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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~
第30話 占術の授業
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明日は学園祭だ。
グランドールでは学園祭前日は午前中だけ授業がある。
そして、イーア達のこの日最後の授業は占術の授業だった。
占術のシャヒーン先生は一風変わった先生だ。
シャヒーン先生は、かぎ鼻で悪い魔女っぽい顔をしている。ほうきみたいなぼさぼさの髪の毛を赤青紫に染めあげて、ビーズをたくさんつけている。服装もなんだか派手な色彩の風変りな柄の服で、ファッションセンスが良いのか悪いのかはよくわからないけど、とにかく個性的だった。
イーア達は今、先生の指示でグループごとに机をくっつけている。
机を動かしながらキャシーは言った。
「あたし、この授業好きだけど。ちょっと残念なんだよね」
「どうして?」
イーアがたずねるとキャシーは言った。
「だって、占術師って美人が多いことで有名だから、ずっと占術師に憧れてたの。だけど、この授業でシャヒーン先生を見るたびに、あたしの占術へのあこがれがガラガラと崩れていくんだもん。占術の先生って、どっちかというとシェリル先生みたいな先生を想像してたのに」
シェリル先生は自然魔法の若い先生で、清楚でお上品で、とてもきれいな女性だ。名前はちょっとだけ似ているけど、シャヒーン先生とは真逆な感じの先生だ。
さて、シャヒーン先生が授業を開始した。
「シャッシャッシャー。机はくっつけたね。じゃ、あんたたち、授業を始めるよ。今日はちゃんとロッタカードをもってきただろうね?」
今日の授業はカード占いだ。ロッタカードという占い用の絵がついたカードを使って占う。
イーアはロッタカードをカバンから取り出しながら言った。
「シャヒーン先生の授業って楽しいよね。おぼえることなくて。小テストとかなくて」
シャヒーン先生の授業はいつも占いの練習だ。楽しく占うだけでいいので、イーアはこの授業が好きだった。でも、キャシーは不安そうに言った。
「この授業、テストがどうなるのか予想がつかなくて、あたしは心配。この調子だと、きっと実技試験でしょ?」
アイシャがうなずきながら、のんびり言った。
「占術って、素質が9割っていうよねぇ。もうあきらめるしかないよねぇ」
占術は素質がほとんどだという話は、アイシャ達にとっては常識みたいだけど、イーアは初めて聞いた。
「そうなの? そういえば、ユウリも占いだけはあんまり得意じゃないね」
ユウリはうなずいた。
「うん。ぼくは教科書に書いてあることは全部覚えているけど、占いが当たったことなんて一度もないよ。頭で考えて推理や確率計算をした方がずっとよくあたる。たぶん、ぼくには占いの適性がないんだ」
そこで、オッペンがぽつりと意外なことを言った。
「そういや、おれ、占いの適性だけ高いっていわれたんだよな。推薦入試の時」
「じゃ、オッペンは占術師になるの?」
イーアがそうたずねると、オッペンは即答した。
「ぜってぇ、なんねーよ。おれは、バーンって強い攻撃魔法を使う魔導士になるんだからな。だいたい、俺はグランドールじゃなくて士官学校に入るつもりだったんだぜ? 母ちゃんが、あんたにまで戦場で死なれたら生きていけないって泣きつくから、グランドールにしたんだけどさ」
そこで、シャヒーン先生が言った。
「さぁさ、あんたら、ちっとお黙り。今日はグループに分かれてロッタ占いをするよ。あんた達がピーチクパーチク楽しくおしゃべりしてる間にやり方は黒板に書いといたよ。グループごとに、しゃしゃっとそこの図鑑をもっていきな。どうせあんた達はカードの意味なんて覚えてないんだから、図鑑を見ながら占うんだよ。あー、重たかった。おかげで、あたしゃ、すっかり腰がいたくなっちまったよ。図鑑の片付けはあんた達に頼もうかね」
イーアはカード占いの図鑑を取りに行った。
図鑑にはロッタカードのそれぞれの絵柄と組み合わせの意味が全部説明されていた。これを見れば、カードの意味を覚えていなくても占いの結果がちゃんとわかる。
イーア達はみんなでお互いを占って、楽しくロッタ占いの練習をした。
しばらくすると、シャヒーン先生は言った。
「さ、今度は、黒板に書いたやり方で、明日の自分の運命を4回占ってみな。素質のあるやつなら、2度は同じ結果がでるだろうよ。ま、そんな素質のあるやつはめったにいないから、気にするこたないけどね」
言われた通りに、イーア達は今度は自分の運勢占いを始めた。
イーアの占い結果は4回とも全然違う意味のカードが出て、完全にランダムにカードが出ている感じだった。
ユウリもカードを机に置いてなげいた。
「やっぱり当たりそうにないな。ぼくの占いは」
「でも、楽しいから別にいいよね」
むしろはずれるのがわかっている方が気楽に占えて楽しいから、イーアが笑顔でそう言っていると、オッペンがロッタ占いをしながら、首をかしげた。
「変だなぁ。なんどやっても、これがでるんだよなぁ」
「同じのが出たの?」
イーアがたずねると、オッペンはしかめっ面で言った。
「4回ぜんぶだよ。しかもさ、毎回このカードが出るんだぜ?」
オッペンがもっているカードは、大いなる危険や死を表す「死の使い」という不吉なカードだった。
そこで、シャヒーン先生が、授業の終わりを告げた。
「時間だから、今日はこれで終わりだよ。だけど帰る前に忘れずに図鑑をこの机に置いていくんだよ。じゃ、また来週。あ、そうそう、誰か図鑑を運ぶのを手伝っておくれ」
生徒達は一斉に片付けを始めた。
「ま、しょせん占いだもんな。よし。早く飯食いにいこーぜ」
オッペンは明るくそう言って、ロッタカードをしまった。
授業の後、ユウリはシャヒーン先生のために図鑑を片付けるお手伝いに行った。
イーアも手伝おうかと思ったけど、ユウリは一人で大丈夫だというので、イーアはキャシー達と先に食堂にむかった。
イーアがキャシー、アイシャと一緒に昼ご飯を食べていると、しばらくして、ユウリが食堂にやってきた。
「ユウリ、こっち、こっち!」
「あ、うん」
イーアが手を振ると、ユウリはイーアに気が付いたけど、少しぼーっとしていて、おぼんを持ったまま何か別のことを考えているような様子だった。ユウリが席につくと、イーアはたずねた。
「どうかしたの?」
「たいしたことじゃないんだけど。図鑑を運び終えた後、シャヒーン先生に報告をしに行ったんだ。そしたら、シャヒーン先生は水がめで水鏡占いをしていたみたいで……」
ユウリの話によると、シャヒーン先生は興奮した様子で、「見えた……見えたよ……不吉な……」とつぶやいて、ユウリの存在なんて見えていない様子で外にむかって走りだしたという。
ユウリが後をついていくと、シャヒーン先生は、廊下でマジーラ先生をつかまえて「学園祭を中止しな! 明日、不吉なことが起こるよ! 学園祭を中止にしないと生徒が危ない!」と言って騒いでいたらしい。
「え? じゃあ、学園祭、中止になっちゃうの?」
イーアがたずねると、ユウリは言った。
「どうかな。他の先生たちはシャヒーン先生の言うことをまったく信じてなさそうだったよ」
キャシーはフォークでパスタをからめとりながら言った。
「そりゃそうよ。占いとか予言って、超一流の占術師でも50パーセントくらいしか当たらないって言われてるもん。シャヒーン先生の占いじゃ、きっと、当たるの5パーセント以下でしょ?」
「でも、なんとなく、不気味だよぉ」
アイシャはそう言ってふるえた。
結局、その日、生徒達に学園祭中止の連絡がくることはなかった。
学園祭の準備は順調に進んで行き、イーアも、占いやシャヒーン先生のことなんて、すっかり忘れてしまった。
そして、学園祭は翌日、予定通りに開催された。
グランドールでは学園祭前日は午前中だけ授業がある。
そして、イーア達のこの日最後の授業は占術の授業だった。
占術のシャヒーン先生は一風変わった先生だ。
シャヒーン先生は、かぎ鼻で悪い魔女っぽい顔をしている。ほうきみたいなぼさぼさの髪の毛を赤青紫に染めあげて、ビーズをたくさんつけている。服装もなんだか派手な色彩の風変りな柄の服で、ファッションセンスが良いのか悪いのかはよくわからないけど、とにかく個性的だった。
イーア達は今、先生の指示でグループごとに机をくっつけている。
机を動かしながらキャシーは言った。
「あたし、この授業好きだけど。ちょっと残念なんだよね」
「どうして?」
イーアがたずねるとキャシーは言った。
「だって、占術師って美人が多いことで有名だから、ずっと占術師に憧れてたの。だけど、この授業でシャヒーン先生を見るたびに、あたしの占術へのあこがれがガラガラと崩れていくんだもん。占術の先生って、どっちかというとシェリル先生みたいな先生を想像してたのに」
シェリル先生は自然魔法の若い先生で、清楚でお上品で、とてもきれいな女性だ。名前はちょっとだけ似ているけど、シャヒーン先生とは真逆な感じの先生だ。
さて、シャヒーン先生が授業を開始した。
「シャッシャッシャー。机はくっつけたね。じゃ、あんたたち、授業を始めるよ。今日はちゃんとロッタカードをもってきただろうね?」
今日の授業はカード占いだ。ロッタカードという占い用の絵がついたカードを使って占う。
イーアはロッタカードをカバンから取り出しながら言った。
「シャヒーン先生の授業って楽しいよね。おぼえることなくて。小テストとかなくて」
シャヒーン先生の授業はいつも占いの練習だ。楽しく占うだけでいいので、イーアはこの授業が好きだった。でも、キャシーは不安そうに言った。
「この授業、テストがどうなるのか予想がつかなくて、あたしは心配。この調子だと、きっと実技試験でしょ?」
アイシャがうなずきながら、のんびり言った。
「占術って、素質が9割っていうよねぇ。もうあきらめるしかないよねぇ」
占術は素質がほとんどだという話は、アイシャ達にとっては常識みたいだけど、イーアは初めて聞いた。
「そうなの? そういえば、ユウリも占いだけはあんまり得意じゃないね」
ユウリはうなずいた。
「うん。ぼくは教科書に書いてあることは全部覚えているけど、占いが当たったことなんて一度もないよ。頭で考えて推理や確率計算をした方がずっとよくあたる。たぶん、ぼくには占いの適性がないんだ」
そこで、オッペンがぽつりと意外なことを言った。
「そういや、おれ、占いの適性だけ高いっていわれたんだよな。推薦入試の時」
「じゃ、オッペンは占術師になるの?」
イーアがそうたずねると、オッペンは即答した。
「ぜってぇ、なんねーよ。おれは、バーンって強い攻撃魔法を使う魔導士になるんだからな。だいたい、俺はグランドールじゃなくて士官学校に入るつもりだったんだぜ? 母ちゃんが、あんたにまで戦場で死なれたら生きていけないって泣きつくから、グランドールにしたんだけどさ」
そこで、シャヒーン先生が言った。
「さぁさ、あんたら、ちっとお黙り。今日はグループに分かれてロッタ占いをするよ。あんた達がピーチクパーチク楽しくおしゃべりしてる間にやり方は黒板に書いといたよ。グループごとに、しゃしゃっとそこの図鑑をもっていきな。どうせあんた達はカードの意味なんて覚えてないんだから、図鑑を見ながら占うんだよ。あー、重たかった。おかげで、あたしゃ、すっかり腰がいたくなっちまったよ。図鑑の片付けはあんた達に頼もうかね」
イーアはカード占いの図鑑を取りに行った。
図鑑にはロッタカードのそれぞれの絵柄と組み合わせの意味が全部説明されていた。これを見れば、カードの意味を覚えていなくても占いの結果がちゃんとわかる。
イーア達はみんなでお互いを占って、楽しくロッタ占いの練習をした。
しばらくすると、シャヒーン先生は言った。
「さ、今度は、黒板に書いたやり方で、明日の自分の運命を4回占ってみな。素質のあるやつなら、2度は同じ結果がでるだろうよ。ま、そんな素質のあるやつはめったにいないから、気にするこたないけどね」
言われた通りに、イーア達は今度は自分の運勢占いを始めた。
イーアの占い結果は4回とも全然違う意味のカードが出て、完全にランダムにカードが出ている感じだった。
ユウリもカードを机に置いてなげいた。
「やっぱり当たりそうにないな。ぼくの占いは」
「でも、楽しいから別にいいよね」
むしろはずれるのがわかっている方が気楽に占えて楽しいから、イーアが笑顔でそう言っていると、オッペンがロッタ占いをしながら、首をかしげた。
「変だなぁ。なんどやっても、これがでるんだよなぁ」
「同じのが出たの?」
イーアがたずねると、オッペンはしかめっ面で言った。
「4回ぜんぶだよ。しかもさ、毎回このカードが出るんだぜ?」
オッペンがもっているカードは、大いなる危険や死を表す「死の使い」という不吉なカードだった。
そこで、シャヒーン先生が、授業の終わりを告げた。
「時間だから、今日はこれで終わりだよ。だけど帰る前に忘れずに図鑑をこの机に置いていくんだよ。じゃ、また来週。あ、そうそう、誰か図鑑を運ぶのを手伝っておくれ」
生徒達は一斉に片付けを始めた。
「ま、しょせん占いだもんな。よし。早く飯食いにいこーぜ」
オッペンは明るくそう言って、ロッタカードをしまった。
授業の後、ユウリはシャヒーン先生のために図鑑を片付けるお手伝いに行った。
イーアも手伝おうかと思ったけど、ユウリは一人で大丈夫だというので、イーアはキャシー達と先に食堂にむかった。
イーアがキャシー、アイシャと一緒に昼ご飯を食べていると、しばらくして、ユウリが食堂にやってきた。
「ユウリ、こっち、こっち!」
「あ、うん」
イーアが手を振ると、ユウリはイーアに気が付いたけど、少しぼーっとしていて、おぼんを持ったまま何か別のことを考えているような様子だった。ユウリが席につくと、イーアはたずねた。
「どうかしたの?」
「たいしたことじゃないんだけど。図鑑を運び終えた後、シャヒーン先生に報告をしに行ったんだ。そしたら、シャヒーン先生は水がめで水鏡占いをしていたみたいで……」
ユウリの話によると、シャヒーン先生は興奮した様子で、「見えた……見えたよ……不吉な……」とつぶやいて、ユウリの存在なんて見えていない様子で外にむかって走りだしたという。
ユウリが後をついていくと、シャヒーン先生は、廊下でマジーラ先生をつかまえて「学園祭を中止しな! 明日、不吉なことが起こるよ! 学園祭を中止にしないと生徒が危ない!」と言って騒いでいたらしい。
「え? じゃあ、学園祭、中止になっちゃうの?」
イーアがたずねると、ユウリは言った。
「どうかな。他の先生たちはシャヒーン先生の言うことをまったく信じてなさそうだったよ」
キャシーはフォークでパスタをからめとりながら言った。
「そりゃそうよ。占いとか予言って、超一流の占術師でも50パーセントくらいしか当たらないって言われてるもん。シャヒーン先生の占いじゃ、きっと、当たるの5パーセント以下でしょ?」
「でも、なんとなく、不気味だよぉ」
アイシャはそう言ってふるえた。
結局、その日、生徒達に学園祭中止の連絡がくることはなかった。
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