が簡単にこんな顔を見せてると思われてるなら心外だ」
可愛かったですか、と囁けば「艶っぽいよ馬鹿」と怒られたが、柚の独占欲が少し見えたので枯葉は満足だ。
視線で試着を願い出る、柚はおずおずとベビードールを手にし、着替えてみた。
柚の無垢さと相まって、あざとさのための白さと称した自分を枯葉は恥じた。
相手の無垢さを知るほどに、艶やかに見える。
黒よりも背徳感が見えるせいか、いやらしくぞくぞくと興奮させる。
柚のあまり日焼けしていない肌に、すらりと肌のきめ細かな手足が見える。
真正面から見れば胸の赤みが薄らと見えていて、柚は視線がそこへいくと身を縮めた。
レースは太腿までで、ゆらゆらと揺れている。小さなショーツは勃起すればすぐに現れてしまいそうなほど面積の小さい下着である。
枯葉の想定以上に、淫靡な雰囲気を醸しだし、尚且つ無垢さも打ち消さない柚の装いだった。
枯葉はベビードールという存在に感謝しながら、幾度も口づける。
「枯葉、ん、ん」
「兄さん凄い、似合ってますよ。ああ、これ二着買って貰っておいてよかった、思う存分……汚せますね」
――獰猛な肉食獣の秋波に、柚はどきりとし、顔を俯かせて黙り込んだ。
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