もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~

第29話 試合終了

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 ユウリがマーカスにボールをあてれば、それでゲーム終了。イーア達のチームの勝ちだ。
 オッペンはユウリに声援を送った。

「そうだな。よっしゃ! 勝とうぜ!」

 その時、「マーカスを囲め!」というダモンの声が響いた。
 ダモン達3人がマーカスの周囲を三角形をつくるように完全に囲んだ。真ん中のマーカスは棒立ちだけど、この状態でマーカスにぶつけるのは難しい。

「げっ。マーカスが完全に守られちまった」

 うろたえるオッペンにユウリは冷静に言った。

「だいじょうぶ。想定内。これで、先輩達はボールを避けることができない。次は、あてるか取られるかのどっちかだ」

 ユウリは風で作った大砲の筒にボールを入れ、小声で呪文を唱えた。
 敵陣に霧がたちこめはじめた。
 グドロの声が聞こえた。
 
「どうする? あと1点で負けちまうぜ?」

 続いて、ダモンの声が聞こえた。

「試合終了には早いな。未経験者の1年相手だ、こっちは移動魔法以外使わないつもりだったが。これ以上、意地を張ってられん。ガボー」

「わかったんだな。ちょっとプライドを曲げたとしても、ドルボッジ部として絶対に負けるわけにはいかないんだな」

 そして次の瞬間、ガボーが大声でほえるように叫んだ。
 聞き取れなかったけど、それは何かの呪文だったようだ。
 敵の陣地にたちこめていた霧が晴れた。
 ガボーが霧を吹き飛ばしてしまった。

「先輩達、あんな魔法使えたのかよ!」

 オッペンが叫んだその時。「<風砲弾>」というユウリの落ち着いた声が響き、風でできた大砲から、ボールが発射された。
 ボールはダモンめがけて高速で飛んでいく。

「オゴン!」

 ダモンがあごの前でボールをとめた、と思った瞬間、そのボールは、破裂した。
 それは、ボールじゃなかった。ユウリが作ったボールの大きさの水の塊だった。
 そして、次の瞬間、水塊の後ろに続いて発射されていた本物のボールが、間髪入れずにダモンの額にぶつかった。
 ボールは大きく跳ね返った。
 ドルボッジ場全体に、長いホイッスルが響き渡った。

《ゲームセット!》

 ドルボッジ・コートのアナウンスが響き、オッペンが跳び上りながらガッツポーズをして叫んだ。

「やった! 勝ったぜ!」

「勝った!」

 イーアも叫んだ。ユウリは冷静なままで、無言でただうなずいた。

「やられたな。まさかダミーを用意するとは。おもわず反応してしまった」

 水びたしの顔を腕でぬぐいながら、ダモンはいさぎよく負けを認めた。
 グドロはひざをつき、ぼうぜんとした表情でつぶやいた。

「まさか、俺達が、しろうとの1年相手に……」

 ガボーは両手を床についてうつむいたまま、うめくように言った。

「信じられないんだな。これは、きっと、悪夢なんだな……」

 マーカスははれあがった顔で、無言で歯ぎしりをしていた。
 オッペンが、打ちひしがれている先輩達とマーカスにむかって、元気よく言った。

「よっしゃ。約束通り、泣いて謝ってもらうぜ!」

 ところが、その時。
 突然、ドルボッジ場の扉が開き、雷のような怒鳴り声がとどろいた。

「おい! 何をやっている!」

 その声にびっくりして、ダモン達もイーア達も全員が振り返った。
 ドルボッジ場の入り口に、マジーラ先生が仁王立ちしていた。
 グドロがつぶやいた。

「げっ、監督……!」

 ドルボッジ部の3人は、マジーラ先生の姿に気づいたとたん、まるで人が変わったようにかしこまって直立不動の姿勢になった。

「マジーラ先生って、ドルボッジ部の監督だったのか!?」

 オッペンが大声でつぶやくと、ダモンたちが叫んだ。

「知らないのか!? 伝説のマジーラ選手を!」
「殿堂入り確実のドルボッジ選手なんだな!」
「ドルボッジ界のレジェンドだぞ!?」

 でも、すぐにダモンたちの声をかき消すほどのマジーラ先生の怒号が響いた。

「何をやっている! 1年はドルボッジ禁止だ!」

 なんと1年生はドルボッジ禁止だったらしい。イーアはもちろんまったく知らなかった。
 マジーラ先生はずんずんと入ってくると、さっと治癒魔法を唱えた。
 ボールでボコボコにされて変色していたオッペンとマーカスの顔が一瞬で元に戻っていった。
 それから、マジーラ先生は上級生たちの方を見て怒鳴った。

「ダモン! ガボー! グドロ! お前達は1年のドルボッジ禁止を知っているだろ!」

 3人はそくざに叫んだ。

「はい! すみませんでした!」

「罰としてランニング、校舎の周囲100周!」

 マジーラ先生の宣告を聞いて、(100周!?)とイーアは驚いたけど。

「はい! ありがとうございます!」

 ダモンたちはそう叫んで、ドルボッジ場から走って出て行った。
 イーアはユウリに近づきささやいた。

「先生に説明する?」

 イーア達は悪くないってことを、怒り狂っているマジーラ先生に説明した方がいいかもしれない。と、イーアは思ったけれど、ユウリはマジーラ先生と走り去る上級生たちの様子を観察しながら小声で言った。

「今はやめておこう」

 ユウリはとりあえず、ことの成り行きを見守る気のようだ。
 マジーラ先生はイーア達の方に振り返った。

「1年!」

「はい!」

 オッペンが反射的に元気よく返事をした。
 イーアは雷みたいな怒鳴り声が落ちてくるのを予想して緊張して待っていた。
 ところが、マジーラ先生は深くうなずきながら言った。

「ドルボッジはお前達にはまだ早い。だが、お前達のドルボッジにかける熱意はよくわかった。だから、1年のうちにドルボッジのためにやっておくトレーニングを教えよう」

 イーアは心の中で叫んだ。

(なんか誤解されてる!)

 マジーラ先生は、イーア達がドルボッジが好きすぎて試合をしちゃったドルボッジ大好きっ子だと誤解している。
 そのせいで先生は怒るどころか、むしろイーア達のドルボッジへの熱意に感心している様子だけど。
 マジーラ先生は熱心な、うれしそうな声で言った。

「1年の内にやるべきトレーニング、それは、移動魔法の反復練習による鍛錬たんれんと……筋トレだ! 魔力が尽きた時、最後に頼りになるのは、筋肉だ! ひょろひょろの体ではすぐにKOされるぞ! 筋肉の鎧を身につけろ! 試合をするのはそれからだ!」

 たしかに、ドルボッジ部の3人もマジーラ先生も筋肉の鎧を着ているような体だった。あの筋肉は、防御力をあげるためだったらしい。
 それから、マジーラ先生によるトレーニングメニューの説明がしばらく続いた後、イーア達はようやくドルボッジ場から解放された。

 その頃には外はすっかり暗くなっていた。
 ドルボッジ場を出るとすぐ、マーカスは悔しそうに「フンッ」と言って、うつむいたまま逃げるように走り去っていった。
 寮への帰り道、オッペンは上機嫌で言った。

「すっげー、気分いいな! おれ達の完全勝利だぜ!」

「そうだね」

 イーアはうなずいた。
 ちょうど、暗がりの中、罰のランニングで、えんえんと校舎の周囲を走っているダモンたちの姿が見えた。今となっては、ダモンたちがちょっとかわいそうに見える。

「今日はいっしょに試合できてよかったな!」

 オッペンはうれしそうだ。イーアもなんやかんやいって楽しかった。

「うん。楽しかったね」

 ユウリだけは、疲れきった声で言った。
 
「うーん……。ぼくは、ああいう激しいスポーツはちょっと……。それに、正直、ああいう体育会系で暑苦しい人達、苦手なんだ。あの先輩たちには、もう関わりたくないな」

「だいじょうぶだよ。学年が違うから、もう関わることはないよ」

 イーアはユウリにそう言った。


 ところが、翌日。イーアとユウリが食堂にいると、ドルボッジ部のダモン、ガボー、グドロがむこうからのしのしと歩いて近づいてきた。
 イーアは心の中で叫んだ。

(なんで? まさか、仕返しに!?)

 ダモン、ガボー、グドロの3人はイーア達のテーブルの前に立った。
 そして、3人はいきなり、食堂にひびき渡る大声で言った。

「エルツ、昨日はバカにして悪かった!」
「おまえは本当に天才だったんだな!」
「俺達がまちがってたぜ!」

 またケンカが再開するのかと思って身構えていたイーアは胸をなでおろした。

(なんだ……。3人ともユウリをバカにしたこと、わざわざ謝りにきたんだね)

 ダモンたちは、昨日の試合でユウリの実力を認めて、すっかり反省したようだ。食堂にいるみんながおどろいて振り返ってこっちを見ているから、なんだか恥ずかしいけれど。
 ユウリは落ち着いた声で言った。

「べつに、気にしないでください」

 すると、ダモンはさっと1枚の紙をユウリの前にさしだした。
 ダモン、ガボー、グドロは口々に大声で言った。

「エルツ、さすがの男っぷりだ。そして、さらに男を磨くために、ドルボッジ部に入らないか?」
「おまえら、とっても筋がいいんだな!」
「まだ試合には出られないが、今から鍛えれば来年には活躍できるぞ!」

 テーブルの上に置かれた紙は、ドルボッジ部の新入部員募集チラシだった!

(反省して……かんゆうしにきたの!?)

 ドルボッジ部の3人は、昨日の試合でユウリの実力を認めすぎて、部員に欲しくなっちゃったらしい。
 ユウリは心底困った表情で、イーアと顔をみあわせた。
 一瞬、イーアの脳裏に、ドルボッジ部に入ってムキムキマッチョになったユウリの姿が浮かんだ。イーアは思わず吹き出して笑ってしまった。

「ぼくは勉強でいそがしいので……」

 結局、ユウリはかんゆうを断ったけど。

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