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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~
第42話 青いチルラン
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ホムホムに案内されながら暗い森の中をイーアは歩いて行った。
ラプラプのあかりのおかげで辺りの様子はわかるけど、夜の森は少し怖かった。
ガネンの森に危険な猛獣はいないと知ってはいるけれど、何が出てくるかわからない闇はやっぱり怖い。
やがて、イーアは大きな洞窟の入り口にやってきた。
洞窟の入り口には崩れた岩が散乱していた。まるで洞窟の入り口付近の岩が激しい力で破壊された跡のように。
イーアは散乱する岩を乗り越えて洞窟の中に入った。その先の地面には石のタイルがしきつめられていた。
洞窟の中にはチルランがたくさん浮いている。
ティトが『チルランのたまり場』と呼んでいたように、今はここはチルランが集まる場所になっているみたいだ。
オレンジ色のチルランのあかりが至る所に光っていてきれいだった。
チルランが漂う中を進んでいくと、石の柱が二列になって並んでいる場所にやってきた。
石の柱はあきらかに自然の岩ではない。人工物だ。でも、かなり古いもののようだ。
石柱の多くは崩れたり倒れたりしている。
ラプラプのあかりが照らしだす石柱の表面には、模様のような文字のような装飾が刻まれている。
イーアが石柱の間を進んで行くと、やがて奥にある祭壇のようなものが見えてきた。
祭壇の中心には大きな石像があった。さらに近づくと、それは細かい装飾がほどこされたラシュトの顔の石像だということがわかった。
イーアは近くによって、石の祭壇に彫りこまれた装飾を観察した。
(この模様、ちょっと魔法陣に似ている……)
ただし、イーアが知っている魔法陣の記号とはちょっと違った。まったく知らない記号や模様も多い。
いずれにせよ、ただの装飾ではなさそうだ。
イーアは振り返り、近くにあった石柱も観察した。
やはりところどころに魔法陣に使う記号のようなものが刻まれていた。
それに、文字のようなものも刻まれている。
イーアはその文字をよく見た。かなりすり減ったり欠けたりしているけど、文字の形は見分けることができた。
(この文字、魔導語に似ているかも。ちょっと違うけど……)
少なくとも、刻まれている文字は精霊語ではない。
『なんでだろ。こんな言葉、ガネンの森のみんなは使ってないのに』
イーアが精霊語でつぶやくと、周囲にいるホムホムやチルランが、イーアに同意するようにふよふよと動いた。
祭壇の前で浮かんでいたチルランがひとり、ラシュトの顔の彫刻の口の部分へと入っていった。
イーアはラシュトの石像の口の中をのぞきこんだ。
そこには穴があいていた。
穴の中はチルランのほのかなオレンジ色のあかりで照らしだされていて、そこにも緻密な模様が刻みこまれているのがわかった。
まるで、魔術の道具みたいに見える。
この石像、いや、この祭壇とこの空間全体が、何かの魔術の装置だったのかもしれない。
中に入って行ったチルランは、しばらくすると、またふよふよと出てきた。
『ひょっとして、みんなが大事にしていた石って、ここに保管されていたのかな?』
チルランたちはまるで同意するようにふよふよと動いているような気がする。
だけど、チルランはしゃべってくれるわけでないので、はっきりしたことはわからない。
これ以上、今ここでわかることはなさそうだ。
『帰ろっか』
イーアは帰ることにした。ところが、その時、イーアはふと、すみっこの方でチルランたちが変な動きをしているのに気がついた。
たくさんのチルランが何かを囲んで攻撃するような動きをしていた。
普段はチルランが誰かを攻撃することなんてないのに。
その隅から、まるで泣いているような音が聞こえていた。
『チルチル……チルチル……』
イーアはチルランが集まっている方へ近づいた。
オレンジ色の光を放つチルランたちをかきわけてみると、すみっこの岩の間に青白いチルランが隠れていた。
(このチルラン、青い? ひとりだけ色が違う?)
青いチルランの形は他のチルランと同じだ。
チルランには頭があって、翼みたいに見える横につき出た部分があって、下の方は先細のしっぽみたいな形になっている。
チルランの全身は半透明の白っぽい色だけど、ちょうど胸のあたりに、ふつうのチルランは丸いオレンジ色に光る部分がある。
でも、このチルランは、その部分が青かった。
ふつうのオレンジ色のチルランたちは青いチルランをいじめるように、周囲を囲んで荒っぽく動いていた。
『色がちがうからって、いじめちゃだめだよ』
イーアはチルランをかきわけ、岩の割れ目に隠れている青いチルランに手をのばし、両手で囲うようにして取り出した。
イーアが青いチルランを連れだすと、オレンジ色のチルランたちは、何事もなかったように洞窟の隅から離れて行き、いつものようにあたりをのんびり漂いだした。
『もう!』
イーアは青いチルランを手の中にいれたまま、来た道を戻って、洞窟の入り口へと向かった。
『いっしょにティトのところに行こ。ティトが守ってくれるよ』
イーアは青いチルランにそう言った。
だけど、イーアが洞窟の外に出たところで、夜空に奇妙なひし形の光が出現した。
そして、『友契の書』の声が聞こえた。
『召喚士イーア。時間です』
次の瞬間、イーアは空のひし形のゲートに向かって吸いこまれていくように感じた。
気がついた時には、イーアは自分の部屋に戻っていた。
(召喚されるのって、こんな感じなんだ……)
奇妙な感覚だった。
それはそうと、イーアは自分の肩を見た。さっきまで肩のところで辺りを照らしだしてくれていたラプラプはもういない。
イーアの前に浮かんで案内してくれていたホムホムもいない。
でも……。
『チルチル……チルチル……』
手の中には青いチルランがいた。
『いっしょに来ちゃったね。どうする? 帰る?』
きっと『友契の書』に頼めばチルランをもといた場所にかえすことができるはずだ。
でも、青いチルランはぜんぜん帰る気がなさそうに、ベッドの上をふらふらと飛んでいき、枕とかけ布団のあいだにもぐりこんでいった。
『帰りたくないの? ……ま、いっか』
イーアはこのまま青いチルランを放置することにした。
チルランの召喚状態を維持するのに魔力は使わない。減った分の魔力を常にチルランが回復してくれるから。
『ティトも無事だったし。よかった、よかった。わたしも寝よっと』
安心して、イーアは着替えてベッドにもぐりこんだ。今日は色々あった長い一日だったから、イーアはあっという間に眠りに落ちた。
ラプラプのあかりのおかげで辺りの様子はわかるけど、夜の森は少し怖かった。
ガネンの森に危険な猛獣はいないと知ってはいるけれど、何が出てくるかわからない闇はやっぱり怖い。
やがて、イーアは大きな洞窟の入り口にやってきた。
洞窟の入り口には崩れた岩が散乱していた。まるで洞窟の入り口付近の岩が激しい力で破壊された跡のように。
イーアは散乱する岩を乗り越えて洞窟の中に入った。その先の地面には石のタイルがしきつめられていた。
洞窟の中にはチルランがたくさん浮いている。
ティトが『チルランのたまり場』と呼んでいたように、今はここはチルランが集まる場所になっているみたいだ。
オレンジ色のチルランのあかりが至る所に光っていてきれいだった。
チルランが漂う中を進んでいくと、石の柱が二列になって並んでいる場所にやってきた。
石の柱はあきらかに自然の岩ではない。人工物だ。でも、かなり古いもののようだ。
石柱の多くは崩れたり倒れたりしている。
ラプラプのあかりが照らしだす石柱の表面には、模様のような文字のような装飾が刻まれている。
イーアが石柱の間を進んで行くと、やがて奥にある祭壇のようなものが見えてきた。
祭壇の中心には大きな石像があった。さらに近づくと、それは細かい装飾がほどこされたラシュトの顔の石像だということがわかった。
イーアは近くによって、石の祭壇に彫りこまれた装飾を観察した。
(この模様、ちょっと魔法陣に似ている……)
ただし、イーアが知っている魔法陣の記号とはちょっと違った。まったく知らない記号や模様も多い。
いずれにせよ、ただの装飾ではなさそうだ。
イーアは振り返り、近くにあった石柱も観察した。
やはりところどころに魔法陣に使う記号のようなものが刻まれていた。
それに、文字のようなものも刻まれている。
イーアはその文字をよく見た。かなりすり減ったり欠けたりしているけど、文字の形は見分けることができた。
(この文字、魔導語に似ているかも。ちょっと違うけど……)
少なくとも、刻まれている文字は精霊語ではない。
『なんでだろ。こんな言葉、ガネンの森のみんなは使ってないのに』
イーアが精霊語でつぶやくと、周囲にいるホムホムやチルランが、イーアに同意するようにふよふよと動いた。
祭壇の前で浮かんでいたチルランがひとり、ラシュトの顔の彫刻の口の部分へと入っていった。
イーアはラシュトの石像の口の中をのぞきこんだ。
そこには穴があいていた。
穴の中はチルランのほのかなオレンジ色のあかりで照らしだされていて、そこにも緻密な模様が刻みこまれているのがわかった。
まるで、魔術の道具みたいに見える。
この石像、いや、この祭壇とこの空間全体が、何かの魔術の装置だったのかもしれない。
中に入って行ったチルランは、しばらくすると、またふよふよと出てきた。
『ひょっとして、みんなが大事にしていた石って、ここに保管されていたのかな?』
チルランたちはまるで同意するようにふよふよと動いているような気がする。
だけど、チルランはしゃべってくれるわけでないので、はっきりしたことはわからない。
これ以上、今ここでわかることはなさそうだ。
『帰ろっか』
イーアは帰ることにした。ところが、その時、イーアはふと、すみっこの方でチルランたちが変な動きをしているのに気がついた。
たくさんのチルランが何かを囲んで攻撃するような動きをしていた。
普段はチルランが誰かを攻撃することなんてないのに。
その隅から、まるで泣いているような音が聞こえていた。
『チルチル……チルチル……』
イーアはチルランが集まっている方へ近づいた。
オレンジ色の光を放つチルランたちをかきわけてみると、すみっこの岩の間に青白いチルランが隠れていた。
(このチルラン、青い? ひとりだけ色が違う?)
青いチルランの形は他のチルランと同じだ。
チルランには頭があって、翼みたいに見える横につき出た部分があって、下の方は先細のしっぽみたいな形になっている。
チルランの全身は半透明の白っぽい色だけど、ちょうど胸のあたりに、ふつうのチルランは丸いオレンジ色に光る部分がある。
でも、このチルランは、その部分が青かった。
ふつうのオレンジ色のチルランたちは青いチルランをいじめるように、周囲を囲んで荒っぽく動いていた。
『色がちがうからって、いじめちゃだめだよ』
イーアはチルランをかきわけ、岩の割れ目に隠れている青いチルランに手をのばし、両手で囲うようにして取り出した。
イーアが青いチルランを連れだすと、オレンジ色のチルランたちは、何事もなかったように洞窟の隅から離れて行き、いつものようにあたりをのんびり漂いだした。
『もう!』
イーアは青いチルランを手の中にいれたまま、来た道を戻って、洞窟の入り口へと向かった。
『いっしょにティトのところに行こ。ティトが守ってくれるよ』
イーアは青いチルランにそう言った。
だけど、イーアが洞窟の外に出たところで、夜空に奇妙なひし形の光が出現した。
そして、『友契の書』の声が聞こえた。
『召喚士イーア。時間です』
次の瞬間、イーアは空のひし形のゲートに向かって吸いこまれていくように感じた。
気がついた時には、イーアは自分の部屋に戻っていた。
(召喚されるのって、こんな感じなんだ……)
奇妙な感覚だった。
それはそうと、イーアは自分の肩を見た。さっきまで肩のところで辺りを照らしだしてくれていたラプラプはもういない。
イーアの前に浮かんで案内してくれていたホムホムもいない。
でも……。
『チルチル……チルチル……』
手の中には青いチルランがいた。
『いっしょに来ちゃったね。どうする? 帰る?』
きっと『友契の書』に頼めばチルランをもといた場所にかえすことができるはずだ。
でも、青いチルランはぜんぜん帰る気がなさそうに、ベッドの上をふらふらと飛んでいき、枕とかけ布団のあいだにもぐりこんでいった。
『帰りたくないの? ……ま、いっか』
イーアはこのまま青いチルランを放置することにした。
チルランの召喚状態を維持するのに魔力は使わない。減った分の魔力を常にチルランが回復してくれるから。
『ティトも無事だったし。よかった、よかった。わたしも寝よっと』
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