もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

文字の大きさ
36 / 207
第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~

第36話 グランドールの地下

しおりを挟む
 グランドールの地下は暗かった。
 イーアは『友契の書』を取り出し、ラプラプを召喚した。
 イーアの周りの空中に白い光の球のようなものがいくつか出現し、辺りを照らしだした。
 光っている時はまぶしくて良く見えないけど、ラプラプは体がランプのように光っている小さな妖精だ。

 イーアとオッペンは地下の廊下を歩いて行った。
 地下は陰気な迷宮のような場所だった。
 壁はほとんど石でできていて、ところどころに、ドアが朽ち果てなくなっている部屋の入り口や、さび付いて押しても引いても開かない鉄のとびらがあった。
 ドアがない部屋の中では部屋中に蜘蛛の巣が張り、ネズミが走り回っている。
 どの部屋も、もう何年も人が出入りしている様子はない。
 オッペンは全身を震わせて言った。

「ここ、ほんとに学校かよ。まるでおばけ屋敷みてぇじゃん」

「うん。ここは、人が生活する所じゃないね」

 リグナムが掃除をさぼっているウェルグァンダルだって、これよりはずっとましだ。
 ふだん生徒達みんなが生活をしている教室やろう下のすぐ下に、こんな場所があったなんてイーアには信じられなかった。
 地下の空間は広大で、灰色の冷たい石壁がどこまでも続いていた。
 時には不気味な甲虫やムカデが壁面を這いまわり、床をネズミが走り去って行く。歩いていると、たまに蜘蛛の巣が顔に引っかかった。

(ここは気色悪いから、もう帰ろうかな……)

 イーアがそう思ってオッペンに提案しようとした時。
 叫び声が聞こえた。

「おい、今のなんだ!?」

「しぃっ。静かに」

 イーアはオッペンを黙らせ、耳をすました。声が聞こえた。

 「やっぱり、出たね! この、強盗どもめ!」

 この耳ざわりなガラガラ声には聞き覚えがあった。イーアとオッペンは思わず叫んだ。

「シャヒーン先生!」
「強盗!?」

 ふたりはうなずきあい、声が聞こえた方に走り出した。
 イーア達が走り出してすぐ、なにかがぶつかる衝撃音が聞こえた。
 足の速いオッペンがイーアの先を走っていった。
 やがて、オッペンが急にたちどまった。
 
 イーアは立ち尽くすオッペンに追いつき、横に立った。
 壁にはりつくように広がったシャヒーン先生の派手な髪の毛が見えた。
 おくれてやってきたラプラプがイーアに追いつき追い越して前方にある壁を照らしだした。
 ラプラプの光で、シャヒーン先生の姿がはっきりと照らしだされた。
 シャヒーン先生の頭上の壁には血痕がべったりとついていた。
 壁にもたれかかるように力なく座るシャヒーン先生は、頭から血を流し白目をむいていた。

「シャヒーン先生!」

 イーアはシャヒーン先生に駆け寄った。イーアが肩にふれると、シャヒーン先生の体は床に崩れ落ちた。
 「先生が殺されちまった……」と、オッペンはぼうぜんとつぶやいた。
 だけど、イーアは冷静にシャヒーン先生の口に耳を近づけた。
 吐く息が耳に触れた。息はしている。まだ生きている。シャヒーン先生は気絶しているだけだ。

『カンパベル、来て!』

 イーアは『友契の書』を使ってカンパベルという妖花を召喚した。
 カンパベルには白い袋のような花が咲く。その花の中にたまったどろっとした蜜は薬効の強い傷薬になる。
 ただし、カンパベルはいつも周囲の生き物からちょっとずつ生気を吸い取ってしまう上に、死期の近い老人や病人が傍にいると、カンパベルの花から鐘のような音が鳴り魂が吸い取られてしまうと伝えられていた。役に立つけど少し怖い妖花だ。
 イーアはカンパベルの花の蜜をシャヒーン先生の後頭部の傷口にぬりつけた。これで頭部からの出血はとまるだろう。

 イーアがシャヒーン先生に応急処置をしている間も、どこかから走り去る強盗の足音らしき音が響いていた。
 
「犯人を追いかけるぞ! 先生の仇を討ってやる!」

 そう言ってオッペンが走り出した。
 イーアはあわてて叫んだ。

「オッペン、待って! ひとりじゃ危ないよ!」

 オッペンはとまらなかった。廊下の先の暗闇にむかって一目散に走っている。
 イーアは気絶したままのシャヒーン先生を前に一瞬ためらった。
 だけど、すぐにオッペンを追いかける決心をした。
 オッペンをひとりで行かせるわけにはいかない。
 イーアの直感は不気味に確信していた。
 今、オッペンをひとりで行かせれば、オッペンは殺される。

 イーアはオッペンを追いかけ走り出した。
 通路の先は二手に分かれていた。
 オッペンはためらわずに右に曲がった。
 オッペンは走り続け、イーアはオッペンを追いかけ続けた。
 犯人の姿は見えないけれど、オッペンは分かれ道になっても迷いなく走り続けていた。
 オッペンはたぶんただのカンで行き先を選んでいるはずだ。だけど、占いの素質が高い人のカンは、ただのカンではない。

 やがて長い下りの階段が続く場所に出た。
 長い長い階段の終着点の先は平たんな通路で、左手に壁がない場所があるみたいだった。どこかへの入り口のようだ。
 オッペンはすでに階段のふもとにいた。直進すれば、また上りの階段がはじまるけれど、オッペンは左の入り口へと進んで行った。
 イーアは急いで階段を駆け下り、オッペンが消えていった左手の空間へと向かった。

 そこにはアーチ型の入り口があり、その先は大広間のように大きくひらけた場所になっていた。
 天井は高く、両脇の石の壁には同じかんかくで装飾のほどこされた石の柱が並んでいて、高い場所には窓のようなくぼみが並んでいた。
 そしてその大広間の真ん中に、ランプが置かれており、その横に白ずくめの服装の何者かが立っていた。 
 白いフードをかぶり、銀色の仮面をかぶっているため、顔は見えない。
 白いローブには奇妙な形の十字が光っていた。
 あの白いローブとあの奇妙なマークには見覚えがある。
 間違いない。
 あれはガネンの民をおそった、あの白装束だ。

 イーアの脳内で、血と炎と叫び声が響きだし、ガネンの森の惨劇がよみがえっていった。
 ガンガンと脳内と心臓を打ち付ける痛みが、イーアに告げていた。

 逃げろ。でなければ、殺される。

 今のイーアでは白装束の魔導士相手に勝ち目はない。
 逃げなければいけない。
 だけど、オッペンはすでに大広間の中に歩を進めていた。
 イーアはオッペンにむかって必死に叫んだ。

「オッペン。戻って!」

「変なかっこうの強盗だな……」

 そうオッペンがつぶやいた時。
 風が走り抜けた。
 そして、オッペンの姿が消えた。

「オッペン?」

 オッペンの体は、大広間の天井に打ち付けられていた。
 ゆっくりとオッペンの体が天井からはがれ、床へと落下した。
 床に落ちたオッペンは、手足が奇妙な形に曲がったままピクリとも動かなかった。
 イーアはオッペンのもとへかけよろうとした。
 だけど、走り出そうとした瞬間、イーアは黒い突風のようなものが今度は自分めがけて突進してくるのを感じた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...