もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~

第5話 魔導師達

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 イーア達が試験を受けていた頃。
 グランドールの奨学生試験が行われる建物には特別な部屋があり、そこに十人あまりの魔導師たちが集まっていた。
 彼らは弟子をとることのできる<師>の資格をもった魔導士だ。
 グランドールのような魔導士になるための学校はあるものの、魔導士の世界は今も昔ながらの師匠と弟子の関係でなりたっていた。
 学校で教えるのはあくまで魔術の基本。
 それぞれの魔術を極めるためには各門派の<師>の資格を持つ魔導師のもとに弟子入りしなければならない。

 そして、魔導師たちがここにいるのは、優秀な弟子を探すためだ。
 身分に関係なく魔術の才能のある少年少女を集めるグランドール魔術学校には毎年優秀な生徒が入学する。
 だから、魔導師たちはこの奨学生試験を見に来ている。将来、一門の名を高める優れた魔導師になるだろう才能ある若者を探しに。

 この、魔導師たちのいる部屋には、奨学生試験のすべてが映し出されていた。試験室の正面から映した大きな映像の他に、そこそこに設置された水晶球からいくつもの映像が写しだされており、それは操作すれば見たい受験生にフォーカスをあてることができる。
 3つの試験が行われている間、魔導師たちはこの部屋で受験生たちを論評しながら、すべてを見ていたのだ。

「今年はなかなか、見所のある生徒がおりますな」

 自然魔法の試験が行われている頃、一人の年取った魔導師が、傍らにいた水色のローブの魔導師に語りかけた。
 話しかけられた水色ローブの魔導師は金色の長い髪を首の根本あたりで一つに束ねている。
 年齢は30歳前後だが、誰もが美しい青年だと評するだろう。
 服装と物腰がとても優雅で、出自の良さがにじみでていた。

 そして、二人の歳の差は明らかなのに、年配の魔導師のほうがへりくだっていた。
 魔導師としての格が違うのだ。
 若い魔導師はほほえみ、相づちをうった。

「そうですね」

 年配の魔導師は映像を見ながら言った。

「今年は1番と2番がずば抜けておりますな。特に2番の少年は比類なき才能が明らかで。うちのような小さいところには来てくれないでしょうが。それでも、才能のある若者を見ることができるのは嬉しいものです。今年は来てよかった」

「たしかに。私も来てよかったと思います」

 そう言って、若い魔導師が移動しようとする素振りをみせると、年配の魔導師が先に別れをつげた。

「それでは、<碧空城《ホーヘンハイン》>どの、またいずれ」

「ええ。それでは、またの機会に」

 水色ローブの魔導師は会釈をすると、部屋の端に向かった。そこには係の人間が立っている。
 魔導師たちが尋ねれば、この係が受験生のプロフィールを見せることになっている。
 そこには、名前と住所だけでなく、親の名前から入学試験の点数の詳細、そして先刻行った魔力測定の結果まで記載されている。

 水色ローブの美しい魔導士は係の人間に言った。

「2番の情報を」

「かしこまりました」

 係の人はすぐに書類を手渡した。
 水色ローブの魔導師はすばやく書類に目を通し、係の人に返却した。 

「ありがとう。……おや?」

 礼を言いながら、水色ローブの魔導師は、部屋の隅に何かを見つけて驚いたような表情を浮かべた。

「ガリじゃないか。めずらしい」

 そうつぶやくと、水色ローブの魔導師は優雅に歩き出し、部屋のすみで壁にもたれて影のように立っている黒いローブの痩せた男に近づいて行った。

「やぁ、ガリ。久しぶりだね」

「ホスルッド」

 ガリと呼ばれた黒い髪の男はつまらなさそうにつぶやいた。
 社交的な笑みを浮かべる水色ローブの魔導師ホスルッドと対照的に、ガリはむっつりとしたまま表情を変えない。
 ガリは殺し屋のように眼光が鋭く、まるで死神のような陰鬱な空気を漂わせていた。
 ガリの無愛想な態度を気にした様子もなく、ホスルッドは明るい調子で話し続けた。

「こんなところで君にお目にかかれるなんて、うれしい話だね。ついに君もウェルグァンダルの長としての責任に目覚めたわけかい?」

 ガリは何も言わず、ホスルッドをギロリと睨みつけただけだった。
 気の弱い人間なら震え上がりそうな視線だったが、ホスルッドは気にせず手を振りながら明るく言った。

「いやいや。死ぬ前に、一人でいいから君の弟子を見たいなんておっしゃるご長老がたを何人も知っているんでね。このままでは召喚術の最高峰、名門ウェルグァンダルが滅んでしまうと皆心配しているよ」

 ガリは無表情にぼそっと答えた。

「見込みのある奴がいないだけだ」

「そりゃあね。君みたいな天才の目にかなう者は、めったにいないだろう。それに、いや、わかっているよ。召喚は生まれ持っての才能がすべてだからね。ご存知のように、僕は学生時代に身を持って知ってるよ。あれだけは努力でどうにかなるものじゃなかった。懐かしいな。あの頃、君は何をやっても天才的で……」

 ぺらぺらとしゃべり続けるホスルッドに、ガリは不機嫌に言った。

「召喚は才能がすべてではない。お前は何をしにきたんだ?」

「弟子を探しにきたに決まってるだろう? もちろん、ホーヘンハインは弟子には困っていないけど、優秀な弟子は多いにこしたことはないからね」

 ガリはつまらなそうにぼそっと問いかけた。

「探しにきたものは別だろう?」

「なにを……?」

 ホスルッドの表情が一瞬、変わった。
 ガリは無表情に淡々と言った。

「無事見つけられたようで、何よりだ」

「どうして……?」

 ガリは受験者たちの映像にちらっと視線をやりながら答えた。

「見ればわかる」

「さすが、我が旧友。他言無用だよ」

 ホスルッドはおどけた調子で言ったが、その表情は少しひきつっていた。
 ガリは冷たく言った。

「お前を友だと思ったことはない。だが、ペラペラしゃべるつもりはない」
 
 ガリは壁から背を離し、歩き出した。
 ホスルッドはガリの背に向かって尋ねた。

「もういいのかい? 召喚術の試験はこれからだよ」

「もういい。見ればわかる」

 立ち去るガリを見送り、ホスルッドは肩をすくめた。
 ガリが姿を消すと、遠巻きに様子をうかがっていた魔導師たちが、ホスルッドのそばに近づいた。

「お久しぶりですな。ホーヘンハインのご城主どの。ウェルグァンダルのご塔主は相変わらずのご様子で?」

「そうですね。お久しぶりです」

 ホスルッドは顔をおぼえてもいない相手にそう答え、適当な世間話をはじめた。
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