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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~
第31話 学園祭の朝
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学園祭の朝がやってきた。
イーア達のクラスは今年は何もやらないから、イーアは一日中あちこちを見て回る予定だ。
学校の中はそこら中、学園祭の看板や飾りつけでいっぱいで、食堂に向かって歩いているだけでも、たくさんのお店が目にはいる。
イーアはわくわくしてきた。
オームの初等魔学校はとても小さな学校だったので、こんな立派な学園祭は見たことがなかった。
「学園祭たのしみだね」
イーアがそう言うと、キャシーは言った。
「うん、たのしみ。去年もアイシャといっしょに来たけど、グランドールの学園祭って見どころがたくさんあるから。そういえば、イーア、知ってる? 今年の学園祭のゲスト」
「だれかすごい人が来るの?」
イーアがたずねると、キャシーはびみょうそうな表情で言った。
「すごいことはすごいけど。あたし的にはいまいちかな。今年は帝国魔導省大臣で古代魔術の魔導師、ギルフレイ卿」
イーアは聞いたことのない人だった。
「なんかえらそうな人だね」
「そ。すごくえらい魔導師様。大貴族の銀髪のおじ様。大物ゲストではあるんだけど。もっと若くてかっこいい魔導師の方がよかったかも」
キャシーはゲストのことをあまり好きじゃないらしいけれど、アイシャはのんびり、うれしそうに言った。
「でも、ギルフレイ卿、かっこいいよぉー。イケオジって萌えるよねぇー」
その後、食堂で朝食のトーストとビーンズを食べながら、イーアはキャシーにたずねた。
「学園祭って、お客さんがたくさん来るんだよね? 今日は学校中人でいっぱいになるのかな?」
普段はグランドールは関係者以外立ち入り禁止で、生徒と教職員以外の人は敷地内にいない。
キャシーは指を折りながら言った。
「もちろん。生徒の保護者、将来受験を希望する子ども達、ただ遊びに来る人達、それに弟子を探しに魔導師までくるんだもん」
「魔導師も来るの?」
イーアが聞き返すと、キャシーは言った。
「学園祭で色んなコンテストが開催されるでしょ? それを見に来るの」
そういえば、そんなことをユウリも言っていた。
学園祭のコンテストでは生徒達が魔術の腕前を競う。今年は自然魔法の競技会、魔導語のスピーチ大会、魔法陣の作品出品会、等があるらしい。でも、召喚術のコンテストはないから、イーアの出番はなさそうだ。
「だから、グランドール生にとって学園祭は腕の見せ所。活躍すれば、魔導師からスカウトされるかも。といっても、あたしはまだ活躍できそうにないから、今年は見学するだけだけど。あーあ。奨学生試験で早々とガリ様に弟子入りしちゃったイーアはいいご身分よね」
キャシーはため息をつきながら言った。
「パパやママは、「魔術なんて勉強してないで、いい男を見つけてお嫁さんになって家庭を守るほうが女は幸せだ」なんて言うけど。あたしは、そんなのイヤ。女だからってあきらめたくないの。ちゃんと一流の魔導士になって活躍したいもん。そのために良い師匠を見つけないと」
イーアは不思議に思ってたずねた。
「キャシーのお父さんたちは、キャシーに立派な魔導士になってほしくないってこと?」
イーアには理解できなかった。イーアはナミンの家で「女の子だから、やめなさい」と言われたことは一度もなかった。
ナミン先生は、イーアにもユウリと同じように勉強させてきた。
同じように学校に行かせ、同じように学用品を買ったり受験するためのお金をくれた。イーアの勉強に費やさなければ、もっとみんなの食事や服を買うために使えたお金なのに。
ナミン先生はいつもユウリとイーアに「才能を最大限いかしなさい。生まれ持った素質に恵まれた君たちは幸運なんだ。だから素質を伸ばし、将来その力を、その幸運に恵まれなかったみんなのために使いなさい。そのために私は今、君たちを助けているんだ」と言っていた。
ユウリとイーアでは素質に差があるように思えて、イーアはいつも少し申し訳なく思っていたけれど、ふたりの扱いに差は全くなかった。
キャシーは口をとがらせて言った。
「そーよ。うちの親はグランドールに入るのだって、反対してたくらいだもん。勉強する女はかわいくないって。魔術の勉強なんかより花嫁修業させて、下級貴族かお金持ちとの玉の輿をねらおうって魂胆なの。いやんなっちゃう。結婚がすべてじゃないでしょ? でも、女は結婚がすべてだと思ってるの。うちの親は」
花嫁修業なんて言葉、イーアは聞いたこともなかった。たぶん、お金持ちの習慣なんだろう。
オームの庶民の女の子たちは、12才くらいから働いて、近くで働いている男の子たちと付き合いだして、大人になったら結婚していくのが標準コースだ。
そこで、アイシャがのんびりした口調で言った。
「うちのパパはねぇー。応援してくれたよー。アイシャの好きなようにするといいって。魔導士になるのもいいよー。グランドールでいいお婿さんを見つけるのもいいよーって」
「グランドールでいいお婿さん?」
キャシーの話よりさらに理解できなくて、イーアは首をかしげた。
キャシーはさらなるため息をついて言った。
「アイシャは学園恋愛にあこがれて進学したんだもんね。アイシャのパパって、ほんと優しくてうらやましい。結婚相手探しなら社交界デビューでしょ、って言わないで応援しちゃうんだもん。それに、アイシャはどう生きても人生、困らないもんね」
「そうなの?」
イーアが聞き返すと、キャシーはうなずいた。
「アイシャのパパって、あのボンペール商会の会長だもん。帝都の中心にボンペール・デパートがあるでしょ? でも、デパートだけじゃなくて、お菓子から兵器まで製造してる大会社なの。つまり、アイシャの家は帝国有数の大金持ち」
アイシャは「えへへー」と笑っていた。
そこで、ユウリとオッペンが食堂にやってきた。
オッペンは手に学園祭の冊子を持っている。
イーアはユウリにたずねた。
「今日はどうする?」
「ぼくは自然魔法のコンテストに出ないと。師匠が来るんだ。他の時間はいっしょにまわろう」
オッペンが学園祭の冊子を眺めながら言った。
「ドルボッジ大会もあるってよ。ダモン先輩たち、出るんだろーな」
あの一件の後、オッペンはなぜかダモンたちと仲良くなっていた。
ユウリはため息まじりに言った。
「あの人達にはもう関わりたくないよ。ドルボッジ場にだけは近づかないでおこう」
イーア達のクラスは今年は何もやらないから、イーアは一日中あちこちを見て回る予定だ。
学校の中はそこら中、学園祭の看板や飾りつけでいっぱいで、食堂に向かって歩いているだけでも、たくさんのお店が目にはいる。
イーアはわくわくしてきた。
オームの初等魔学校はとても小さな学校だったので、こんな立派な学園祭は見たことがなかった。
「学園祭たのしみだね」
イーアがそう言うと、キャシーは言った。
「うん、たのしみ。去年もアイシャといっしょに来たけど、グランドールの学園祭って見どころがたくさんあるから。そういえば、イーア、知ってる? 今年の学園祭のゲスト」
「だれかすごい人が来るの?」
イーアがたずねると、キャシーはびみょうそうな表情で言った。
「すごいことはすごいけど。あたし的にはいまいちかな。今年は帝国魔導省大臣で古代魔術の魔導師、ギルフレイ卿」
イーアは聞いたことのない人だった。
「なんかえらそうな人だね」
「そ。すごくえらい魔導師様。大貴族の銀髪のおじ様。大物ゲストではあるんだけど。もっと若くてかっこいい魔導師の方がよかったかも」
キャシーはゲストのことをあまり好きじゃないらしいけれど、アイシャはのんびり、うれしそうに言った。
「でも、ギルフレイ卿、かっこいいよぉー。イケオジって萌えるよねぇー」
その後、食堂で朝食のトーストとビーンズを食べながら、イーアはキャシーにたずねた。
「学園祭って、お客さんがたくさん来るんだよね? 今日は学校中人でいっぱいになるのかな?」
普段はグランドールは関係者以外立ち入り禁止で、生徒と教職員以外の人は敷地内にいない。
キャシーは指を折りながら言った。
「もちろん。生徒の保護者、将来受験を希望する子ども達、ただ遊びに来る人達、それに弟子を探しに魔導師までくるんだもん」
「魔導師も来るの?」
イーアが聞き返すと、キャシーは言った。
「学園祭で色んなコンテストが開催されるでしょ? それを見に来るの」
そういえば、そんなことをユウリも言っていた。
学園祭のコンテストでは生徒達が魔術の腕前を競う。今年は自然魔法の競技会、魔導語のスピーチ大会、魔法陣の作品出品会、等があるらしい。でも、召喚術のコンテストはないから、イーアの出番はなさそうだ。
「だから、グランドール生にとって学園祭は腕の見せ所。活躍すれば、魔導師からスカウトされるかも。といっても、あたしはまだ活躍できそうにないから、今年は見学するだけだけど。あーあ。奨学生試験で早々とガリ様に弟子入りしちゃったイーアはいいご身分よね」
キャシーはため息をつきながら言った。
「パパやママは、「魔術なんて勉強してないで、いい男を見つけてお嫁さんになって家庭を守るほうが女は幸せだ」なんて言うけど。あたしは、そんなのイヤ。女だからってあきらめたくないの。ちゃんと一流の魔導士になって活躍したいもん。そのために良い師匠を見つけないと」
イーアは不思議に思ってたずねた。
「キャシーのお父さんたちは、キャシーに立派な魔導士になってほしくないってこと?」
イーアには理解できなかった。イーアはナミンの家で「女の子だから、やめなさい」と言われたことは一度もなかった。
ナミン先生は、イーアにもユウリと同じように勉強させてきた。
同じように学校に行かせ、同じように学用品を買ったり受験するためのお金をくれた。イーアの勉強に費やさなければ、もっとみんなの食事や服を買うために使えたお金なのに。
ナミン先生はいつもユウリとイーアに「才能を最大限いかしなさい。生まれ持った素質に恵まれた君たちは幸運なんだ。だから素質を伸ばし、将来その力を、その幸運に恵まれなかったみんなのために使いなさい。そのために私は今、君たちを助けているんだ」と言っていた。
ユウリとイーアでは素質に差があるように思えて、イーアはいつも少し申し訳なく思っていたけれど、ふたりの扱いに差は全くなかった。
キャシーは口をとがらせて言った。
「そーよ。うちの親はグランドールに入るのだって、反対してたくらいだもん。勉強する女はかわいくないって。魔術の勉強なんかより花嫁修業させて、下級貴族かお金持ちとの玉の輿をねらおうって魂胆なの。いやんなっちゃう。結婚がすべてじゃないでしょ? でも、女は結婚がすべてだと思ってるの。うちの親は」
花嫁修業なんて言葉、イーアは聞いたこともなかった。たぶん、お金持ちの習慣なんだろう。
オームの庶民の女の子たちは、12才くらいから働いて、近くで働いている男の子たちと付き合いだして、大人になったら結婚していくのが標準コースだ。
そこで、アイシャがのんびりした口調で言った。
「うちのパパはねぇー。応援してくれたよー。アイシャの好きなようにするといいって。魔導士になるのもいいよー。グランドールでいいお婿さんを見つけるのもいいよーって」
「グランドールでいいお婿さん?」
キャシーの話よりさらに理解できなくて、イーアは首をかしげた。
キャシーはさらなるため息をついて言った。
「アイシャは学園恋愛にあこがれて進学したんだもんね。アイシャのパパって、ほんと優しくてうらやましい。結婚相手探しなら社交界デビューでしょ、って言わないで応援しちゃうんだもん。それに、アイシャはどう生きても人生、困らないもんね」
「そうなの?」
イーアが聞き返すと、キャシーはうなずいた。
「アイシャのパパって、あのボンペール商会の会長だもん。帝都の中心にボンペール・デパートがあるでしょ? でも、デパートだけじゃなくて、お菓子から兵器まで製造してる大会社なの。つまり、アイシャの家は帝国有数の大金持ち」
アイシャは「えへへー」と笑っていた。
そこで、ユウリとオッペンが食堂にやってきた。
オッペンは手に学園祭の冊子を持っている。
イーアはユウリにたずねた。
「今日はどうする?」
「ぼくは自然魔法のコンテストに出ないと。師匠が来るんだ。他の時間はいっしょにまわろう」
オッペンが学園祭の冊子を眺めながら言った。
「ドルボッジ大会もあるってよ。ダモン先輩たち、出るんだろーな」
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