もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~

第46話 アルバイト

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 シャヒーン先生の部屋を出て裏庭に出た後、イーアはオッペンとユウリにたずねた。

「犯人を探すって、どうすればいいと思う? 犯人は先生たちの中にいるんだよね?」

 ユウリは首をかしげながらつぶやいた。

「うん。だけど、シャヒーン先生、なんでぼくらにこんなことを頼むんだろう? 大人に頼むべきだよ」

「シャヒーン先生、友達いねぇんだよ。変人だから」

 そうオッペンは言ったけど、なんだかシャヒーン先生も怪しいような気がしてくる。
 ユウリは言った。

「とにかく、まずは情報収集が必要だと思う。<白光の魔導士団>の情報と、先生たちの情報を集めよう」

 面倒くさい作業が嫌いなオッペンは言った。

「でも、調べるの大変だぜ? つーかさ。絶対、あいつが犯人だよ。ほら、ヘゲル。きっとヘゲルだぜ。あいつ、おれのこと、むちゃくちゃ嫌ってるだろ。だから、おれを殺そうとしたんだよ」

「それだけじゃ、理由にならないよ。オッペンが地下に入ったのは偶然だし、ヘゲル先生がオッペンに冷たいのは、最初の授業の時にいきなり居眠りするから、目をつけられたんだよ」

 イーアもうなずいた。

「それより、<白光の魔導士団>について、調べようよ」

 イーアは一刻も早く、白装束の魔導士たち、<白光の魔導士団>について、もっと多くの情報を知りたかった。
 ユウリはうなずいた。

「うん。それじゃ、まずは図書館で調べよう」

 だけど、イーアはそこで思い出した。

「あ、でも! 今って、何時?」

 ユウリはポケットから懐中時計を取り出した。この見るからに高価な時計も、ユウリの師匠からのプレゼントだ。

「もうすぐ4時半だよ」

 それを聞いて、イーアはあわてた。

「バイトの時間だ! 行かなきゃ!」

「バイト? じゃ、<白光の魔導士団>は、ぼくが調べておくよ」

「うん、よろしく。またあとでね!」

 イーアは調査をユウリに任せて、アルバイトの集合場所のバラ園に向かって走っていった。

 グランドールにはアルバイト募集の掲示板があって、学内で募集中のアルバイトが掲載される。
 時給は安いけど、休み時間や放課後に気軽に働けてすぐにお金がもらえるから、貧乏学生にとってはありがたい。
 イーアが昨日、掲示板を見た時には、食堂のアルバイトと庭整備のアルバイトが募集中だった。
 どっちにしようか迷ったけど、外の方が楽しそうだと思って、イーアは今日の4時半集合の庭師助手バイトに申しこんだのだ。

 イーアが集合場所のバラ園前に行くと、ちょっと強面の庭師の男が、しかめっ面でほうきを持って待っていた。

「こんにちは! アルバイトのイーアです」

 イーアがあいさつすると、庭師はしかめっ面のまま言った。どうやら、この人はいつもこういう表情みたいだ。

「おう。俺は庭師のヘクトルだ。今日は落ち葉を掃いてくれ。貴族寮の周りはいつもきれいにしておかないと苦情がくるんだ。寮から校舎の間の道と、それが終わったら、寮の周辺の落ち葉を掃除してくれ。まじめに仕事をしてくれよ」

 イーア達の寮の周辺はずっと落ち葉だらけだけど誰も気にしないのに、貴族寮の周辺はいつもきれいにしないといけないらしい。

「はい! わかりました」

「落ち葉は、ほら、あんな感じで集めてくれればいい」

 ヘクトルさんは道の傍にある落ち葉を集めた小山を指さした。

「集めた落ち葉は、後で俺がリヤカーに移すから、わかりやすい場所にまとめておいてくれ」

「わかりました。まかせてください」

「じゃあ、俺は寮の庭木の剪定をするから、ここは頼んだぞ。2時間後にまたここで集合だ」

「はい!」
 
 イーアは白い石がしきつめられた道の上の落ち葉をほうきで掃いていった。
 イーア達の寮から校舎へは、人がたくさん歩いてできた雑草だらけの土の道があるだけだけど、貴族寮から校舎へは白い道が続いている。
 今日は寒いけど晴れていて気持ちのいい夕方だから、イーアは自然に鼻歌を歌いだし、歌いながら掃除をしていった。
 だけど、ひとりだからちょっと退屈になってきた。

(そうだ。ウェルグァンダルにいたマホーキに手伝ってもらおう!)

 『友契の書』を取り出して、イーアは『マホーキ、落ち葉はきを手伝って』とお願いした。
 すぐに、どう見てもほうきにしか見えない精霊、マホーキが2本あらわれた。
 マホーキたちは『ホウホウホウ、サッサッサッ』と歌いながら、イーアといっしょにせっせと落ち葉をはいてくれた。
 3本のホウキで歌いながら掃除をしていると、 マホーキが2本加わって掃除力3倍だから、あっという間だ。すぐに貴族寮と校舎をむすぶ道の落ち葉そうじは終わった。

『もう終わっちゃった。召喚術って、便利だね』

 イーアとマホーキは今度は貴族寮の白い建物へとむかった。
 普段この辺りに来ることはないので、イーアは貴族寮をはじめてちゃんと見た。
 イーアは思わず見とれてしまった。

(わぁ、きれいな建物……)

 イーアたちの寮とはだいぶ雰囲気が違う。入り口の傍には白い柱が4本あって、真ん中の黒いドアの上には彫刻があり、ドアに続く白い階段は下にいくにつれ広がった形になっていた。
 一方、イーア達の寮は苔むした塔だ。
 あれはあれで魔導士の寮っぽい趣があるから、どっちの寮がいいかと聞かれたら、答えるのは難しいけれど。

 貴族寮の入り口前には花壇で庭師のヘクトルさんが大きなハサミで庭木を刈りこんでいた。

「おう。バイト。どうした?」

「道のそうじが終わったから、こっちのそうじに来ました」

「そうか、早いな。じゃ、ここを頼む。ここが終わったら、次はバラ園の方をやってくれ」

 ヘクトルさんは、ちらっとマホーキたち、動くホウキたちを見たけれど、グランドールの庭師なだけあって、特に気にしない。

「はい。いってきま-す」

 イーアはマホーキ達と、寮の周囲のそうじをはじめた。
 寮には貴族クラスの生徒達が出入りしていたけれど、イーアなんて視界に入っていないようにふるまっている。
 イーアは気にせず、マホーキ達に話しかけながらそうじを続けた。

 寮の周囲のそうじが終わったので、イーアとマホーキたちは、次はバラ園に向かった。
 バラ園の中には葉っぱが落ちるような木はあまりない。
 でも、周囲の林からどんどん落ち葉が吹きこんでくるから、やっぱり枯れ葉がたくさん道に落ちていた。
 イーア達は迷路のようなバラ園の中をせっせと掃いていった。

 でも、しばらくすると、イーアはちょっとやる気がなくなってきた。
 今はもうすっかり日も暮れて、風もだいぶ冷たくなってきたから、そろそろ屋内に入りたい気分になってくる。

(これだけ働いたら、ヘクトルさんも満足してくれるよね)

 最初に言われた仕事はもう終わらせたから、あとは、6時半になるまでバラ園の中をふらふらしていても怒られないだろう。

『マホーキ、今日はありがと!』

『ホウホウ!』

 マホーキたちは勢いよく体をふるわせて枯れ葉をふきとばすと、虚空に消えていった。
 マホーキ達がふきとばした落ち葉を片隅に集め終えると、イーアはぶらぶら散歩をはじめた。

 少し歩くと、バラ園の噴水のところに出た。
 噴水のそばのベンチに誰かが座っている。
 そのゆううつそうな横顔の少女に、イーアは見おぼえがあった。

「あ、ローレインさん」

 イーアが声をかけると、ローレインは顔をあげた。

「あら……イーアさん。そのおホウキは?」

「落ち葉のそうじだよ。今、アルバイトしてるんだ」

「どうりで、イーアさん、あちこちに枯れ葉をつけてらっしゃるのね」

「え?」

 ローレインに言われて、イーアは自分の服を見た。言われてみればたしかに、いつの間にか全身枯れ葉まみれになっていた。
 イーアが服についた枯れ葉をとっていると、ローレインは立ち上がって、イーアの頭に手をのばした。

「ほら、ここにも」

 ローレインはそう言って、イーアの頭からとった枯れ葉を見せた。
 どうやら、イーアは頭まで枯れ葉まみれになっていたらしい。
 マホーキ達といっしょに勢いよく枯れ葉をはきすぎたっぽい。

「ありがと……ふふっ」

 お礼をいいながら、イーアはなんだかおかしくなってきて笑いだしてしまった。
 つられてローレインも口に手をあてて笑いだした。
 なんだかよくわからないけど楽しくなってしばらく笑い続けた後。ふたりは近くのベンチに腰かけて、おしゃべりをした。  
 ローレインはほほ笑んだ。

「なんだか、ひさしぶりですわ。こんなふうに笑ったの」

「そうなの?」

 特に意味もなく笑うことは、イーアにはよくあることだ。

「ええ。なつかしい感じ。小さな頃は、こうしてだれとでも笑いあって……」

 ローレインはちょっと寂しそうな表情になった。
 イーアはたずねた。

「そういえば、ローレインさんって、ケイニス君と昔から知り合いなの?」

「ええ。ケイニスは我が家の庭で働く使用人の子でしたから。小さな頃は、そう。落ち葉の中でいっしょに遊んだりしたこともありましたわ。そういえば、あの時も、髪の毛についた枯れ葉を、おたがいにとってあげたりして……」

 昔を思い出しながら語るローレインは、幸せそうな表情だった。

「ふたりは幼なじみなんだね。わたしとユウリもそうだよ。血はつながっていないけど、ユウリは同じ家で育った兄弟みたいな親友なんだよ」

 でも、イーアがそう言うと、ローレインは暗い表情になった。

「わたくしとケイニスは、幼なじみでは……。とても、そんなふうにいえる関係ではありません。何年も前、まだ幼い頃、ケイニスはある日突然わたくしを避けるようになりました。それ以来、ほとんどまともに会話すらしておりませんわ」

「でも、ローレインさんはケイニス君のことが好きなんだよね?」

 イーアがたずねると、ローレインは、突然、バタバタと手を小さく振り回し、慌てだした。

「す、す、……、な、ななな、なんてことを、お、お、おっしゃるのです!? ごごご、誤解ですわ。ご、誤解ですわよ。そ、そそそ、そんなことありませんことよ。だって、だって、そんなこと、絶対に、絶対に、許されないことですもの……」

「でも、ケイニス君ともっと仲良くなりたいんでしょ?」

 イーアがそうたずねると、ローレインは小声で認めた。

「えぇ。グランドールに入学すれば、自然と仲良くなれると思ったのですけれど。実際は、ほとんど会う機会もありませんわ」

 ローレインは肩を落としている。

「ケイニス君、勉強ばっかで部屋に引きこもってるからね」

 イーアはいつもふらふらしているから、クラスが違ってもローレインとよく遭遇するけど。

(もっとケイニス君を外につれだそうかな)

 イーアがそんなことを考えていたとき、バラ園の外の方から、庭師のヘクトルさんの声が聞こえた。「おーい。バイトー! 時間だ!」と呼んでいる。

「あ、もうバイト終了の時間だ! じゃあ、またね。ローレインさん」

「ええ。ごきげんよう。イーアさん」

 イーアはホウキを持ってバラ園の外へ走っていった。
 ヘクトルさんは書類に今日のバイト完了のサインを書いて、イーアに渡した。

「じゃ、お疲れ。また今度も頼むぞ」

「はい。ありがとうございました!」

 あとはこの書類を学生課の窓口に持っていけば、お金がもらえる。
 イーアは満足した気分で自分の寮に帰った。
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