もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

文字の大きさ
42 / 207
第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~

第42話 青いチルラン

しおりを挟む
 ホムホムに案内されながら暗い森の中をイーアは歩いて行った。
 ラプラプのあかりのおかげで辺りの様子はわかるけど、夜の森は少し怖かった。
 ガネンの森に危険な猛獣はいないと知ってはいるけれど、何が出てくるかわからない闇はやっぱり怖い。

 やがて、イーアは大きな洞窟の入り口にやってきた。
 洞窟の入り口には崩れた岩が散乱していた。まるで洞窟の入り口付近の岩が激しい力で破壊された跡のように。
 イーアは散乱する岩を乗り越えて洞窟の中に入った。その先の地面には石のタイルがしきつめられていた。
 洞窟の中にはチルランがたくさん浮いている。
 ティトが『チルランのたまり場』と呼んでいたように、今はここはチルランが集まる場所になっているみたいだ。
 オレンジ色のチルランのあかりが至る所に光っていてきれいだった。

 チルランが漂う中を進んでいくと、石の柱が二列になって並んでいる場所にやってきた。
 石の柱はあきらかに自然の岩ではない。人工物だ。でも、かなり古いもののようだ。
 石柱の多くは崩れたり倒れたりしている。
 ラプラプのあかりが照らしだす石柱の表面には、模様のような文字のような装飾が刻まれている。

 イーアが石柱の間を進んで行くと、やがて奥にある祭壇のようなものが見えてきた。
 祭壇の中心には大きな石像があった。さらに近づくと、それは細かい装飾がほどこされたラシュトの顔の石像だということがわかった。
 イーアは近くによって、石の祭壇に彫りこまれた装飾を観察した。

(この模様、ちょっと魔法陣に似ている……)

 ただし、イーアが知っている魔法陣の記号とはちょっと違った。まったく知らない記号や模様も多い。
 いずれにせよ、ただの装飾ではなさそうだ。
 イーアは振り返り、近くにあった石柱も観察した。
 やはりところどころに魔法陣に使う記号のようなものが刻まれていた。
 それに、文字のようなものも刻まれている。
 イーアはその文字をよく見た。かなりすり減ったり欠けたりしているけど、文字の形は見分けることができた。

(この文字、魔導語に似ているかも。ちょっと違うけど……)

 少なくとも、刻まれている文字は精霊語ではない。

『なんでだろ。こんな言葉、ガネンの森のみんなは使ってないのに』

 イーアが精霊語でつぶやくと、周囲にいるホムホムやチルランが、イーアに同意するようにふよふよと動いた。
 
 祭壇の前で浮かんでいたチルランがひとり、ラシュトの顔の彫刻の口の部分へと入っていった。
 イーアはラシュトの石像の口の中をのぞきこんだ。
 そこには穴があいていた。
 穴の中はチルランのほのかなオレンジ色のあかりで照らしだされていて、そこにも緻密な模様が刻みこまれているのがわかった。
 まるで、魔術の道具みたいに見える。
 この石像、いや、この祭壇とこの空間全体が、何かの魔術の装置だったのかもしれない。
 中に入って行ったチルランは、しばらくすると、またふよふよと出てきた。

『ひょっとして、みんなが大事にしていた石って、ここに保管されていたのかな?』

 チルランたちはまるで同意するようにふよふよと動いているような気がする。
 だけど、チルランはしゃべってくれるわけでないので、はっきりしたことはわからない。
 これ以上、今ここでわかることはなさそうだ。

『帰ろっか』

 イーアは帰ることにした。ところが、その時、イーアはふと、すみっこの方でチルランたちが変な動きをしているのに気がついた。
 たくさんのチルランが何かを囲んで攻撃するような動きをしていた。
 普段はチルランが誰かを攻撃することなんてないのに。
 その隅から、まるで泣いているような音が聞こえていた。

『チルチル……チルチル……』
 
 イーアはチルランが集まっている方へ近づいた。
 オレンジ色の光を放つチルランたちをかきわけてみると、すみっこの岩の間に青白いチルランが隠れていた。

(このチルラン、青い? ひとりだけ色が違う?)
 
 青いチルランの形は他のチルランと同じだ。
 チルランには頭があって、翼みたいに見える横につき出た部分があって、下の方は先細のしっぽみたいな形になっている。
 チルランの全身は半透明の白っぽい色だけど、ちょうど胸のあたりに、ふつうのチルランは丸いオレンジ色に光る部分がある。
 でも、このチルランは、その部分が青かった。

 ふつうのオレンジ色のチルランたちは青いチルランをいじめるように、周囲を囲んで荒っぽく動いていた。

『色がちがうからって、いじめちゃだめだよ』

 イーアはチルランをかきわけ、岩の割れ目に隠れている青いチルランに手をのばし、両手で囲うようにして取り出した。
 イーアが青いチルランを連れだすと、オレンジ色のチルランたちは、何事もなかったように洞窟の隅から離れて行き、いつものようにあたりをのんびり漂いだした。

『もう!』

 イーアは青いチルランを手の中にいれたまま、来た道を戻って、洞窟の入り口へと向かった。

『いっしょにティトのところに行こ。ティトが守ってくれるよ』

 イーアは青いチルランにそう言った。
 だけど、イーアが洞窟の外に出たところで、夜空に奇妙なひし形の光が出現した。
 そして、『友契の書』の声が聞こえた。

『召喚士イーア。時間です』

 次の瞬間、イーアは空のひし形のゲートに向かって吸いこまれていくように感じた。
 気がついた時には、イーアは自分の部屋に戻っていた。

(召喚されるのって、こんな感じなんだ……)

 奇妙な感覚だった。
 それはそうと、イーアは自分の肩を見た。さっきまで肩のところで辺りを照らしだしてくれていたラプラプはもういない。
 イーアの前に浮かんで案内してくれていたホムホムもいない。
 でも……。

『チルチル……チルチル……』

 手の中には青いチルランがいた。

『いっしょに来ちゃったね。どうする? 帰る?』

 きっと『友契の書』に頼めばチルランをもといた場所にかえすことができるはずだ。
 でも、青いチルランはぜんぜん帰る気がなさそうに、ベッドの上をふらふらと飛んでいき、枕とかけ布団のあいだにもぐりこんでいった。

『帰りたくないの? ……ま、いっか』

 イーアはこのまま青いチルランを放置することにした。
 チルランの召喚状態を維持するのに魔力は使わない。減った分の魔力を常にチルランが回復してくれるから。

『ティトも無事だったし。よかった、よかった。わたしも寝よっと』

 安心して、イーアは着替えてベッドにもぐりこんだ。今日は色々あった長い一日だったから、イーアはあっという間に眠りに落ちた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...